実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

守口市立橋波小学校の活動報告/平成23年度1月〜3月
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セールスポイント

1年生の研究授業

 今年度最後の研究授業がありました。1年生には、タブレットPCが導入されていませんがパソコンルームでプレゼンを作成しました。1年生が自分たちで撮ってきた写真を選んでパワーポイントに貼りつけるという授業が展開されました。これらのプレゼンは、新年度に入学してくる幼稚園・保育園の園児たちに交流会で披露されました。

3学期実践報告会

 今年度、3回目の実践報告会を実施しました。今回は、園田女子大学の堀田博史先生を講師としてお呼びして本校職員で発表会を実施しました。1つ1つの実践の報告を行いました。

児童対象ICT活用のアンケート

 10月に実施したアンケートを再び3月に実施しました。半年ほど経って、児童たちがどのように変化したのかを調査するためです。

実践経過

1月
  • 1月31日(火)研究授業 1年生 生活

「あたらしい1ねんせいをむかえよう」

 入学予定の幼稚園児や保育園児に、小学校生活の様子を伝えるという交流会を2月に実施するにあたり、その交流会で使うプレゼンを作る授業を実施しました。子どもたちが撮ってきた写真の中から、学校の様子(給食・掃除・休み時間…etc)がより分かる写真を選びます。そして、パワーポイントに貼りつける作業を行いました。その後、発表する練習を行いました。

 
2月
  • 2月28日(火) 実践報告会

 12教科・領域+3年・6年・支援、合計15本の実践報告がありました。
 その後、みんなで成果と課題を出し合いました。

 
3月
  • 10月に引き続いて、ICT活用のアンケート実施しました。

 9割の子どもたちが、授業にICTを使いたいと考えていることが分かりました。また発表をするには、ICTを使った方が良いという答えが大半を占めていました。
 

成果と課題

1年生の研究授業

 デジタルカメラを使って写真を撮りそれを用いてプレゼンを作るという活動が実践されました。1年生では、難しいだろうと考えていましたが、担任(学年)の熱心な指導や子どもたちの意欲でとても素晴らしい実践がされました。きめ細やかな指導をすることで、1年生もICTを使えることがわかりました。また、写真を選ぶ際には、伝えたい内容をより分かりやすくする写真を選ぶように視点を伝えていました。これらの視点は、他学年でも必要なものであると確認されました。

3学期実践報告会

 今回の実践報告会では、「全教科・領域+3年・6年・支援」の実践を報告し合いました。みんなが1つ1つの実践を聞くことが出来た点は、良かったと考えます。しかし、時間がかかることや、多くの意見交流を行えない点は、課題が残りました。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

1年生の研究授業

 1年生がタブレットPCを使って授業をしようと考えていました。しかしタブレットPCには、一太郎スマイルがインストールされていないため、パソコンルームでの授業になってしまいました。デスクトップのPCが設置された机の前に立つと、1年生はまだ背が低いので、担任が前から見渡したら隠れてしまう子どもがいました。担当の先生には、やりにくい授業だっただろうと思いました。タブレットPCに一太郎スマイルが入っていれば教室で授業ができ授業が進めやすかっただろうと思われます。
 

1年間の実践を終えての感想

実践報告会

 今年度の実践報告会では、全教科・領域から各3本ずつ、合計36本の実践が出されました。この実践内容と実践数は、とても価値のあるものであると考えます。これら価値ある実践を各教員が共有するために、1学期・2学期・3学期の報告会では、様々な形式で交流しました。
 1学期のようにグループや2学期のポスターセッションにすると、各実践を聞けないという課題がありました。そこで3学期は、みんなで1つ1つの実践を聞くという形にしました。しかし、時間がかかる点や、多くの意見交流を行えない点が課題になりました。豊富な実践があることは良いことですが、各実践に対して丁寧な評価がし難いのがジレンマです。

児童対象ICT活用のアンケート

 10月の結果と3月の結果から、「一人で問題を解くときに、ICTを使った方が良い」という項目に関して、マイナス傾向が現れました。これは一人で問題を解くにあたって、タブレットPCのソフトに問題があったり、電子黒板の使用法に課題があったりしているのではないかと考えています。

デジタルカメラ

 低学年では、デジタルカメラの活用が多かったです。写真を撮ることや動画を撮ることなど、とても手軽にできるため、活用頻度が高かったです。
 

次年度への思い

実践の整理

 活用型の授業を多く行いました。その中でICTが効果的に活用された実践をより精査していくことが必要であると考えます。授業の中で無理にICTを使うことで、子どもの思考力・表現力を見に付けさせる時間が確保できないのでは意味がありません。単元の見直しや実践の見直しがより求められると考えます。

タブレットのソフト

 子どもたちが考えるためにより最適なソフトが必要であると考えます。PC上で自由に操作できるソフトが必要です。普通のノートを使うこととタブレットPCを使うことの差があまり見いだせていない。
 この点が、児童のICT活用アンケート結果にも反映されているものと考えています。

解説と講評

コメント:兵庫教育大学 准教授 永田智子先生

 1〜2月の生活科の授業では,1年生がデジタルカメラで学校を紹介する写真を撮り,適切な写真を選び,プレゼンテーションソフトに貼り付けて,来年度入学してくる幼稚園・保育園の園児たちにプレゼンをするという学習が行われました.報告書にも書かれているように,1年生では難しいだろうと考えていましたが,先生の熱意と子どもたちの意欲でとても素晴らしい実践となりました.1年生でもこんなことまでできるのか!と驚きました.確かにソフトとハードの発達により,1年生でも簡単にICTの操作ができるようになりました.「デジタルカメラを使う」「プレゼンテーションを使う」という操作に関する力ではなく,「伝えたい内容をより分かりやすくする写真を選ぶ」「1枚の写真を使ってわかりやすく伝える」など,それぞれの学年で求められる情報活用能力とは何か,その本質を再考する時期に来たようです.

 橋波小学校は,「多様な教科・領域における活用型学力の育成〜電子黒板やタブレットPCなどを用いた活用型学習の実践事例の創造〜」という研究課題を掲げて,1年目は当初の研究計画通り,実践が積み上げられていきました.@各教員は研究授業に限らず普段から電子黒板やタブレットPCなどを活用した実践事例の創造に取り組み,Aポスターセッションやグループ発表といった形式での実践報告会を行って実践を共有化し,B最終的に全教科・領域から各3本ずつ,合計36本の実践が出されました.本校のこうした研究スタイルは他校が見習う価値のあるものだと思います.

 さて,2年目に向けての橋波小学校の課題を挙げるとすれば,やはり「活用型学力の育成」という点でしょう.「電子黒板やタブレットPCなどを用いた活用型学習」という点では十分実践事例が積み上げられてきましたが,それで本当に「活用型学力」が育成されるのか,育成されたのか,といった点についてはまだ検討の余地がありそうです.たとえば,児童対象ICT活用のアンケートで,「一人で問題を解くときに、ICTを使った方が良い」という設問は,他の設問より肯定的な回答が低くなっていたそうです.つまり一人でのICT活用学習は,活用型学力の育成には十分機能していなかった可能性があるわけです.今後は,「活用型学力の育成」という点について,今まで以上に意識した授業づくりや実践を行うとともに,評価がなされていくことを期待します.

 
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