解説と講評 |
コメント:兵庫教育大学 准教授 永田智子先生 |
橋波小学校では、平成22年のICT環境整備事業によって全クラスへの50型モニターと高学年クラスへ電子黒板が設置された。これに合わせて財団の助成金を受け、全クラスへの実物投影機設置、デジタルカメラ10台の購入が行われた。平成23年には総務省「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」の1校に採択され、4・5・6年生の全員にタブレットPCを導入した。さらに財団の助成金で低学年用に電子黒板ユニットを購入するなど、着々と学習環境の整備が進められている。 もちろん学習環境が充実できたのは、それを全校規模で有効に活用してきたことが大きい。平成21年度は「教員の授業力アップ↑のためのICT活用プロジェクト」として、教員のICT活用と授業力向上を目指して授業改善に取り組んだ。平成22年度は、「多様な教科・領域における活用型学力の育成」として、主に児童のICT活用と教員の活用型学習の指導方法の工夫に取り組んだ。さらに平成23年度は、児童がICT活用を行った活用型学習に取り組んでいる。授業力アップのICT活用から、児童のICT活用、教員の活用型学習指導へと段階的に進め、本年度はさらに難易度の高い「児童がICT活用を行った活用型学習」に取り組んでおられること、しかもそれを一人の教員だけでなく、全員で取り組もうとされている点は素晴らしい。 報告書では、平成22年度の「児童のICT活用」と本年度の「児童がICT活用を行った活用型学習」の違いが明確に読み取ることができない。“活用するICT”とは別に、活用型学習で“活用する知識・技能”が何かも合わせて示されると、両者の違いをより明確にしていけるのではないだろうか。また、高学年児童一人一台のタブレットPCという新しい道具の活用は、必ずしもよい結果だけがでてくるとは限らないと思う。現時点での限界や留意点なども含めて成果をまとめていかれることも他校への重要な情報となるだろう。 現在橋波小学校は先進的な学習環境を持ち、全教員でICT活用への取り組みを行っているが、最初から恵まれていたわけではなく、上述した通り、外部資金等を有効活用して学習環境を整備することと、全教員によるICT活用・研修を、計画的・段階的に進めてきている。そのプロセスそのものが、他校がICT環境と活用の充実をめざすための参考となるだろう。もちろん、橋波小学校が発行しているICT活用の事例集で蓄積されてきた事例そのものも参考にしてほしい。 |