実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

勝山市立村岡小学校の活動報告/平成24年度8月〜12月
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セールスポイント

ICTを活用して、ちょっといい普段の授業をしようと以下の実践を行った。

  1. 授業において理解を深めるために拡大提示の方法を工夫する。
    授業の流れに適した提示資料を選び、授業のどの場面で提示することが良いかを考え、児童がより理解を深めることができるようにする。(教科書研修会)
  2. 児童の理解や考えを深め、意欲的に発表できるようにするために、資料の一部分を拡大提示する方法を工夫する。
     提示する場合、どこに注目して欲しいかをよりわかりやすくするために、指示棒を使うことや資料の一部を拡大提示することがどの児童にも明確に理解させやすいのではないかと考えた。(資料提示の工夫研修会)
  3. 学習意欲、興味関心の喚起と理解の深化を狙った指示・発問の工夫児童の活動時間を確保するためには、教師の指示発問を短くすることが必要であり、理解しやすい指示発問を工夫することも必要である。これは、児童の学習意欲、興味関心を喚起させ、理解を深めることにつながると考えた。(事前授業研修会)

実践経過

・8月は、教科書研修会を行った。福井県教育研究所にて高橋准教授のICT活用の講義にて本校の研究実践の一部を紹介した。
・9月は教科書研修と授業を通して、ICT活用について検討した。
・10月25日、5学年 社会科「わたしたちの生活と工業生産〜自動車をつくる工業〜」
意見をまとめ発表するために必要な資料として、動画を提示した。
教科書には動画に関連した写真がある。学習内容をより分かりやすくするために、デジタル教科書の動画を再生した。

・11月3日、第38回全日本教育工学研究協議会全国大会(金沢大会)に参加し、A分科会「授業におけるICT活用」、G分科会「校務の情報化/ICT活指導力向上研修」において発表した。
・11月29日、1学年1組 算数科「ひきざん(2)」
たし算ひき算の問題作りを紙芝居で行った。その紙芝居をスライド映写して説明した。また、児童の作成した紙芝居を実物投影機で映して発表した。

・12月3日、6学年1組 算数科「場合を順序よく整理して」
学習内容を分かりやすく短時間で説明するために、教科書の図を利用した。児童と同じワークシートを使用して、実物投影機で拡大提示した。また、左の写真はデジタル教科書の図を拡大提示しているところである。この提示を用いて「何通りの行き方があるか」の見つけ方を説明した。まず、一つの行き方を説明した。「モノレール→船→バス」と板書して「他に行き方はありませんか」と発問し、その後、児童が考えてワークシートに記入する時間を設けた。児童は、短時間で作業を終えていた。
児童の発表を聞きながらのワークシートへの記入は、左の写真のように児童と同じワークシートを拡大提示しながら記入していった。児童はその記述を見ながら確かめをしていた。 (小テストの答え合わせもこの方法で行う場合もあった。)

 

成果と課題

  1. 教科書研修会
    各教員が自費で購入した教科書を使用して、書き込みながら学習内容の指導について検討していく。教科書のどの部分を拡大提示すると児童に学習内容を理解させやすいかの意見を出し合っていく。その結果、授業の流れが明確になり、学級の児童がどの部分でつまずきやすいのかが明確になってきた。
  2. 資料提示の工夫研修会
    拡大提示方法では、資料のどの部分をどのように提示すればより理解させやすいのかを検討する。その結果、特に資料のどの部分を拡大することが指示発問をより明確に、分かりやすく児童に伝わるのかを検証することができた。
  3. 事前授業研修会
     模擬授業を行いながら、授業の流れ、指示発問、資料拡大提示等が、児童の理解、活動に適切に作用しているのかを検討した。その結果、実際の指導では、ゆとりを持って児童の状況が把握できるようになった。理解が不十分である児童への適切な声かけや個別指導ができるようになった。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 教職経験豊富な教員は「資料の拡大提示でどこをどのように拡大提示することが良いのかを考えることがとても楽しくなった」とICTの工夫を話していた。
 また、教職経験が浅い教員は「いろいろな方からたくさんのアドバイスをもらうことができてとても嬉しい」と教員間の協力や連携の良さを感じていた。
 これは、2年間の研究の成果になるのではないかと考えている。

 平成25年2月22日(金)は、研究成果発表会を予定している。ICT活用は授業力という事実が少しでも公開授業で示すことができれば幸いである。たくさんの参加者が集まってくださることを願っている。

 

解説と講評

コメント:富山大学 准教授 高橋 純先生

 本校の研究課題は「楽しく,なるほど よくわかる授業づくり 〜ICTでわかりやすく伝えて〜」である.ICTがサブタイトルであるように,研究の中心は,授業づくりや教員の指導技術の向上である.
 各地の研究において,「ICT活用はあくまでも道具である」「大切なのは教員の授業力である」といった主張は,数多く見られる.しかし,いったい何をすることが,ICTを道具とみなした活用になるのか,ICTを用いた際の教員の授業力とは何なのか,本当の意味で具体的に示された例は,そう多くはない.
 そういった中で,本校では,例えば,教科書のどの部分を,どの順番で拡大提示するのか,その際,教員は何と発話するのか等を研究し,道具としてのICTの効果的な活用法を具体的に示している.その際,ICT機器で活用される「機能」は,拡大提示程度である.ICT技術としては低レベルかもしれないが,これを使いこなすには,こういった教員の力量が欠かせない.つまり,ICTの機能をいかに活かすとか,ICTらしい活用を明らかにするといった視点ではなく,これまでの財産ともいえる各教員の指導技術をベースに,ICTの支援も借りながら,よくわかる授業づくりに取り組んでいる.
 さらに,そのための校内研修も工夫に満ちている.教科書研修会,資料提示の工夫研修会や事前授業研修会など,これらの手法が多くの学校でも採用されれば,大いに役立つだろう.本実践は,授業実践の視点のみならず,校内研修の工夫という意味でも貴重な実践である.
 2/22には公開研究会が開催される.本研究会では,教員によるICT活用が,指導技術の一つとして成熟して位置付いた姿が見られるだろう.

 
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