解説と講評 |
コメント:和歌山大学 准教授 豊田充崇 先生 |
北六甲台小学校は、特別研究指定校としての研究発表会を先行して6月に実施しましたが、この時期にあれだけの規模の研究会を実施したのは異例のことだと思います。しかし、この時期に実施するメリットは2つあると思います。 1つ目は、早期に実践上の課題を抽出してその後の2,3学期の活動につなげていけるという点です。研究発表会の目的は、これまでの実践研究の成果を公開するとともに、自らの授業改善につなげていくことが最大のウエイトを占めるはずですので、そういった点でも早期実施のメリットを生かしやすいといえます。 8〜12月のレポートを書くにあたり、二学期の様子を伺うと、確かに研究会での課題を元に授業設計を改める機会や、「聞き方の質を高める工夫」としての児童の発表機会や意見交流の機会を設定するといった取り組みがなされているとのことでした。もちろん、日常化したデジタル教科書の活用を継続していることはいうまでもありません。 さて、早期の研究会実施のもう1点のメリットは、各種の視察の受け入れや逆にこちらからの他校への研究会参加の際に、自ら行ってきたこととの差異を見出しやすいという点です。「北六甲台小学校ではICT活用が日常化している」という噂(いえ、そういった事実)が全国的に伝わり、他府県からの学校視察が続いているようです。デジタル教科書の全市導入を検討している自治体からの視察も含まれます。その都度、他者からの評価を受けることになり、自らの取り組みを相対的・客観的にとらえ直す機会となります。また、他の公開授業研究会のシーズン(主に11月頃)に授業を見学する際に、「デジタル教科書をここで使えば効果的なはずだ」もしくは「デジタル教科書を使わなくてもこういった教材提示が可能なのか」など、目的意識を持って参観することができるのではないかと思います。 つまり、公開研究会を最終目標にして燃え尽きる?というよりは、公開研究会をきっかけにして、その後の年度末までの期間に、自らの授業を律する機会や継続的な授業改善につながるきっかけづくりに向かえるのではないかということです。 2学期終了時点で、この2つのメリットを考えると、早期に研究会を実施した意義が大きかったといえるはずです。 さて、北六甲台小学校の特別研究指定校としての研究課題は「学びを深める子どもの育成」でそのサブタイトルは「デジタル教科書の活用で基礎学力の確かな定着を図る」となっています。つまり、デジタル教科書に求めていることは「基礎学力の定着」であり、終盤での検証としては、本当に基礎学力の定着に効果的であったのかを念頭に置く必要があるかと思います。デジタル教科書の有効活用によって基礎学力の定着を図るというステップはクリアしているとはいえ、その次の「学びを深める子ども」につなげていくためには、デジタル教科書を活用するだけでは達成不可能なことは明白です。そこには、教材解釈や発問の意図をしっかりと持ち、45分間の授業設計と計画された単元構成等々様々な授業の要素が関係してきます。今はそういったことも考えて、研究の終盤に入る時期にきているといえるでしょう。 |