2年間の集大成である研究発表会では,本校が目指してきた「楽しく なるほど よく分かる 授業づくり 〜ICTで分かりやすく伝えて〜」が,具体的に示されていた.あまりにも自然でスムーズなICT活用に,ICT活用自体が目当てだった参観者にとっては,少し物足りなくみえたかもしれない.本校の実践は,ICTらしい活用であるとか,ICTの長所を活かした活用といった考えを前面に出して組み立てられてはいない.長所も使いどころもよく理解した黒板かのように,自然にICTを活用する.
ICT活用は,その時々でブームがある.今現在であれば児童生徒によるタブレット活用であろう.しかし,本校が行うような教科書や教材等の拡大提示のための教員によるICT活用は,古くからの掛図やOHPの活用の延長上にあり,どのような時代になっても,本質的な重要性は変わらない.したがって,本校の研究の中心は,ICT機器の操作習得や,最新で高価なICT機器を活用することではなく,子どもが楽しく,なるほどと思い,よくわかる授業づくりのための教材研究や教材の提示方法,教員の発問や指示のレベルアップにあった.このような教員の指導技術の根本を中心に研修が行われたために,将来,新たなICT機器が出現しても,たとえ異動先にICT機器がなくとも重要な点が,先生方にとって明確となり,身に付いたのではないかと思われる.
これらの成果が,写真もふんだんに盛り込まれた研究紀要としてまとめられたことも大きい.ICTを活用した学習規律づくり,興味関心を高める発問,わかりやすい説明,基礎的・基本的な学力を身に付けるための指導法,子ども同士の話し合いを促す方法,それらの研修方法など,どれも日常的な学習指導を改善・発展させる取り組みが示されている.
ICT活用に特別な興味がなかった先生にも理解が得られ,学校全体で取り組むことができるようなICT活用や,そのための校内研修や発展のプロセスが明らかになったことは大きな成果であった.いずれの時代になっても役立つ成果である.今後,ますます学習指導の情報化は進んでいく.その際,本校の成果は,まず最初の取り組みとして活かされていくことであろう.