実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

酒田市立飛鳥中学校の活動報告/平成23年度4月〜7月

セールスポイント

  • 新入生には小学校と学習評価のやり方が大きく異なるので「学習評価システム」についての理解を深め、意欲をもって学習に取り組めるように、丁寧にわかりやすく説明した。2、3年生については、今年度の変更点などポイントとなることを強調し、授業に臨む心構えや家庭学習のやり方についても説明した。

  • 全職員で全校生を分担し、学習評価シートを開き、一人一人の学習状況を確認しながら全教科について、授業への取り組み方や家庭学習の内容、今後の学習目標などについてじっくりと相談するガイダンスの時間を設定した。

  • 2年生の音楽と3年生の社会で、授業研究会を行い、本時の目標を達成するために、授業展開の工夫と活動場面の設定に重点をおいて研修を行った。

  • 後藤先生やパナソニック教育財団の方々を交えて、今までのまとめと今後の方向性を確認する学校研究についての研修会を行った。

実践経過

4/11
  • 評価集会(生徒への説明会)、BUノート強調期間
 
4/22
  • 後藤先生やパナソニック教育財団の方々への実施計画の説明会
4/29
  • 保護者説明会
5/24,
27
  • ガイダンスの実施
6/23
  • 後藤先生やパナソニック教育財団の方々との情報交換会
6/28
  • 第一回 FT
7/5
  • 授業研究会
7/12
〜15
  • 学習評価シート閲覧期間
7/19
,20
  • 三者面談、親子アンケート
7/25
〜29
  • 夏季休業中のFT
7/29
  • 校内研修会(後藤先生、パナソニック教育財団)
 

※PTについては、各自の計画に従い実践しています。

 

成果と課題

  • 学期始めに、学習評価システムについて丁寧にわかりやすく説明し、5月に全校生を対象としてガイダンスを実施したことにより、学習評価システムにいての理解が深まり全校生に定着し、生徒の学習に対する意欲も高まってきている。

  • 校内授業研究会など機会に、教師も生徒よさを見取ろうとする授業改善への意識が見られ、授業にもさまざまな工夫が行われるようになってきている。

  • 学期末の校内研修会では、「学びの質の高い姿」を全職員で共有化するために、各先生がどのような基準で活動評価を行っているか今後も情報交換を行っていく必要がある。また、各教科で「学びの質の高い姿」を生徒に明示し、生徒が自己評価できるように改善していくことが課題であることを確認した。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

評価システムをありがたいと考えている生徒が多い。

 
  • 技能教科のFTも開設してほしい、学び直しをしてほしいと個人的に言いにきてくれる生徒がでてきた。

  • 逆に再テストはしませんと言われて、がっかりしたという生徒もいた。

  • BUノートもなくてはならないと考えている生徒も多くなった。計画を立て、提出するのが当たり前。自分なりに工夫して使いこなしている(色などの工夫やイラストなど)生徒も多い。

  • BUノートの先生のコメントやシールを貼ってくれるのを楽しみにしている生徒も多い。

  • 評価シートの自由閲覧でも特に上級生は興味をもって見ている。

  • 本校の評価システムを独特なものととらえながらも、今はこれが当たり前ととらえているようだ。

  • 教師の評価が追いつかず、「もう少し待ってね。」ということも。

  • ガイダンスで全職員で生徒一人一人にあたることで、学習面以外の友達関係なども見えて教師同士の情報交換できた。

  • PTも呼ばなくても自分から来る生徒が多くなった。

解説と講評

コメント:新潟大学 准教授 後藤康志先生

 飛鳥中学校が目指しているのは、教師から指示されてではなく、生徒一人一人が学習状況を把握し、 不足している点や改善すべき点を自ら見出し、「自分自身が高まるために、私自身が改善したいこと」と捉えるような生徒の育成であると考える。生徒一人一人に寄り添い、「あなたは今、このような力を付けていますよ」というメッセージを送りつつ、学び直しの機会をさりげなくしかけていくという、一見遠回りにも見える取り組みは着実に実を結びつつある。

 飛鳥中では定期評価(期末の定期試験による評価)ではなく、単元評価(単元毎の評価)を取り入れている。これは、単に単元毎に生徒の学習到達度を評価することだけを目指しているのではないと思われる。このことは、生徒が単元の見通しを持てるように学習マップを作成させ、単元終了後に自己評価や学習の振り返りを求めていることからも分かる。教師は目標達成までの道のりを示し、今どこに到達しているのかの情報を提供するが、それは「今、あなたがいる位置はここですよ」というメッセージである。飛鳥中学校では、その後の努力次第で到達度は当然、変わるものと捉えており、実際にその後の努力によって評価も変動するし、評価を日常的に確認することもできるという。単元評価について、次のような生徒の言葉がある。

「単元毎に一つ一つの勉強を重点的にしっかり出来るし、どこがわからないかなど細かく理解できる」「学習マップは、学習の流れがわかるし、途中で見れたり単元が終わると評価がついて戻ってきたりと、自分の学習状況が細かくわかり、頑張ろうと思うことができます」多忙な学校現場で継続するには多大な労力がかかると思うが、成果が結実しつつある証拠であろう。

 さらに生徒を支援するしかけは多様である。学習計画の力を付けるため家庭学習の計画を立てる活動(ブラッシュアップ・タイム)、達成が不十分な内容を学び直す活動(フェニックス・タイム)、一人で計画が立てられなかったり学習が進まなかったりする生徒を全教員で支援する制度(プライベート・ティーチャー)といった活動が、しっとりとした雰囲気の中で着実に、淡々と進められていく。

 こうした積み重ねの上、飛鳥中学校では「授業における学びの質が高い姿」を評価し、より生徒の学習意欲を引き出そうとしている。「授業における学びの質が高い姿」とは何か、具体的に数学科で、英語科で、保健体育科ではどのような状態であれば「学びの質が高い」と考えるのか。いよいよ授業を通して検討が始まる。教科の壁を越えて、求める生徒の姿を語る飛鳥中学校の先生方に、多くを学ぶことができると期待している。

 
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