実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

勝山市立村岡小学校の活動報告/平成24年度1月〜3月
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セールスポイント

 2月22日の実践発表会に向け,「普段の授業」で活用するICTを目指して研究を進めた。2年前から「いつでも だれでも どこででも」を合い言葉に研究を進めた結果が「普段の授業」を公開したことである。決して,研究授業のための授業ではない。
 児童理解を深めるための教科書研修を行い,教科書のどの部分をどのように指導することが適切なのか,ICTを利用することだけでなく,発話(問い)にも工夫を行い,わかりやすさを追求した。

実践経過

・2月22日(金) パナソニック教育財団研究指定校 研究発表会
 この発表会に向けて,勝山市視聴覚分科会の3名と前任者の教諭2名による授業研究会の司会運営について協議した。

・授業でのICTの活用事例集を1冊の本にまとめて発刊した。

 

成果と課題

 研究発表会では,約100名の参加者があり,全教職員が公開授業を行った。「普段の授業」を公開し,授業の流れや児童の様子を見ていただいた。

その感想に,次のようなご高評を頂いた。

  • 「ICT活用の研究は、授業の研究です。」その通りだと思いました。一部の人がやれるようなものではだめで、ICTを生かしていくのは人間である教師なのだと思います。「地道な研究」は、とても人間らしい研究の積み重ねだと思います。子ども中心、子どもによりそったICTであるべきだと改めて思いました。ありがとうございました。
  • 2年国語、1の2道徳を参観させていただきましたが、どちらもすばらしい授業でした。どちらも子どもが生き生きと活動していました。
  • 先生方の機器操作がたいへん手なれていて、児童たちの興味関心がうすれることなく、45分間の集中がすばらしいと思いました。ICT機器の有用性の実活が十分できていたと思います。
  • 3年算数の最後のふり返りで、一人の子どもが、「友達の(ワークシート)を(スクリーン)で見られたので、とてもよく分かりました。」と書いていました。ICTの「C」にあたるコミュニケーションと学び合いをICT機器の活用によって生み出したものと思いました。たいへん参考になりました。ありがとうございました。
  • 最初の1/20を線分図を示した時,「2分」を線分図で分かった時,子どもたちの「ほおー」というわかったつぶやき声がすばらしいと思いました。TPシートで1/8や1/20を作り示されたりスクリーンと黒板の使い分けを上手にされたりする技術はもちろんですが,先生の,分からない子への声かけやできた子の肩をたたいてあげる姿も生徒たちの自信につながってすばらしいと思いました。
  • ICT機器が自然な形で使われていて、指示、説明等が分かりやすく、子どもたちも集中して取り組めていたと感じました。子どもたちどうしで相談したり、話し合ったりして考えを深めることができるといいなと思いました。ICT機器をどの先生も日常的に使って分かりやすい授業づくりをされている村岡小学校の取り組みを少しでも自分の学校でも取り入れたいと思いました。
また,以下のような指針を頂きご高評も頂いた。
  • 授業の方は、先生方が使い慣れ、使いこなしていることがよく分かりました。次は子どもたちがICTの使い手になる番ですね。子どもたちが、分かりやすく伝えられる手段としてICTを活用できるようにしたいものです。また、ICTを活用するからこそホワイトボードやスクリーン、電子黒板、大型ディスプレイなどと従来の黒板との板書の構造化がより重要であることを再認識いたしました。パネルディスカッションでは、公開授業や村岡小の研究の意味づけがしっかりなされ、大変勉強になりました。ICTは万能ではないけれど、ICTは授業改善の起爆剤になると思いました。
  • ICTを利用することによって、わかりやすく、見えやすく、理解しやすくできる。しかし一方で、便利で身近な存在だからこそ、教師側が情報を与えすぎてしまい、子どもたちの思考場面をなくしてしまうことにもなりかねない。あくまでもICTは子どもたちの「なぜ?どうして?」を支える存在であってほしい。
以上のようなご高評をたくさん頂き,今後さらに研究を進め,児童と共につくる授業にICTという雰囲気で取り組んでいきたい。

 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

・研究発表会ではかなりの積雪があり,天候も心配された中予想より遥かにたくさんの参加が得られ,大変うれしかった。

・本校職員は,ICTを使うことよりも,授業で活かす工夫をしてきた。これが大変難しい。そのために,教科書研修を行い,研修を行ってきたが,どれだけ身についたのだろう。これからの授業にも活かしていきたい。

・授業研究会では,本校職員の考えなどを十分にお話しすることができなかったこと。参加者の方々のご意見をもっともっとお聞きすることができなかったことが残念である。

 

2年間の実践を終えての感想

研究の成果と今後の課題
 平成22年度から「いつでも,だれでも,どこででも」を実践して,ICTを活用しながら,教師も児童も楽しく授業ができるようになった。

☆分かりやすく伝えることで,学習活動の時間を確保することができた。そのために,ICTの活用を工夫するようになった。児童は聞いている人に分かりやすく伝えようとICTを活用するようになった。
 その成果から,よく分かる・分かりやすいと感じている児童が多くなってきた。また,授業や一単元での児童の活動時間が増えると共に,発表することへの抵抗がなくなり,その楽しさを味わう姿が見られるようになった。しかし,課題として次のことが言える。

★児童は学習内容の理解を深めることができておらず,知識理解を応用的課題や発表に発揮することはできていないことが明らかになった。

平成24年度の研究 児童の理解を深める 「分かりやすい伝え方〜分かる授業」

そこで,まず,理解を深めるために,授業中に使うノートや教科書の拡大において「何のどこを,どのように見せるか」を考えながら利用することにした。そこで教科書を拡大して分かる授業をめざした。

・教科書は教師も児童も同じものを持っている。
・教科書は読んだだけでは理解を深めることはできない。
この2点から,教科書をいかに拡大するかを研修することにした。

☆その結果,学習内容に合ったICTの活用ができてきた。
☆普段の授業でICTの有効的な活用ができるようになったことで,児童にとっての分かる授業を実践できるようになった。
★課題としては,子どもの分かり方に合わせた教科書研修を行うことが必要である。
★学習内容の指導重点項目をさらに精査し,ICT活用の効率化を図る。

以上の成果や課題を踏まえ,次年度は普段の授業での子どもの分かり方に注目したより有効なICT活用をめざしていきたい。
 

次年度以降、今回の成果をどのように展開するのか

 学校の生活基盤となる学習規律の定着を図り,より分かる授業,言語表現を豊かにした伝え合う授業を推進することを狙っていきたい。普段の授業でだれでもできる授業をこれからも実践して蓄積できることを願っている。

 新しく赴任してきた教員も,「これならできる」「これは便利」「難しくない」「だれでもできるのでは」と思ってくれるように研究を積み重ねていきたい。

解説と講評

コメント:富山大学 准教授 高橋 純先生

 2年間の集大成である研究発表会では,本校が目指してきた「楽しく なるほど よく分かる 授業づくり 〜ICTで分かりやすく伝えて〜」が,具体的に示されていた.あまりにも自然でスムーズなICT活用に,ICT活用自体が目当てだった参観者にとっては,少し物足りなくみえたかもしれない.本校の実践は,ICTらしい活用であるとか,ICTの長所を活かした活用といった考えを前面に出して組み立てられてはいない.長所も使いどころもよく理解した黒板かのように,自然にICTを活用する.
 ICT活用は,その時々でブームがある.今現在であれば児童生徒によるタブレット活用であろう.しかし,本校が行うような教科書や教材等の拡大提示のための教員によるICT活用は,古くからの掛図やOHPの活用の延長上にあり,どのような時代になっても,本質的な重要性は変わらない.したがって,本校の研究の中心は,ICT機器の操作習得や,最新で高価なICT機器を活用することではなく,子どもが楽しく,なるほどと思い,よくわかる授業づくりのための教材研究や教材の提示方法,教員の発問や指示のレベルアップにあった.このような教員の指導技術の根本を中心に研修が行われたために,将来,新たなICT機器が出現しても,たとえ異動先にICT機器がなくとも重要な点が,先生方にとって明確となり,身に付いたのではないかと思われる.
 これらの成果が,写真もふんだんに盛り込まれた研究紀要としてまとめられたことも大きい.ICTを活用した学習規律づくり,興味関心を高める発問,わかりやすい説明,基礎的・基本的な学力を身に付けるための指導法,子ども同士の話し合いを促す方法,それらの研修方法など,どれも日常的な学習指導を改善・発展させる取り組みが示されている.
 ICT活用に特別な興味がなかった先生にも理解が得られ,学校全体で取り組むことができるようなICT活用や,そのための校内研修や発展のプロセスが明らかになったことは大きな成果であった.いずれの時代になっても役立つ成果である.今後,ますます学習指導の情報化は進んでいく.その際,本校の成果は,まず最初の取り組みとして活かされていくことであろう.

 
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