#06
総評
グループディスカッション・情報交流会
赤堀 侃司 パナソニック教育財団 常務理事/東京工業大学 名誉教授)
赤堀 侃司 パナソニック教育財団 常務理事/東京工業大学 名誉教授
前半の成果報告では、各学校がレベルの高い教育研究に取り組まれてきた様子が伝わってきました。そうした研究成果が実ったのは、研究指定校の先生方の力はもちろんですが、専門の先生方のアドバイスも大きな役割を果たしていると私は思っています。
教育研究とは、実践と理論を結ぶものだとよく言われます。しかし、これまではほとんど実現されていなかったのです。パナソニック教育財団の実践研究助成は、まさに実践と理論の接続を目指すものであり、その実現には研究に携わる皆さんの並々ならぬ努力があると思います。
ICTを活用した実践研究の定着・普及をテーマにした、後半のパネルディスカッションも印象深いものでした。吉崎先生がご指摘のように、どこでタブレットを使えばよいのかがわからなければ、ツールが導入されても活用できません。1人1台環境の普及を見据えて、ICTの活用ポイントを明記した、これまでとは異なる指導案をつくるのは当然だと思います。
一方で、なぜICTを導入するのか、なぜICTは教育にとって本質的なのかという点でも、「なぜ」に答える哲学が必要です。ICTはこれまで、単なるツールや環境であり、教育にとって本質的なものではないと思われてきましたが、もはやそうではありません。我々の認知や思考の全てに、デジタル環境が大きな影響を与えつつあるのです。
こうして素晴らしい成果報告会が開催できましたことに対して、実践研究に取り組まれた各校の先生方と、アドバイザーの先生方に厚く御礼申し上げます。
成果報告会のまとめとして、研究助成校の先生方と専門委員が話し合うグループディスカッションと情報交流会を実施しました。参加した先生方は、研究組織のあり方からICTの活用ノウハウまで、自校での研究成果に基づく実践的なアイディアを交換。最後に、今回の成果報告会を参観していた第41回特別研究指定校の先生方が、今年度からスタートしている実践研究の現状や今後に向けた抱負を語りました。
実践研究助成校3校の先生方と、専門委員の吉崎静夫・日本女子大学教授らが同席したグループでは、研究成果を生んだ要因分析から議論がスタート。長野市立若穂中の竹田眞人教諭は、「子どものための活動はみんなでやろうという風土が本校にはあります。校内の先生方が研究に協力してくれたことが大きかった」、世羅西中の宮岡英明教諭も「先行事例のない研究テーマで試行錯誤を連続でした。先生方が協力的だったから進められました」と、いずれも校内の協力体制の重要性を強調しました。
小中一貫校のつくば市立竹園東小学校は、今年度から実践研究に取り組んでいます。今川浩一教諭は、「つくば市立春日小学校・中学校の中間成果報告は、同じ小中一貫校として参考になりました。特に中学校での取り組みに応用させていただきたい」と語りました。
これに対し吉崎教授は、「研究活動では、校長のリーダーシップと研究主任の資質が重要」とした上で、「研究のスタートが上手くいくと、先生方も手応えを感じて乗っていけるので、初期段階の進め方を工夫したほうがいい」と今川教諭にアドバイスを送りました。
現在、タブレットの導入が進んでいるという各校。端末以上に悩むのがアプリの選定とのことで、「こういうアプリがこの授業に使えるという情報がほしい」(竹田教諭)、「学校での活用事例と成果、採用端末などの情報をセットで提供してくれると、導入検討中の学校は助かるはず」(今川教諭)とうなずきながら、各校で採用しているアプリの情報などを熱心に話し合っていました。
組織としての熱い思いが必要
先輩方の発表を聞かせていただき、この実践研究には組織としての熱い思いが必要だと感じました。私がこの場で感じた熱意を学校に伝え、教員一丸となっていい研究にしたいと、いま密かに燃えているところです。
大阪市立堀江小学校
組織づくりとエビデンスが重要
組織づくりとエビデンスの重要性を感じました。本校では1人1台タブレットを活用したeラーニングの実践と評価に取り組みます。多くの学校が関心を持つテーマだけに、しっかりした成果を出したいと思っています。
大阪府立東百舌鳥高等学校
これまでの積み上げを生かして
本日の成果報告を聞いて、学校だけでなく市全体でもエビデンスの収集が必要だと思いました。今後の実践研究では、本校がこれまで積み上げてきたものと研究テーマを上手くつないで、ICTとのつきあい方を考えていきたいです。
芦屋市立精道小学校
情報交流会の締めくくりにあいさつした浅井和行・京都教育大学副学長は、今回の報告された研究成果について、「ICTを活用して子どもたちに考えさせる実践が多かった」と評価する一方、「情報教育の視点でカリキュラムを組んで実践する事例も増えてほしい」と今後への期待を語りました。
各校の実践成果を共有し、研究に取り組む先生同士のつながりをつくる成果報告会。今年から一般研究助成校の研究成果報告書の評価・表彰が加わったことで参加校も増え、例年以上に充実した内容となりました。
子どものためになる研究にしたい
成果報告を聞いて、どの研究指定校も苦労をされてきたことがわかりました。本校ではタブレットを導入し、どう普及させていくかを考えている段階です。今後は子どもたちのためになる実践研究を行っていきたいと思っています。
札幌市立厚別東小学校