実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

勝山市立村岡小学校の活動報告/平成23年度4月〜7月
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セールスポイント

「いつでも、だれでも、どこででも視聴覚・情報機器(ICT)を使える」
ように、校内研修の充実・授業研究方法の工夫・外部指導者による研修などを行った。

実践経過

第3学年 道徳 授業記録
  • スキルのやり方をスライドで説明。
  • 手順を大きく映すことで、全員で共通理解を図る。
  • 全員が顔を上げて同じ物を見ているので、誰が理解できていないかが分かった。
  • 子どもの理解の進度に合わせてゆっくり説明することが出来た。
  • 数人の児童のスキルを拡大表示。
  • 見てほしい所を拡大して表示することで、児童がどこを見て良いのかが分かる。
  • 大きく映し出すことで、ほかの班の児童が何を書いたのか、話し合いでどんなことが出たのかの共通理解を図れた。
  • 友だちと違う所があるのは当然で、違うからこそおもしろいということを考えるために、自分たちとアメリカの学校の授業風景を写真で提示。同じ教室でいろんな肌・髪・目などの色をした人が学習している写真を見て自分たちとの違いを比較した。
  • アメリカは授業風景だが、自分たちのは集合写真だったので、なかなかこちらが意図する発言が出なかった。
  • 一人一人違っているからおもしろい、違っているからいいんだ、ということを実感できるように国語デジタル教科書から「わたしと小鳥とすずと」を提示し、最後の一文を赤で四角く囲った。
  • 教師の範読に合わせて児童にも読ませたが、ここはデジタル教科書の範読音声を聞かせるだけで良かった。

第6学年1組 算数「分数÷分数」
写真1 〈写真1について〉

長さが分数で表された長方形の面積も、公式を使って求められることを、図を描いて確かめた。図を描く中で、「2/3mは1mを3等分したうちの2つ分」「4/5mは1mを5等分したうちの4つ分」であることを認識させたいと考えた。そのために、児童のノートと同じ物を使い、描くところを見せながら同時に描かせた。(技能・手順)

描くところを見せることで、自分で間違いに気付いて直す児童の姿も見られ、全員が正確な図を描くために役だった。しかし、意味が分からずにただ描くだけの児童もいたので、この後に児童が自力で描く時間を設けてもよかった。

写真2 〈写真2について〉

「2/3mは1mを3等分したうちの2つ分」「4/5mは1mを5等分したうちの4つ分」であることをもう一度確認し、1/(3×5)uという単位分数がどのように現れたのかを考えるため、作図の様子をコンテンツにして見せた。(思考の方向・考え方)

児童は非常に関心を持って見ているようだった。厳密にいえば、「3等分したうちの2つ分」なのは「長さ」であるため、長方形全体を3等分しているこの図は正しくないといえる。

写真3 〈写真3について〉

作図によって現れた単位分数について、それが「1/(3×5)u」であることを確認するためにコンテンツを見せた。(思考の方向・考え方)

一度作図し、考えたことを定着させるためのコンテンツであったため、納得しながら見ているようであった。しかし、一方的に見せて説明するだけになってしまったので、要所要所で児童に質問したりするなど、理解しているかどうか確かめながら見せるとよかった。


第6学年2組 算数(比とその利用)

導入で、フラッシュ型教材で計算練習をする。本時の学習内容に関係のある割合の問題の反復練習。(技能・手順)

最後の問題は少し難しいのではと言う指摘があった。簡単な問題の繰り返しで自信をつけることが大切である。

比の表し方やその量感を捉えやすくするために、教科書の大切な文や図を拡大提示する。(知識)

拡大提示の必要なところとそうでないところがある。必要なところだけを映し焦点化するとよい。
スクリーンで焦点化、板書で授業の流れが分かるように残す。

自作コンテンツで具体的な図を示し、単位がちがう数量の問題を提示する。(思考の方向・考え方)

図を示すことで量感が捉えやすく、単位をそろえるとよいことに気づくことができた。児童の中から「単位の統一」という言葉が出た。

身のまわりから比が使われているものの例を拡大提示し、他にもさがそうという意欲付けを図る。(関心)

視覚に障害のある児童に対しても拡大提示された物は見やすく、焦点化していくとさらによい。


第5学年2組 理科 授業記録

導入の場面で、発芽する前の種子と、発芽してしばらくたった子葉の部分がどれを指すのかを確認するため、その画像をデジタル教科書で提示した。(関心)

児童に一番注目してほしい部分(発芽前の種子と発芽後のシワシワになった子葉)を、拡大ツール等を使って更に拡大提示すると、見るポイントが絞られ、よりそれらの違いに気付かせることができ、児童の興味をひくことができたと考える。

発芽する前の種子と、発芽してしばらくたった子葉の部分が、同じ物であるということを確認させるため、種子が発芽する様子を動画で提示した。(知識)

植物が発芽するところは、普段の生活では見ることが難しく、児童も見たことがないので、初めて見る映像に興味を示し、真剣に見つめていた。何に気をつけて見るのか、観点をはっきり児童に示してから視聴させると更によかった。

ヨウ素でんぷん反応の演示実験で、手元を拡大し、ジャガイモや片栗粉にヨウ素液を垂らし色が変わるところを提示した。また、実験手順をデジタル教科書の動画で提示した。(理解、技能・手順)

演示実験の提示は、鮮明さに欠け、色の変化がわかりにくかった。電子黒板のような鮮明さが必要である。実験手順の動画は、早く進みすぎて理解しきれない児童がいたので、後で大切なところだけ確認するとよかった。

児童が、ワークに記した実験結果を実物投影機で提示しながら発表した。(思考)

児童は、ICT機器を使って発表することに意欲的で、多くの児童が発表することができた。発表するとき、ワークを指さしながら発表すると顔が下がるので、スクリーンを指さしながら発表できるとよかった。今回は実験結果の発表だったので、深まりは無かったが、これからは深まりのある発表やICTを利用した学び合いが課題であると感じた。


第5学年2組 家庭科「はじめてみよう ソーイング」
写真@

写真@説明

○ボタンをつけるときの注意点・つけるときのポイントを分かってほしいと考え、視覚的かつ具体的に理解できるように活用した。
【知識】【技能・手順】

○結果、ポイントをしっかり押さえ、適切にボタン付けを行うことが出来た。

写真A

写真A説明

○自分たちの作品を拡大提示し、発表をしている様子である。他のみんなにも自分の作品を見てもらい発表をするというところに活用した。
【思考の方向・考え方】

○結果、拡大提示された作品をみんなしっかり見て、発表をしっかり聞けていた。しかし、発表者の視線が自分の手元に落ちていたので、発表する態度でいくと改善が必要に思う。

 

成果と課題

<成果>

@デジタル教科書を利用して漢字の書き順を学習することで全員が集中できた。また、漢字を書く順番通りにスクリーンに映し出されるので、視覚的に漢字を覚えながらの書き順学習ができた。

A子どもの作成した資料を実物投影機で拡大しながら発表に利用した。

B子どもが使用しているノートを実物投影機で写し、ノートに書く方法を見せている。どこに何を書けばよいかが一目瞭然なので、子どももわかりやすかった。

<課題>

  • デジタル教科書は、バグが起きたり、パソコンのスペックによって動作が遅かったりした。事前に確認する必要がある。
  • 電子黒板は外の天気や見る角度により画面反射が起きて、見づらい子どもがいる。
  • ICTをどの様に使うかではなくて、指導のどの場面でどの様に使用することが最適なのかを考えることが大事である。
  • 「どの様な力をつけるために」「簡単にわかりやすく理解させるために」を前提にICTの活用を考えることが必要である。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

  • すぐにICT機器を使えるように朝から電源を入れて使用できるようにしてきたが、時々接続不備やパソコンの誤動作で写らないことがあったりして慌ててしまったこと。
  • 他校の研究会でICT機器を使わない授業を参観したとき、少し不思議な気分になったこと。しかし、その授業を見ることで、どこでICT機器が使えるとか使うことで伝えたいことを明確に理解させられるのかが分かった。
  • 授業で当然のごとくICT機器を使ってきたことで、子ども達も自分で使えるようになったことや発表にも意欲的になってきたことが大変嬉しく感じている。

解説と講評

コメント:富山大学 准教授 高橋 純先生

 本校は,研究テーマを「楽しく なるほど よく分かる 授業づくり」とし,学習意欲の向上,基礎基本の習得,伝え合う力の向上のための授業づくりを研究している。その手立ての中心に,副題にあるICTの効果的な活用がある。

 本研究指定を受ける以前からも,熱心に学校研究に取り組んできており,校内研修の質も高い学校である。また,様々な困難を抱えながらも,ICTといった学習環境の整備も着実に行ってきている。これらをベースに,さらなる飛躍を目指している。

 本期間は,特に,子どもの学習意欲の高まりや基礎基本の習得をねらい,今回全ての教室に整備されたICT機器やソフトウエアを効果的・日常的に活用することに主眼に置いたといえる。教員が効果的なICT活用法を実感を持って理解し,腕を磨くのであれば,日常的にICTを活用することが欠かせない。特に初期段階においては,教科指導において多くの時間を費やす,基礎基本の習得をターゲットにICTを活用することが望ましい。こういった習得の学習指導場面では,ICT活用による教科書や教材等の拡大提示が効果的であり,本校の実践もそれらが中心となっている。

 さらに,本校では,何を拡大提示すべきか,効果的な学習指導の観点から検討を行っている。つまり,電子黒板やデジタルテレビといったコンテンツを投影する「機器の活用法」というより,直接,子どもの理解等に影響するデジタル教科書といった「コンテンツの教材性」を観点に検討しているところに特徴がある。さらに,拡大提示したコンテンツの効果をより高めるために必要なことは,教員の効果的な「発話」であり,指し示しや書き込みといった「焦点化」である。このような教員の指導技術とICTの効果的な融合についても,詳細で充実した検討が行われている。

 地に足が着いた着実な取り組みが行われている。今後のさらなる発展を期待したい。

 
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