解説と講評 |
コメント:富山大学 准教授 高橋 純先生 |
本校の研究テーマは,「楽しく なるほど よく分かる授業づくり〜ICTで分かりやすく伝えて〜」である.子どもがよく分かれば,なるほどと思えるし,勉強も楽しくなってくる.それが日常的に積み重なっていけば,学力の底上げにつながる.「よく分かる授業づくり」は,学力向上の最初の一歩として,教員であれば誰もが取り組むべき課題である. 分かりやすい授業づくりのための教員によるICT活用は,最も効果が得やすく,普及もしやすいICT活用法の一つである.とはいえ,ICT活用は,教員の指導技術向上を手助けする手段の一つに過ぎないと考えていく必要もある. 本校の取り組みが示す通り,日頃からの指導技術向上の取り組みに,ICTの力を借りていくことが基本である. 例えば,本校の報告にある,最も身近な教材といえる教科書を,教員が徹底的に読解するといった教材研究の重要性があげられる.また,「教師の発話を少なく」するためには,学習規律の確立が重要である.さらに,教員が発話しなくても,子どもが自発的に取り組むように学習手順・方法を明確化し,習得させ,習慣化を図っていく必要もある.その上で,児童の実態にあわせた学習課題の設定,指導手順の検討も重要であろう.児童の実態にあわせるために,児童の興味関心のみならず,児童の理解の程度,理解のプロセスを把握しながら,教科書等の教材を読み取り,具体的な学習課題や指導手順として検討していく.これらの成果に,「コンパスの使い方」実践の際の学習課題のスモールステップ化や,それらに基づいたICTによるコンパスの使い方の提示がある.また,「地図の利用」実践における地図の提示範囲の増減といった,教育的意図を持ったICTのズーム機能の活用にも現れている. 本校の取り組みの特徴は,古典的であるが定評のある指導方法に着目し,先人の積み重ねの理解に努めた上で,ICT活用との融合を図りながら,さらなる発展・改良を試みている点である.この地味だけども効果的な取り組みは,本校に新たに異動して来た先生であっても,ICT活用をスムーズに行える原動力になっている. |