解説と講評 |
|||
コメント:和歌山大学 准教授 豊田充崇 先生 |
|||
■ 3学期の取り組みから まず北六甲台小学校の研究テーマを改めて見直すと「学びを深める子どもの育成〜デジタル教科書の活用で基礎学力の確かな定着を図る〜」とあります。つまり、デジタル教科書の活用で基礎学力の定着を促し、その上で、学びを深めていくという長期的な検証を目的としています。この3学期は、その2つの段階が顕著に現れたといえます。
■ 「教師のデジタル教科書活用」を発端として、 不意に訪問した際ですが、休憩時間の廊下を兼ねたオープンスペースで、写真のようなタブレットPCを利用して社会科の情報検索をしている児童らが集まっていました。インターネットで調べたことを発表できるように、簡単なスライドソフトでまとめをしている児童もいました。児童らの「調べて・まとめ・伝える」ためのツールとして、完全に位置づいている様子が伺えました。
ただ、こういった状況が「日常化」しており、児童らが学習ツールとして自然に活用されているといった点で、国内の「フューチャースクール事業(学びのイノベーション事業)」に匹敵するレベルにあるようにも感じます。しかも、デジタル教科書活用を発端とした学校教育の情報化の発展系として、短期間且つ段階的に取り組まれた好事例となっているのではないでしょうか。 ■ 2012年度に向けての課題と展望 年度末に児童向けに実施したデジタル教科書の使用感のアンケート結果で1つ気になる点があります。本来、児童らに支持されるはずのデジタル教科書の使用に関して、少し冷ややかな意見が予想に反して多かったことです。もちろん大部分の児童は、デジタル教科書の有効性を認めているものの、「別に無くてもかまわない」、「使わなくてもいい場面もあった」と感じている児童も予想以上に多かったのです。その詳しい理由は分かりません。もしかしたら、活用事例の収集を急ぐあまりに、肝心の目の前の児童に目を向ける、本来の授業改善に注力するといったポイントが欠けていたのではないかといった自己反省的な意見も先生方からは出されました。機器のトラブルが生じて先生方が児童らの前で悩んだり右往左往している場面、画面を見つめたまま児童らとの距離を保っていたり、デジタル教科書の教材研究に時間を割かれて児童らのノートへのコメントが減ってしまったり、そういったところを敏感に感じ取ったのかもしれません。 ただ、先生方の実感として「やはりデジタル教科書は優れた教材提示手段である」という共通認識はありました。結果は真摯に受け止め、そう考えている児童らがいるなら、そうならない配慮をした上でもっと有効的な活用方法を考えようという前向きなアプローチがなされたのが印象的でした。 デジタル教科書という共通の教材を使うことで、各先生方の指導方法の相違点がはっきりとしてきます。今回は、漢字指導においてもはっきりとその違いが見えてきました。 2012年度は、デジタル教科書の活用研究から一歩進め、デジタル教科書を共通利用教材とした授業研究へシフトできるような取り組みを考えていきたいと思います。 |
|||