実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

西宮市立北六甲台小学校の活動報告/平成24年度4月〜7月
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セールスポイント

〇 新たなメンバーを迎え、新学年で研究授業へ向けて

4月に新たなメンバーを迎え今年度の研究がスタートしました。6月に大きな研究会を控えていて、4月からどのクラスでも研究会に向けて目の前の子どもたちと取り組んできました。学級開きと同時に指導案や授業づくりに全教員が一丸となって取り組む姿は本校の自慢です。

○ バラエティーに富んだ19本の公開授業

研究発表会に向けて公開授業者の希望を募ってみるとなんと19本になりました。これは本校のほとんどのクラスで発表することになります。
(本校は全23クラス)
さらに、その公開内容がとてもバラエティーに富んでいて、国語6クラス、 算数5クラス、理科2クラス、社会2クラス、図画工作1クラス、家庭科1ク ラス、基礎・基本2クラスと多教科に渡って公開授業をすることができました。

○ 2回に渡る講師の先生による指導案の検討会

5月初めに昨年度より指導・助言して頂いている和歌山大学准教授豊田充崇先生と元京都教育大学付属桃山小学校副校長川端建治先生、さらに西宮市教育委員会の森本英治指導主事にも来て頂き、研究発表会に向けての指導案検討会を行いました。
 そこで指導して頂いたことを踏まえ、5月末に2回目の検討会を行いました。そこでは、どの先生方も授業に向けて、「子どもたちのために」という気持ちを持って積極的に意見を交換している姿が見られました。

○ 全職員・保護者・地域の方に支えられて

6月22日の研究発表会までに多くの方々に支えられてきました。全職員で研究発表会を成功させようと一丸になって取り組みました。授業を公開する先生、分科会で司会・記録の運営に当たる先生、ポスターセッションで本校の研究を紹介する先生、お弁当やお茶の準備をしてくださった給食室の方々、駐車場や学校のいたるところを修繕してくださった用務員さん、予算の見積もりから会計ま
でお世話になった事務員さんなど、学校の全員で関わりました。
それ以外にも、当日、駐車場や本校周辺で道案内をしてくださった保護者の方々や学校をきれいにしようと取り組んでくださった地域の方々など、たくさんの人たちの支えにより研究発表会に臨むことができました。

○ 350名以上の参加で大盛況の研究発表会

6月22日の研究発表会は前日の台風5号での警報の中、
児童の登校を心配していましたが、350名以上の参加者と共に、大盛況で終えることができました。公開授業18本、2つのテーマごとの分科会、ポスターセッション、パナソニック教育財団遠山敦子理事長様による講演会、パネルディスカッションと盛りだくさんの内容で充実した 発表会となりました。

実践経過

〇 公開授業者決定

4月の学級開きの前に授業者を決めるということで4月の8日には授業者が決定し、研究発表会まで取り組みを進めることができました。どの先生も授業をしたいという前向きで積極的な姿勢で取り組みができました。

○ 2次案内発送

授業者が決まり、2次案内を4月中旬に作成することができました。西宮市内の小・中・特別支援学校はもちろんのこと、県内の学校はじめ、近畿地方のほとんどの県、さらにパナソニック教育財団の指定校にも発送しました。それだけではなく、日本教育新聞や東京書籍のHPにも取り上げて頂きました。またYahoo知恵袋にも本校の研究が話題になっていたようです。


○ 指導案集作成

指導案をまとめた指導案集づくりを6月初めに行いました。全部で300部作成するのに、全職員で取りかかり、素敵な指導案集を完成させることができました。当日はその予想を上回る参加者に来て頂いたこともあり、前日に追加して作成するなど、うれしい状況になりました。


○ 実践事例事典の作成

昨年からのデジタル教科書の活用についての実践を各学年ごとにまとめ、さらに辞典のように調べられるようにしたのが、実践事例事典です。これは、各学年の年間指導計画より、調べたい実践をクリックするとハイパーリンクによりその実践事例の記事が出てくるようにしてあります。その実践事例の総数も133あり、本校の2年間の実践が集約されています。

○ 公開授業の見どころづくり

研究発表会に来て下さった方にわかりやすいように授業の見どころを作りました。紙面でまとめたものと授業者本人によるPRビデオを作成することができました。紙面の方は研究冊子と一緒に配布し、ビデオは玄関のところで繰り返し流すことで、参加された方への案内になっていました。

○ 全体会・ポスターセッションリハーサル

研究発表会の前に全職員で全体会とポスターセッションのリハーサルを念入りに行いました。特にポスターセッションでは参加された方からの質問を想定したり、お互いが聞き取りやすいかなどを交流し合ったりと熱心に取り組みました。

○ 研究発表会

研究発表会では、10時の受け付けより早くからたくさんの参加者が来校され公開授業の前の2校時より参観者がおられた教室もあるほどでした。
公開授業Tの後にはすぐ「きく」ことと「ICT」の2つの分科会に分かれ議論を行うことができました。その後、ポスターセッションが行われ、午後の公開授業Uへと続き、その後、遠山理事長様の講演会、さらにパネルディスカッションとどれも盛況で大成功に終えることができました。

 

成果と課題

成果 ○ 研究発表会を大成功させることができた!!

<公開授業>

1年 算数「のこりはいくつ ちがいはいくつ」 1年 国語「かいがら」 2年 国語「ふろしきはどんなぬの」
2年 基礎・基本「国語・算数・音楽」 2年 算数「水のかさをはかろう」 3年 国語「えらんだ理由を話そう・聞こう・聞き合おう」
3年 算数「円と球」 4年 理科「夏の自然」  4年 国語「メモの取り方を工夫して聞こう
4年 算数 「四角形をつくろう」 4年 図画工作「行け!マイキャラ探検隊!! 5年 家庭科「元気な毎日と食べ物」
5年 国語「新聞記事を読みくらべよう」 5年 社会「米作りのさかんな地域」 5年 理科「花から実へ」
6年 基礎・基本「国語・算数・英語」  6年 国語「自分の考えを明確にしながら書こう」 わかば 算数「3つの数の計算」

どの授業においても先生と子どもがいきいきと授業をしていて、笑顔で取り組んでいました。多くの参観の方に見て頂き、教師も児童も大きく成長できた公開授業でした。

<ポスターセッション>

各学年の取り組み 保健指導について デジタル教科書体験コーナー

<分科会>

分科会A(きく)
元京都教育大学付属桃山
小学校副校長 川端 建治氏
分科会B(ICT)
和歌山大学准教授 豊田 充崇氏

<特別講演>

パナソニック教育財団 遠山 敦子理事長による特別講演「学びを深める子どもの育成」

<特別講演>

校長挨拶 眞鍋昭治西宮市教育長挨拶 研究報告

<パネルディスカッション>

西宮市教育委員会森本英治指導主事をコーディネーターに和歌山大学准教授豊田充崇氏と元京都教育大学付属桃山小学校川端建治氏をパネリストとしてパネルディスカッションを行った。会場からもPTA会長や学校評議員の方々からも意見を頂き、活気あふれる議論が行われました。

課題 ○ これからの取り組みへ向けて

研究発表会で二人の講師の先生にもご指摘頂いたように、本校の児童の次なる課題は「きき合い」が成立するために本気で「ききたくなる」「伝えたくなる」子どもをどう育てていくかということです。2学期以降、さらに研究を深めていきたいと思っています。また、この研究会を通して学んだことを他の学校に発信していくことがこれからの本校に与えられた使命だと考えます。

<運営面・その他>

授業者紹介DVDを作成したり、本校の卒業生の前田佳代乃選手のオリンピック応援旗を作ったり、1台1台の駐車場を作るなど、いろいろ運営面でも協力して取り組めました。

 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

○ ヒヤヒヤしました。

6月22日の研究発表会を迎えるに当たり、たくさんのヒヤヒヤすることがありました。

1つ目は研究発表会の週に二度も警報が発令されたことです。6月には珍しく台風が2つも関西に上陸し、台風4号の際には、警報により休校になりました。どのクラスも発表会の日までに単元が進んでいけるのかとヒヤヒヤものでした。さらに前日から当日にかけても台風5号が接近し、研究発表会当日に子どもがいないという最悪の事態も想定されました。そんな中、当日の明け方に警報が解除され、無事に子どもたちと研究発表会を迎えられました。担当者としては夜中ずっとヒヤヒヤさせられっぱなしでした。

2つ目は当日に起こりました。ハプニングはつきものだと考えていましたが、当日の公開授業Uの最中に講演の演題が風によりはずれてしまうというハプニングが起こりました。すぐに見つけてくれた先生が教えてくれ、手の空いている職員で修復に取り掛かったので、何とか遠山理事長の講演までに間に合うことができました。はずれるのが講演中だったらと考えるとヒヤヒヤします。

いろいろとありましたが、振り返ってみると全てが素晴らしい思い出になり、本校職員一同も一生に一回しかできないとも言える研究発表会を楽しみながら笑顔で終えることができました。このような素晴らしい機会を与えてくださったパナソニック教育財団の皆様に感謝申し上げます。これからも目の前にいる子どもをしっかり見つめながら研究活動に取り組んで行こうと決意しました。

 

解説と講評

コメント:和歌山大学 准教授 豊田充崇 先生

 6月22日の公開研究会は、悪天候の中でも350名超もの参加者を迎えて大盛況のうちに終わりました。おそらくICT活用研究を題した会で、19教室もの授業公開数は、2012年度の日本記録!?ではないかと思います。また、2本立ての分科会設定、基調講演(元文部科学大臣 遠山敦子氏)、パネルディスカッションに加えて体育館にてポスターセッション形式発表をおこなうというチャレンジングな取り組みを6月の時点で達成できたことも驚きです。「多忙化解消、負担・リスク軽減」へ向かう風潮の中、当研究会の設定自体に勢いがあり、参加者を圧倒したことは間違いありません。
 研究テーマは「デジタル教科書の活用で基礎学力の確かな定着を図る」でしたが、公開授業の中には、タブレット型モバイル端末活用授業(グループ一台利用)や、シミュレーション系のデジタル教材活用(一人一台利用)をはじめ、デジタル表現・創作的活動の授業もあり、バリエーションの豊富さにおいても特色がありました。体育館でのポスターセッション形式にも紙のポスターとICTとの併用が見られ、これまでの取り組みで当日実践できない事例を発表したり、デジタル教科書や機器類の体験ブースを設けるなど、非常に密度の濃い内容の研究会であったといえます。

 研究会全体の概観を振り返ってみますが、各教員に共通しているのは「学びを深める」ために「適切な手段」を用いているということです。よって、場合によっては、デジタルの利点を前面に、あるいはアナログのよさや利便性を前面に、必要なら「その両者の融合」をというのが、自然に「こなれている」といえます。北六甲台小学校には「デジタルを選ぶ」という「選択肢」があり、「デジタルの利点を把握した上で使う・使わない・組み合わせる」という判断ができる環境整備と各教員にその判断ができる経験が積まれてきたといえます。
 しかし、その裏では、先生方のジレンマもあったことは確かです。「ICTの効果的な活用を謳った限りは、見せ場のある授業にしたい。でも、今回の授業では、ICTを使わなくてもできるし、むしろ要らない・・・しかし、今回の授業研はICTだし・・・」という会話が、研究会前から繰り返されました。このあたりは、研究会では見ることはできないのですが、これからICT活用に取り組む学校にとっては必要な情報なのかもしれません。

 ICTは手段ですので、それが目的化することはありません。手段を用いることを学習の目的に据えてはいけないは確かです。しかしながら、使ってみて効果的な場面を実感することも必要ですし、使わないほうがいい場面を見極めることも重要です。さらには、他者がおこなっている効果的な活用方法を自分ならどうするかを考える場面も必要かと思います。1年間、こういうことを繰り返してきた結果、ICTの使い方を検討するというよりは、この手段・ツールをどのように使えば従来と比較して学習効果を向上できるかといった視点が強くなっていったと感じています。
 先生方は、非常に真面目に考えるので、効果がほぼ同じであれば、無理に使わなくてもと考えてしまいがちです。それは、ICT活用環境を設営する手間・苦労や機器の操作に余力を費やしてしまうからです。しかし、北六甲台小学校は、ICT活用の常設環境と、全員が一定の操作スキルを持っていることで、「アナログ的な手法でもデジタル的な手法でも効果が同じならとりあえず使ってみる」という方向にあるかと思います。但し、従来の方法と効果が同じであっても、限られた授業時間がそれによって効率化されたり、教材準備時間が短縮されるという、一見把握しづらいような効果が見込まれることもあり、これは長期間の取り組みや「使う場面・使わない場面」が併用されることによって、実感されてくるものだと思います。

 さて、研究会を終えての課題の面ですが、これは、もう1つ上の大きな研究目標である「きく」という部分、そのための「聞き合い」やきかせるための伝える工夫、きいて欲しいという意欲の向上といった点にあります。この点の課題はハッキリとしました。
 ICTを活用するスキルは誰も問題ありません。もう1つの学校目標としての「きく・ききあう・きかせるくふう」・・・ここに、ICTがどうアプローチしていけるかにかかっているといえるでしょう。これから、2,3学期と進むにつれて、どのように課題を克服し、ICTを効果的な手段として成立させていくのか、今後のレポートにご期待下さい。

 
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