実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

守口市立橋波小学校の活動報告/平成24年度8月〜12月
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セールスポイント

夏季合同研修会・1学期実践報告会

 今年も同中学校区の小学校(三郷小学校)と合同の夏季研修会を実施しました。昨年は教科毎に分かれて実施しましたが,今年は学年毎に分かれて1学期の実践報告をそれぞれ行いました。その後,記録した内容を元にタブレットPCのコラボノートで意見交流しました。
 後半は,2学期の授業のプランニングを行いました。両校とも11月に公開授業があるため,積極的な意見交流がされました。

公開授業に向けての事前検討会

 9月7日に11月の公開授業に向けて事前検討会(1回目)を行いました。永田先生・木原先生にお越しいただき,5つの授業の打ち合わせを行いました。夏季合同研修会もあったため,少しずつ授業プランが形になってきました。
 10月には,事前検討会(2回目)を行いました。それぞれの授業プランで指導案が出されてきました。研究推進部と該当学年でのみの検討でしたが,熱心な議論がされました。

公開授業研とポスターセッション

 11月30日に,公開授業を実施しました。1年図工,4年総合,5年総合,5年理科,6年英語でそれぞれ授業公開を行いました。また昨年に引き続いて,12教科領域で2学期の実践報告を兼ねてポスターセッションを行いました。

実践経過

8月  夏季合同研修会・1学期実践報告会

 [前半]
 学年毎のグループに分かれて,実践の報告会を行いました。昨年とは違って同学年のグループ編成なので,実践の報告では共有できる部分も多く,熱心な議論となりました。また,議論された内容は,タブレットPCのコラボノートに記録しました。これは,それぞれのグループでの議論を他の学年でも見られるようにするためです。また,コラボノートに不慣れな先生にとっては,実践的研修にもなったと思います。
今回の研修でも,ICT機器の新たな活用方法が聞ける良い機会だったと思います。

 [後半]
 昨年度と同様に,両校とも11月に公開授業があるため,そのプランニングも含めて意見交換を行いました。

 [まとめ]
研修会のまとめに,木原先生にICT活用の効果についてお話頂きました。


 
9月  1回目 事前検討会

 永田先生・木原先生にお越しいただいて,11月30日の公開授業に向けて1回目の事前検討会を行いました。8月の合同研修会で少し考えた授業プランを簡単に書いてもらい研究推進部と学年で話し合いました。話し合う中でプランが分かれたり,変更されたりしながら研究授業の方向性を確認し合いました。


 
10月  2回目 事前検討会

 1回目の事前検討会を受けて,各学年で授業プランについて練ってきました。それを指導案の形にしてもらい,研究推進部で議論しました。細かい授業の流れ,考える力の育成・表現力の育成に関して,細かく話し合いました。部分的に変更した内容を修正してもらい,10月の下旬までに提出してもらいました。


 
11月  公開授業

 [1年 図工]
『絵の中にとびこもう!』
 Stop motion animation をデジタルカメラで作りました。自分たちが描いた絵と登場人物を動かしたものを,細切れに撮影しました。その写真を繋げて動画にしました。



 その後,各グループの作品を評価し合いました。良くなかった部分をグループで話し合いながら修正をしました。


 
   
 

 [4年 総合]
『オペレッタ(ごんぎつね)』
 最後の場面を兵十の気持ちを考えながら,歌やセリフに振り付けや動きを付けて,オペレッタの練習をしました。自分たちの姿をデジタルカメラで撮影し,タブレットPCで確認しました。
 最後には,みんなで考えた動きや歌い方を確認し合いました。

 最後に,このオペレッタを作った先生が登場し,感想を言ってもらうサプライズもありました。


   
 

 [5年 総合]
『災害大国 日本 〜さあ,どうする!?〜』
5年生では,防災について考えてきました。今後起こるだろうとされている大地震にどのように備えるか,もし起こったときどんな対応をするのかを考えてきました。学習してきたことを防災リーフレットとしてまとめました。

 本授業は,防災リーフレットを作成する段階です。コラボノートで作ったリーフレットに付箋機能を使って修正意見を出し合いながら作成しました。

 
   
 

 [5年 理科]
 『ふりこのきまり』
 ふりこが1往復する時間が変わるのは,どんな条件なのかを考える授業でした。本時までに「ふれはばを変える」実験,「ふりこの長さを変える」実験を行いました。本時では,各班の実験結果を一覧にして掲示したものを見ながら,「おもりの重さを変える」実験を行いました。

また,各班の実験結果は,コラボノートに記録してあるため,振り返りはいつでも可能でした。
 3つの実験と各班の実験結果を比較しながら,考察をコラボノートに書き,みんなで共有しました。

   
 

 [6年 外国語]
 『英語で劇を作ろう』
 「ももたろう」「うらしまたろう」「さるかに合戦」を英語劇にして練習・発表しました。前時において自分たちが演じたビデオ撮りをしたものを,本時で動きや声の出し方を確認しました。各グループで,改善する点を話し合いワークシートに記入しました。

今回活用したワークシートは,関西大学で作成されたシンキング・ツール(フィッシュボーン図)を用いました。
 話し合いの後,修正したところを意識して再度演じました。次の時間にはリハーサルをした後,発表をしました。

   
 

 [ポスターセッション]
 ポスターセッションでは,2学期に実践した各教科の実践報告を行いました。(算数・国語・理科・社会・音楽・体育・図工・家庭科・総合・外国語・道徳・2年・6年)
 研究授業をしない先生方は,このポスターセッションで自分の実践を報告しました。
 40分間という限られた時間の中でしたが,双方向で有意義な時間が持てました。

成果と課題

児童向けICT活用のアンケート

 昨年度の10月に実施したものを今年度の10月にも同じようにアンケートを行いました。

 「ICTを使いたいですか?」の質問に,「とてもそう思う」と答えた児童が68%⇒42%に減りました。これは,ICT活用が,本校では通常のことになってきたからだと考えられます。「授業中はICTを使った方が発表しやすいですか?」の質問に,「とてもそう思う」と答えた児童が56%⇒40%に減りました。これも,ICTを使った発表方法が一般的になってきて,必ずしもICTを使った発表が良いと考えなくなってきたからではないかと推察されます。発表の方法に児童が取捨選択を行うようになってきたのではと思われます。
 しかし,「クラス全体でICTを使うとみんなに考えが広がりやすいですか」の質問に,「とてもそう思う」と答えた児童が48%⇒65%に上がりました。クラス全体で考え方を共有するためには,ICT活用が有効であると考えているようです。

活用型学習とICT活用の検証

 1学期の実践報告から,活用型学習とICT活用の検証を行いました。


 実践授業が活用型授業だったのか,また,それにICT活用が効果的に使われていたのかを検証しました。ICT活用の効果は,基礎的効果・本質的効果・副次的効果の3種類で検討しました。
 多くの授業で活用型授業が実践され,加えて本質的効果の高い授業が実践されていました。

 2学期の実践・3学期の実践は,2月の全体会で検証を行う予定です。

公開授業 参加者アンケート結果

 昨年に引き続いて,今年度も参加者アンケートを実施しました。

 参加していただいた方々には,昨年以上に概ね満足していただけた内容だったと思われます。授業討議会は,授業後各教室で行ったため議論が十分されたのではないかと思われます。ICT活用から思考力・表現力,さらには教科論など活発な意見交換がされました。

 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 11月の公開授業に向けて,教職員一同で一致団結して取り組めました。また,昨年度も公開授業を行っているため,一同が段取りを理解していたためスムーズに準備をすることができました。
 昨年度のポスターセッションでは,主にポスターでの発表が多かったですが,今年度のポスターセッションでは,ポスターだけではなく,その他にタブレットPCを使った発表もされました。本当に多くの先生方がICT機器活用に慣れてきた証だと思われます。また,授業で使ったものを資料としてデータ化している点は,橋波小の教職員の意識が向上されてきたからだと思います。今後は,これらの資料を学校全体の共有財産として残して行けるようにしたいと考えています。
 一方で,写真・動画資料,PPT資料,コラボノート作成資料,児童作成の作品などたくさん保存されているため,ハードディスクが一杯になり,新しいハードディスクを購入しなければいけない状態になってきました。

解説と講評

コメント:兵庫教育大学 准教授 永田智子先生

 本年度から橋波小学校では実践授業が活用型授業かどうか、ICT活用が効果的に使われていたかどうか「活用型学習とICT活用の検証ワークシート」を使った検証をはじめました。1学期に実践報告された授業をこのワークシートで検証したところ、多くの授業が活用型で、ICTも本質的な使われ方であったことが明らかになったそうです。

 また10月に児童向けに行なわれたアンケート結果を、1年前のものと比較すると、「ICTを使いたい」とただやみくもにICTを活用することを希望する児童が減り、「クラス全体でICTを使うとみんなに考えが広がりやすい」といった効果的な活用法を認識できている児童が増えました。これはICTを効果的に活用した活用型の授業が日常的に実践されてきた成果ではないかと思われます。

 そして11月30日(金)橋波小学校では、公開授業研究会が開催され、5つのクラスが授業を公開しました。デジカメを使ってストップモーションアニメーションづくりを行う1年生(図工)。オペレッタの練習で、自分たちの姿をデジカメで撮影し、タブレットPCで確認する4年生(総合)。コラボノートで作った防災リーフレットに、付箋機能を使って修正意見を出し合う5年生(総合)。ふりこの実験結果をコラボノートに記録し、比較しながら考察を共有する5年生(理科)。英語劇の様子をビデオ撮りし、改善点を話し合いながらシンキングツールに書き込みをする6年生(外国語)。どの授業でも橋波小学校が研究課題の副題として掲げた「電子黒板やタブレットPCなどを用いた活用型学習」が実現されていました。

 橋波小学校では、年度末にはICT活用の事例集作成、夏には近隣の小学校と合同夏季研修会(1学期の実践報告と2学期の授業プランニング)、秋には公開授業に向けた事前検討会公開授業研究会実践報告のポスターセッション、と着実に研究と実践を積み重ねおられます。通常は実践したら終わりですが、冒頭でも述べたとおり、橋波小学校ではやってきた授業が活用型授業であるのか、ICTが効果的・本質的に使われているのかの検証まで行っています。この検証は、結果よりもむしろプロセスが大切だと思います。検証のプロセスを通じて「ICTを活用した活用型学習とはなにか」を全教員が理解することができるからです。その理解が次の授業づくりに生きるのです。実際、検証を始める前は、活用型学習なのだろうか?と疑問に思った授業もありましたが、現在はそのように感じることがなくなりました。ICTを活用した授業をするだけでも大変ですし、検証作業はさらに面倒なことかもしれませんが、とても大事な作業だと思います。これは他校でもぜひ参考にしていただきたい点です。

 橋波小学校の研究期間も残すところあと少しとなりました。実践についてはもはや文句のつけどころがありません。今後の課題は研究成果をいかにまとめるかです。これまでの実践のなかで成果の上がったものはもちろん、成果の上がらなかったものもふくめて、まとめていただくと、自校だけでなく他校の実践の参考になることでしょう。

 
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