解説と講評 |
コメント:兵庫教育大学 准教授 永田智子先生 |
橋波小学校では1学期から引き続き,2学期もICTを活用した様々な実践に取り組んでおられる.教員が実物投影機やパワーポイントを使って授業をするのはもはや当然のように行われ,加えて児童がタブレットPCを使って,考えをまとめる,アニメーションのあらすじやセリフを考える,絵や写真から見つけるなど,児童のICT活用についてもかなりのバリエーションが出てきた.こうした活用の充実には,公開授業だけでなく,本校および近隣の小学校と行った研修会や実践報告会などの取り組みの工夫が功を奏したと思われる. 夏季合同研修会では教科部会,学年部会にわかれてタブレットPCを活用した話し合い活動が行われた.1学期の公開授業後もタブレットPCを活用した参加型討議会が実施された.橋波小学校ではこのようにICTを活用した参加型の研修会や討議会が行われている.これらには二つの意味があるだろう.一つ目はタブレットPCをはじめとするICTの使い方研修としての意味である.授業で活用しようとすれば,教員も使用方法を理解し,活用できるようにしておくことは大切である.二つ目は,参加教員が受け身にならないということである.最近では受け身になりがちな講義形式の研修会や形式的な討議会が問題視され,参加者全員が主体的に参加できるワークショップ型の授業研究会が普及してきている.本校の研修でも全員が参加できる形式が採用されている.これによりICT活用については当然ながら,それに伴う子どもの学びや授業のありかたについて意見を広げたり深めたりすることが可能となる. また,2学期の公開授業時に行われた実践報告会でのポスター発表も効果的である.授業公開した学級は4クラスであったが,公開授業しない教員たちは,公開授業後にそれまでの取り組みについてポスターにまとめ発表していた.こうすることによって,公開授業するクラスだけにお任せ!といった事態に陥ることがなくなり,誰もが主体的にICT活用について考えざるをえなくなる. こうした取り組みの蓄積が橋波小学校の素晴らしい実践の裏付けとなっているのであろう.児童に対して,ICT活用のアンケートが実施され,8割近くの児童が,考える活動や表現する活動でICT活用が良いと回答していた.これも橋波小学校でのICT活用が的確になされたことの裏付けとなるだろう.今後可能であれば,児童による評価に加え,児童に思考力・表現力が身についたのかを客観的に評価するための方法についても検討・実施してほしい. 前述したように,研修においても,実践においても,全教員が参加者意識を持って取り組めるような形式を採用したり,研修時においてもICTを意図的に活用するなどの工夫で,全教員がICT活用に積極的に取り組み,活用のバリエーションを広げることができるだろう.橋波小学校とまったく同じ手法でなくても,自校の特色に応じた取り組みを検討し,実践につなげてほしい. |