教員の年齢構成の若返りが進む中、基本的な学習規律の校内統一、若手教員の系統的・組織的育成システムの整備、教科指導におけるICT活用の充実などが課題になっています。そこで本校では、「学習規律・学習指導の手引」の作成、ICT活用を含む授業研究会の実施、「校内OJTモデル」の開発とリーフレット化に取り組んでいます。
研究初年度として、「手引」の作成・活用とブラッシュアップ、年4回の公開校内研究会を含むのべ43回の授業公開を実施。OJTリーフレットは、どの学校でも実施可能なシステムを目指し、内容の改善を進めています。
今後は、本校が開発した校内OJTシステムをリーフレット化して市内小中学校に配布し、若手とベテランが共に育つモデルの普及を図っていきたいと考えています。
ベテラン・中堅・若手が交流し、学び合う集団に
本研究の特長は大きく3つあります。1つは、わからせる授業から活用する学習へのプロセス。ICTによる理解促進から習得・活用への段階的発展を目指しており、「わかる」の基盤となる学習規律も重視しています。
2つめは、先生方一人ひとりに力がつく校内研究です。授業公開では、本時中心の指導案をもとに、授業技術の検討にテーマをしぼって議論しています。のべ43回の公開と聞くと負担が大きそうですが、「ミニ授業研」のように数多く実施できる形式を採用しています。
3つめは多様な方法での校内OJTで、若手を指導するOJTを通じて、ベテランや中堅も成長しています。本校の取り組みは市内の他校の先生方にも見ていただいているので、今後啓発が進んでいくものと期待しています。
堀田 龍也 東北大学 教授
本校では、さまざまな思考スキルとツールを学習で活用する中で、論理的思考力の育成を目指しています。
初年度は、ベン図などの思考ツールをデジタル化し、タブレット端末での表示や書き込み、全員の意見の表示ができるようにしました。これにより、全員参加型の授業が可能になり、考えを高め合う時間を長く取れるようになりました。
また、撮影した写真や動画の比較・書き込みができるツールの導入後は、体育の運動や楽器演奏を評価し、よりよい方法を生み出すなど、タブレットを囲んで学び合う姿も見られます。今後は、自己評価・相互評価を支援する場面を中心に活用事例を蓄積する一方、フィールドワークでの利用や他校との協働など、学びを広げる活用法も検討していく計画です。
教育の「修正」と「革新」が並行して進んでいる
本校は公立の小中一貫教育校として、ICTを含めた先進的な学習環境を誇っています。こうした中にタブレット端末を増やすことで、教育の情報化に基づいた新しい学校園づくりを目指しています。
教育における情報化には、ICTの導入から教育の革新へと発展していく普及プロセスがあります。本校では今、これまでの授業が徹底できる、効率がよくなるといった効果を伴いながら、ICT活用が定着し、授業に統合される「モディフィケーション過程」が進んでいます。
その一方で、授業とICTが強固に結合し、ICTによる新しい授業スタイルがカリキュラムとして統合される「イノベーション過程」も進行していることがわかります。今後の実践研究を通じて、2つの過程が並行しながら深化していくものと予想しています。
木原 俊行 大阪教育大学 教授
子ども1人1台のタブレットPCの活用が日常化すると、授業展開や教師の役割、地域の支援体制は変わります。その変化の方向性を見定め、学びの環境を再構築することにより、「新しい公立小学校のかたち」を探ることが本校の研究目標です。
初年度の研究を通じて、授業・教師・地域の新たな形が具体的に見えてきました。例えば授業は、1人1台端末とクラウドの徹底活用により、基礎基本の定着や協働学習、指導内容の説明から授業評価までが大きく変わります。これに伴い教師の役割は「ファシリテーター」へと変化し、協働学習のコーディネートなどのスキルが求められるようになります。
2016年3月の研究発表会で、私たちが目指す新たな学習環境「i和design」をご提案できるよう、研究を深めていきたいと思っています。
ICTを起点とした学校システム改革を目指す
本校は統合2年目の新しい学校で、若い先生が多く在籍しています。ICT活用にも積極的で、教師も子どもも、1人1台端末をさまざまな場面で日常的に活用しています。
本校の研究は、1人1台端末での授業改善以上に、ICTを起点とした学校システム全体の改革を目指すものです。
多様な外部人材の活用、3年生以上での教科担任制の導入、LMSの活用による協働学習、総合的な学習でのプログラミングの採用などは、いずれも学校システム改革を志向するものでしょう。校長が「経営者」として改革を進め、副校長や主幹教諭へリーダーシップを委譲しているのも特徴的です。
外部への情報発信にも熱心で、公開研究会以外に教員向けセミナーも開催しています。ぜひ学校へ足を運んで、実践の様子を見ていただきたいと思います。
寺嶋 浩介 大阪教育大学 准教授
本校では、道徳と情報モラル授業の関連を明確化すると共に、情報モラル育成のための学校・家庭・地域の連携のあり方を研究しています。
情報モラルカリキュラムに基づく実証授業を行い、道徳と情報モラル授業の順序や間隔と、定着度の関係を調べました。授業を連続して実施することで、子どもの意識も関連づけられ、指導上の課題となっていた「心の領域」に関わる内容の実践意欲が高くなることがわかってきました。
今後は、タブレットPCの持ち帰りによる家庭と連携した指導を試行し、成果を調査する予定です。また、道徳と情報モラルを組み合わせた年間指導計画の改善の他、家庭や地域と連携した活動を展開し、町全体へ普及できるモデルを提案したいと考えています。
道徳科におけるICTの効果的な活用に期待
本校では、児童会が実施したネット利用に関するアンケート結果をもとに、「インターネット利用の約束」を作成し、PTAがサポートしながら取り組むことで、学校・家庭・地域の連携による情報モラルの涵養が図られています。
昨年度からは、道徳的価値に関する学習を、情報モラルに関わる題材で指導することに取り組んでいます。学習指導要領解説でも道徳科で扱う内容の例示は限られていることから、従来から学校で取り組んできた活動や、各教科、総合的な学習の内容と、道徳科を関連づけた情報モラルの年間指導計画を作成し、実践することが重要です。
今後は、道徳科におけるICT機器の効果的な活用の検討が望まれます。タブレットPCの持ち帰りによる家庭学習などが計画されており、その成果を期待したいと思います。
※野中先生は、成果報告会当日ご欠席のため、会場ではメッセージを読み上げました。
野中 陽一 横浜国立大学 教授