実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

西宮市立北六甲台小学校の活動報告/平成23年度8月〜12月
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セールスポイント

・情報教育推進研修会と豊田准教授の講演会の実施

 夏季休業中に情報教育推進研修会を実施し、全教員で1学期の取り組みや実践経過などの情報共有や意見交換を行った。本校のアドバイザーである豊田充崇先生(和歌山大学准教授)より、「ICT活用授業を機会とした授業の工夫・改善」をテーマに、約1時間の講義があり、2学期の取り組み方を共通理解した。

・フラッシュコンテンツを取り入れた「基礎・基本の時間」の授業参観で
 保護者にICT機器活用の取り組みを披露

 9月の参観日、本校で行っている「基礎・基本の時間」にフラッシュコンテンツを活用した取り組みを保護者に授業公開した。また、「基礎・基本の時間」におけるICT活用に関して保護者アンケートを実施した。

・デジタル教科書の実践事例集(国語・算数)の作成

 1学期に引き続き、デジタル教科書を活用した授業作りを全クラスで取り組み、その実践事例をまとめ、実践事例集を作成した。

・ICT機器のさらなる充実と講習会

 デジタル掛図やポケモンPC、デジタルカメラなど、新たなICT環境を導入し、授業に活用できる環境を整備した。さらにプロジェクターやデータプリント集、デジタルカメラなどの講習会を行い、操作技能の向上を図った。

実践経過

8月 ・情報教育推進研修会と豊田准教授の講演会実施

 8月の夏季休業中に情報教育推進研修会を実施し、全教員で1学期の取り組みや実践経過などの情報共有や意見交換を行った。
 本校のアドバイザーである豊田充崇先生(和歌山大学准教授)より、「ICT活用授業を機会とした授業の工夫・改善」をテーマに、ICTの活用で効率化した結果生み出せる余剰時間をどのように活用するか、映像活用の際に児童を視聴者にさせない工夫など、約1時間の講義があり、2学期の取り組み方を共通理解した。
 デジタル教科書やフラッシュコンテンツを使ってみての 長所や短所、使い方のアイデアなどについての共通理解することができた。

 
   
9月 ・フラッシュコンテンツを取り入れた「基礎・基本の時間」を保護者に  授業公開し、ICT活用の取り組みを披露
 9月5日(高学年)、7日(低学年)の参観日に本校で行っている「基礎・基本の時間」にフラッシュコンテンツを活用した取り組みを保護者に授業公開した。また「基礎・基本の時間」におけるICT活用に関する保護者アンケートを行った。
   
11月 ・デジタル掛図 [理科3〜6年・社会3・4年下、5年、6年] の導入
 デジタル掛図(理科・社会)を購入し、各クラスで使えるように環境整備した。

・プロジェクター講習会の実施
 11月7日にプロジェクターの講習会を行い、プロジェクターの機能や使い方について理解を深めた。 ※協力:(株)EPSON、(株)カシオ計算機

・データプリント集研修会の実施
 11月7日にデータプリント集の導入を検討するため、Sプリやiプリなどのデータプリント集の活用方法について講習会を行い、検討会を実施した。

・ポケモンPCの導入
 11月7日ポケモンPCを導入し、マウスレッスンやローマ字レッスン、タイピングレッスンなどの児童のICT機器操作技能の向上を図った。

・デジタルカメラの導入・活用講習会の実施
 新たにデジタルカメラ10台を導入し、12月8日に普通教室で使えるデジカメの活用法についての講習会を行った。
※協力:(株)カシオ計算機

・豊田先生による情報モラルについての出前授業と研修会を実施
 豊田先生による情報モラルについての出前授業を実施した。「情報モラルの指導の仕方」や現在の児童を取り巻く「情報機器をめぐるトラブル」についての講義があった。
   
12月 ・児童・教職員にアンケート調査を実施
 デジタル教科書の活用に関してこれまでの取り組みの評価と今後さらに効果的な活用を探るために全児童・全教員を対象にアンケート調査を実施した。
 

成果と課題

ICT機器環境のさらなる充実と講習会の実施

 授業で生かせるICT機器を充実させるために、3〜6年生のデジタル掛図(社会・理科)を購入し、各クラスで使えるよう環境整備をした。
またポケモンPCを導入し、マウスやキーボードレッスンによる児童の操作技能の向上に役立てている。
 さらに、デジタルカメラや、プロジェクターの活用についてもメーカーの協力を得て研修会を行い、教員の活用技能の向上を図った。データプリント集の導入についても検討し、来年度からの導入について検討中である。

さらなる実践事例の構築

 1学期に引き続きデジタル教科書を使った授業実践に取り組んだ。学期の途中だった1学期に比べて多くの実践を行うことができた。

○ デジタル教科書の評価の取り組み

 デジタル教科書活用による効果について評価するため、11月に児童・教師全員にアンケート調査を実施した。今後1月、3月、5月と定期的にアンケートを集約し、データを分析・検討していく予定で、どのように「変わっていくのか検証していきたい。

○ 保護者・地域にもICTを使った特色ある教育の推進をアピール

 本校のICTを効果的に活用した特色ある教育についての取り組みを学校だよりで保護者・地域に紹介した。
 9月の参観日にはフラッシュコンテンツを使った「基礎・基本の時間」を公開し、保護者に本校の特色ある教育の推進をアピールすると共に評価の機会を設定した。

○ 情報モラルの出前授業と2回のアドバイザーによる研修会の実施

 ICTによる効率化で生み出された余剰時間を個別学習やグループ学習等でのじっくり定着させる時間の確保、反復練習の時間などの有効的な時間の活用をする。
 ただ、デジタル教科書・教材を見せたり聞かせたりするだけでは効果が上がりにくいので見せた後、子どもにどう活動(思考)させるかについて授業展開の工夫が必要である。
 普通教室のICT機器の常設環境において、活用頻度の多い方が児童の学力向上に効果的であることを知り、ICT機器を使った授業の工夫や掲示物を見直す良い機会となった。
 また、WEBサイトなどの最新事例などを豊田充崇和歌山大学准教授に紹介していただき、児童やその友人関係等に与える問題の深刻さを考える良い機会となった。

□ デジタル教科書の機能の限界

 1学期から取り組んでいるデジタル教科書の機能をほぼ知り、授業で活用してきている中で、デジタル教科書の機能だけでは理解を深める授業を実践することが難しいことがわかってきた。そこでこれからはデジタル教科書と黒板や書画カメラを組み合わせた授業展開に取り組んでいくことで、児童のより深い理解へとつなげていくことが課題として浮かび上がってきた。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

忙しい行事の中、研究の推進に取り組めたこと

 2学期は運動会、図工展、マラソン大会などの数多くの行事がある中ではあったが、1学期同様にICTを使った授業作りに取り組めた。また、アドバイザーの先生を講師として有意義な研修会を2回も実施できた。本校教師集団の研究を推進していこうとする姿がとても素晴らしい。それにより、2学期は1学期の倍の実践事例を作り上げることができた。

他校の研究会が良いプレッシャーに

 2学期に入り、市内外の研究会に多くの先生が参加し、次年度の研究発表会に向けた意識付けができた。先導的に研究に取り組まれている学校の研究発表会はとても本校の研究に刺激を与え、研究発表会まであと半年と迫った中、良いプレッシャーとなった。

地域の方の応援に感謝

 地域や保護者の方々が本校の取り組みを良く理解して頂き、デジタルカメラを10台寄付していただいた。
 来年度の研究発表会に向けて、古くなった飼育小屋のペンキの塗り替えや植樹など、校内の環境整備に携わって頂いたことに、感動と感謝の気持ちでいっぱいです。

解説と講評

コメント:和歌山大学 准教授 豊田充崇 先生

 11月某日、ほぼ「抜き打ち状態」で、授業中の全教室を参観させて頂きました。そこで見えてきたバリエーション豊かなICT活用の場面をいくつかまとめてみたいと思います。

北六甲台小学校:
ある一時限を巡回して確認した「同時進行中のICT活用場面」

OHCによる操作実演 OHCによって拡大して
細部を観察
OHCによってシナリオを
発表
デジタル教科書による
順序だった提示
デジタル教科書による
手順の解説
デジタル教科書の
双方向性機能の利用
デジタル教科書の挿絵を
拡大して発問を明確に
デジタル教科書で図形・
黒板は文字で使い分け
地層の動画教材の視聴と
解説
自動車工場の
動画コンテンツの活用
その場で検索結果の表示 支援学級での電子黒板活用

 上記は、わずか1時限分を巡回した結果をまとめたものであり、同時並行におこなわれています。とにかく、全教室でICT活用が実施されており、基本的な操作とその効果的な活用場面については既に全教員に浸透しているといえるでしょう。

 印象的なのは、児童らのICT機器そのものに関する「物珍しさ」については完全に通り過ぎており、むしろ、そこに映し出される教材の内容に目が行っていたことです。

 初期のころは、アニメーション効果など、内容ではなく機能に注目が集まっていましたが、今では黒板と同様に、あるべくしてあるものだという感覚を持っていたように思います。

 OHCやデジタル教科書の活用はもとより、その場でのネット検索結果を表示したり、児童の発表手段としても利用するなど、各種の有効活用場面が見て取れました。

 こういったことが短期間に実現可能になった要因はいくつか挙げられますが、以下のような点は見逃せません。

  • ほぼ共通仕様のICT設備環境が全学級に配備されている。
  • 教室配備の機器類は設置・配線等の必要が無い。
  • 各種必要な教材やファイルはネットワークにて共有されている。
  • 廊下側の壁が無いオープンスペースタイプの学級であるため、隣接する学級での取り組みが自然に交流できる。

 また、当然ながら、先生方の意識の高さ(少しでも児童のためになるなら労苦は厭わない)をはじめ、コアになる情報担当者の働きや校長のリーダーシップなど人的要因も整っていると考えられます。

 それにしても、注目されるのはその改革のスピード感です。よく企業コンサルタント雑誌の見出しなどには「改革にはスピードが必要」などと書かれていることがありますが、教育現場にはそのような理論は通用しないと思っていました。

 しかし、北六甲台小学校のICT活用は、まさに「急速なスピードで進展した」といえるでしょう。

 さて、現在の状況を大雑把にまとめると、以下のようなことが起こっているといえます。

  • 情報設備環境やデジタル教科書を操作し、授業中に目的に応じて活用する段階は通り過ぎ、その利点と限界もほぼ掌握。
  • ICT活用で子ども達には負けないという勢いから、情報モラル(ケータイ問題)の授業実践にも着手。
  • さらに、タブレットPCを児童一人一台体制で活用するという“フューチャースクール”さながらの授業実践も1月当初の段階で既に公開済み。

 今後は、一通りやってきた中で、「授業改善」そして「学力向上」の目的をじっくりと見据えた取り組みとしての評価が問われていくことになるでしょう。これからの取り組みにも期待がかかります。

 
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