実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

西宮市立北六甲台小学校の活動報告/平成24年度8月〜12月
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セールスポイント

〇 中間報告会への参加

8月6日に東京で行われたパナソニック教育財団の中間報告会に参加し、本校の取り組んできた研究について報告することができ、また他の学校との情報交換をすることで今後の研究に活かしていくことができた。

○ 参観・懇談会でフラッシュコンテンツ活用の基礎・基本の時間を実施

昨年同様に、今年も9月11日(2・4・6年)、12日(1・3・5年)の参観日に本校で行っている「基礎・基本の時間」にフラッシュコンテンツを活用した取り組みを保護者に授業公開した。

○ 愛知県知立市の教育委員会の視察

10月23日に本校のICT研究の取り組みを愛知県知立市の教育委員会6名が視察に来られた。本校での実践を他校に発信していくよい機会となり、情報交換をしたことで本校のこれからの取り組みを考えていくことができた。

○ 公開研究会の実施

10月30日に今年度のICT研究の公開研究会を4年生算数で実施した。デジタル教科書を用いず、数学的な考え方を養う授業作りを目指した授業を行い、本校のアドバイザーでもある和歌山大学の豊田充崇准教授から指導助言を頂き、今後の研究に向けての取り組みについてもアドバイスを頂くことができた。

○ 北海道岩見沢市の視察

11月29日に本校のICT研究の取り組みを北海道岩見沢市の教育委員会事務局1名と教員5名が視察に来られた。10月の愛知県知立市の時と同様に本校の取り組みを他校に発信していく良い機会となり、本校としても今後について考えていくことができた。

○ 人権参観・懇談会での情報モラル授業実施

12月4日(低学年)、5日(高学年)の人権参観を行い、高学年の授業では、情報モラルの授業に取り組み、携帯電話をめぐるトラブルについて考えることができた。懇談会でも家庭での携帯電話の与え方や使う際のルールについて活発に意見交換が行われ、学校と家庭で情報モラルについて考えていける良い機会となった。

実践経過

8月6日 中間報告会への参加
      
9月11日、12日  フラッシュコンテンツを活用した基礎・基本の時間の参観
      
10月23日  愛知県知立市教育員会の視察
      
10月30日  ICT機器活用 市内公開授業研究会
      
11月29日  北海道岩見沢市教育委員会の視察
      
12月4日、5日  情報モラルを取り入れた人権授業参観・懇談会
 

成果と課題

<成果>

デジタル教科書の活用を1年半近く取り組んできたことにより、ICT機器の日常的な活用が定着してきており、デジタル教科書を活用するのかアナログで指導していくのかを選択することができるようになってきている。どのように活用すれば目の前に児童に理解させられるのかについて考えながら授業を組み立てることができている。また、この取り組みを実践事例事典にまとめ続け、たくさんの事例を次年度へ引き継いで行くことができている。

<課題> 

デジタル教科書を教員が活用することが定着してきたが、児童がデジタル教科書を活用できるよう授業に取り込んでいくことが、これからの課題である。また、本校のもう一つの研究テーマである「きく」に関連して、「きかせるために」どう発信していきたいと考える子を育成していくか。

 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

○ ICTを活用した授業の日常化

この期間は、研究発表会が終わった後ではあるが、運動会や音楽会などの行事で忙しく、愛知県や北海道からの視察がある中でも、本校のどの学級でもICT機器が日常的に活用されていた。どの教室をのぞいてもデジタルTVにデジタル教科書を提示しながら、黒板の板書と併用しながら授業をしている姿を見ると、情報担当者としてとてもうれしい気持ちになり、デジタル教科書が本校の研究として浸透していっていると実感がもつことができました。

 

解説と講評

コメント:和歌山大学 准教授 豊田充崇 先生

 北六甲台小学校は、特別研究指定校としての研究発表会を先行して6月に実施しましたが、この時期にあれだけの規模の研究会を実施したのは異例のことだと思います。しかし、この時期に実施するメリットは2つあると思います。

 1つ目は、早期に実践上の課題を抽出してその後の2,3学期の活動につなげていけるという点です。研究発表会の目的は、これまでの実践研究の成果を公開するとともに、自らの授業改善につなげていくことが最大のウエイトを占めるはずですので、そういった点でも早期実施のメリットを生かしやすいといえます。

 8〜12月のレポートを書くにあたり、二学期の様子を伺うと、確かに研究会での課題を元に授業設計を改める機会や、「聞き方の質を高める工夫」としての児童の発表機会や意見交流の機会を設定するといった取り組みがなされているとのことでした。もちろん、日常化したデジタル教科書の活用を継続していることはいうまでもありません。

 さて、早期の研究会実施のもう1点のメリットは、各種の視察の受け入れや逆にこちらからの他校への研究会参加の際に、自ら行ってきたこととの差異を見出しやすいという点です。「北六甲台小学校ではICT活用が日常化している」という噂(いえ、そういった事実)が全国的に伝わり、他府県からの学校視察が続いているようです。デジタル教科書の全市導入を検討している自治体からの視察も含まれます。その都度、他者からの評価を受けることになり、自らの取り組みを相対的・客観的にとらえ直す機会となります。また、他の公開授業研究会のシーズン(主に11月頃)に授業を見学する際に、「デジタル教科書をここで使えば効果的なはずだ」もしくは「デジタル教科書を使わなくてもこういった教材提示が可能なのか」など、目的意識を持って参観することができるのではないかと思います。

 つまり、公開研究会を最終目標にして燃え尽きる?というよりは、公開研究会をきっかけにして、その後の年度末までの期間に、自らの授業を律する機会や継続的な授業改善につながるきっかけづくりに向かえるのではないかということです。

 2学期終了時点で、この2つのメリットを考えると、早期に研究会を実施した意義が大きかったといえるはずです。

 さて、北六甲台小学校の特別研究指定校としての研究課題は「学びを深める子どもの育成」でそのサブタイトルは「デジタル教科書の活用で基礎学力の確かな定着を図る」となっています。つまり、デジタル教科書に求めていることは「基礎学力の定着」であり、終盤での検証としては、本当に基礎学力の定着に効果的であったのかを念頭に置く必要があるかと思います。デジタル教科書の有効活用によって基礎学力の定着を図るというステップはクリアしているとはいえ、その次の「学びを深める子ども」につなげていくためには、デジタル教科書を活用するだけでは達成不可能なことは明白です。そこには、教材解釈や発問の意図をしっかりと持ち、45分間の授業設計と計画された単元構成等々様々な授業の要素が関係してきます。今はそういったことも考えて、研究の終盤に入る時期にきているといえるでしょう。

 
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