実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

守口市立橋波小学校の活動報告/平成23年度4月〜7月
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セールスポイント

子どもが、思考力・表現力を身に付けるために、ICTを効果的に使う

4月以降、4年生〜6年生にタブレットPCが本格的に導入されました。それによって、児童がICTを利用する場面が多くなってきました。今までは、ICT機器を教員が児童に指導する際に分かりやすく説明を行うためのツールとして使っていました。しかし、今年度は、児童が考えるためのツールとしてICT機器を活用するようになってきました。

活用型授業を行う

多くの教員が、活用型の授業を意識するようになってきました。また、教員が活用型学習にICTを上手く取り入れた授業も少しずつ見られるようになってきました。本年度は、1学期に5回の研究授業を行いましたが、それぞれが活用型の授業を実践しました。

子ども同士が学び合う協働学習を行う

45分の授業の中で、一斉で指導する場面・個人で活動する場面・グループ(ペア学習も含む)で活動する場面と分けて考えるようになりました。ICTを活用したグループ学習を取り入れることは、教育の情報化ビジョンの一端を担えると考えています。

実践経過

4月
  • 本年度の研究テーマについて共通理解
 
 
  • 校内研究の2年間の計画・今年度の年間計画詳細について共通理解
 
  • 4月18日(月)研究授業 6年生 社会・国語
≪社会 〜縄文・弥生の暮らし〜≫
 本年度1回目の研究授業。タブレットPCが導入されて初めての研究授業です。NHKの学校放送と付属のデジタル教材のワークシートを活用して活用型授業に取り組みました。一人ひとりのタブレットPCにワークシートを配布して、デジタル上のワークシートに書かせました。書いたものは、電子黒板に映して児童に発表させました。

≪国語 〜カレーライス 自分の体験と重ねて読み、感想を書こう〜≫
 デジタル教科書(光村)を活用して活用型授業に取り組みました。主人公の心情を考えるため、児童はタブレットPC上で必要な個所に線を入れさせました。 
記入した個所を電子黒板でみんなに伝えさせました。電子黒板でも同じデジタル教科書が入っているため、同様に線を引かせながら発表させました。
また、デジタル教科書に付属してあるワークシートの利用についても実践してみました。
最後にタブレットPC上に原稿用紙を用意して、そこに感想を書かせました。不慣れな部分も有りましたが、頑張って書いていました。

   
5月
  • 5月13日(金)研究授業 6年生 国語

≪国語≫
 タブレットPCにインストールされているコラボノート(ソフトウェアー)を活用しました。またグループに分かれての協働学習や個人学習の可能性について実践しました。コラボノートには、付箋機能がついています。そこで児童がグループ学習で話し合った内容を他のグループから意見をもらう学習です。
 電子黒板に課題を提示し、全体で確認しました。その後、グループ学習を実施しました。最後に自分が考えたことをワークシートに書いてまとめ、発表しました。

   
6月
  • 6月23日(木)研究授業 支援学級

 50インチモニターに実物投影機を接続して、自分の気持ちを表現しました。表現する前に、実物投影機で様々な様子の絵を見せて、今の自分がどの気持ちなのかを確認しました。
また当日、お休みしていた人の様子をデジタルカメラの動画で録画したものを見せる活動もありました。

 
  • 6月29日(水)研究授業 4年生 理科

≪理科 〜成長のひみつにせまろう〜≫
 5月の終わりごろから、気温と直物(ヘチマ・ヒョウタン・ゴーヤ・ひまわり)の成長を記録してきました。児童は、この観察記録をコラボノートに記録していきました。さらに、エクセルで表にし、気温と成長についての変化を探りました。
また、グループ学習(協働学習)や個人の学習についても提案された授業でした。

 この日の討議会は、タブレットPCを活用しての討議会を実施しました。低学年の先生方は、あまり使ったことがありません。そこで研修も兼ねてコラボノートを活用してグループ討議をしました。

 

成果と課題

 多くの授業で活用型の授業スタイルを実践してきたことが大きな成果と考えられます。これは、今までの実践で教員が培ってきたICT活用能力をしっかりと発揮してきたと考えられます。
 一方で、1学期中に1年生〜3年生で導入する予定だった電子黒板ユニットが遅れてしまいました。児童のICT活用という面では、2学期以降の課題になると考えます。

2年 生活科 6年 算数
6年 図工 5年 音楽
 
3年 図工  
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

タブレットPCとの出会い

 4月、クラスにタブレットPCが導入されると、子どもたちから「うわぁ〜。」「すごーい。」などと歓声が上がりました。また4月の懇談会で保護者の方にタブレットPCを操作してもうと「すごいね〜。」などの声が聞こえました。

バッテリー

 タブレットPCが導入されて間が無い頃、4月の研究授業でタブレットPCのバッテリーが持ちませんでした。授業の最中に、バタバタと電源が落ちてしまって驚きました。朝からタブレットPCを使っていたのが原因でした。バッテリーがどのくらの時間持つのか分からないという初歩的な失敗でした。今では、それを踏まえて授業をしています。

サーバーのダウンの危機

 日曜参観で、多くのクラスでICT機器を活用した授業を予定していました。しかし電子黒板やタブレットPCは、サーバー経由で動いているため、一斉に動かすとサーバーがダウンする恐れがあることをICT支援員さんからお聞きしました。そのため、事前に練習することをしました。

解説と講評

コメント:兵庫教育大学 准教授 永田智子先生

 橋波小学校では、平成22年のICT環境整備事業によって全クラスへの50型モニターと高学年クラスへ電子黒板が設置された。これに合わせて財団の助成金を受け、全クラスへの実物投影機設置、デジタルカメラ10台の購入が行われた。平成23年には総務省「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」の1校に採択され、4・5・6年生の全員にタブレットPCを導入した。さらに財団の助成金で低学年用に電子黒板ユニットを購入するなど、着々と学習環境の整備が進められている。

 もちろん学習環境が充実できたのは、それを全校規模で有効に活用してきたことが大きい。平成21年度は「教員の授業力アップ↑のためのICT活用プロジェクト」として、教員のICT活用と授業力向上を目指して授業改善に取り組んだ。平成22年度は、「多様な教科・領域における活用型学力の育成」として、主に児童のICT活用と教員の活用型学習の指導方法の工夫に取り組んだ。さらに平成23年度は、児童がICT活用を行った活用型学習に取り組んでいる。授業力アップのICT活用から、児童のICT活用、教員の活用型学習指導へと段階的に進め、本年度はさらに難易度の高い「児童がICT活用を行った活用型学習」に取り組んでおられること、しかもそれを一人の教員だけでなく、全員で取り組もうとされている点は素晴らしい。

 報告書では、平成22年度の「児童のICT活用」と本年度の「児童がICT活用を行った活用型学習」の違いが明確に読み取ることができない。“活用するICT”とは別に、活用型学習で“活用する知識・技能”が何かも合わせて示されると、両者の違いをより明確にしていけるのではないだろうか。また、高学年児童一人一台のタブレットPCという新しい道具の活用は、必ずしもよい結果だけがでてくるとは限らないと思う。現時点での限界や留意点なども含めて成果をまとめていかれることも他校への重要な情報となるだろう。

 現在橋波小学校は先進的な学習環境を持ち、全教員でICT活用への取り組みを行っているが、最初から恵まれていたわけではなく、上述した通り、外部資金等を有効活用して学習環境を整備することと、全教員によるICT活用・研修を、計画的・段階的に進めてきている。そのプロセスそのものが、他校がICT環境と活用の充実をめざすための参考となるだろう。もちろん、橋波小学校が発行しているICT活用の事例集で蓄積されてきた事例そのものも参考にしてほしい。

 
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