解説と講評 |
コメント:宮崎大学 教授 新地辰朗 先生 |
教室での情報コミュニケーション技術(ICT)の活用に対して,多くを期待しがちですが,有効なICT活用とするには,教師に相応の力量が求められます。子どもたちの実態を捉えた授業構想力,児童の反応や理解状況に応じる柔軟な授業実践力が,ICT活用の効果を高めます。ICT活用をうまく実践している学校では,ベテラン教師を中心に,授業を語り合いながら,全員で授業力を向上させてゆく雰囲気がみられるのはうなずけます。 さて,山下小学校ですが,比較的若くて,しかも力量に優れた先生方が集まっておられるように感じています。2年間取り組まれる「思考の練磨」において,授業づくりや学習活動の工夫を通して,先生方が何を発見されてゆくのか楽しみです。校内研修の在り方や進め方に変化がみられつつあるのは,教育の専門家集団としての熱意と上林房校長のリーダーシップによるものだと察しています。先生方のICT活用を支援するコンサルテーショングループの設置もユニークだと思います。 次に,2年間に及ぶ研究指定であることに留意して,研究の方向性を考えてみたいと思います。“教授”“学習”に関わる多くの研究者や先生方により,永く探求されてきたテーマの一つが「思考」でしょう。「思考」については,様々な観点から語り得るため,視座を定めることなく取り組むと,研究の一貫性確保や評価が難しくなります。現代社会でたくましく生きてゆく力に機能するような思考なのか?,教科の内容理解を深めたり発展させたりする思考なのか?,両者を相乗させる思考なのか?・・・明確に定めることも,教師の力量と言えるでしょう。その後,山下小学校のレポートにあるような可視化を目指すなら,可視化する内容やその利用法が定まり,結果を全教員で議論できることになります。「思考」・「思考の練磨」;とっても魅力的なキーワードが,“山下の教育”活動に,しっかり結びつき,保護者からも共感を得る研究となることを願います。 歴史ある“山下の教育”が,さらに深まる2年間にご一緒できる機会に感謝します。 |