解説と講評 |
コメント:新潟大学 准教授 後藤康志先生 |
飛鳥中学校が目指しているのは、教師から指示されてではなく、生徒一人一人が学習状況を把握し、 不足している点や改善すべき点を自ら見出し、「自分自身が高まるために、私自身が改善したいこと」と捉えるような生徒の育成であると考える。生徒一人一人に寄り添い、「あなたは今、このような力を付けていますよ」というメッセージを送りつつ、学び直しの機会をさりげなくしかけていくという、一見遠回りにも見える取り組みは着実に実を結びつつある。 飛鳥中では定期評価(期末の定期試験による評価)ではなく、単元評価(単元毎の評価)を取り入れている。これは、単に単元毎に生徒の学習到達度を評価することだけを目指しているのではないと思われる。このことは、生徒が単元の見通しを持てるように学習マップを作成させ、単元終了後に自己評価や学習の振り返りを求めていることからも分かる。教師は目標達成までの道のりを示し、今どこに到達しているのかの情報を提供するが、それは「今、あなたがいる位置はここですよ」というメッセージである。飛鳥中学校では、その後の努力次第で到達度は当然、変わるものと捉えており、実際にその後の努力によって評価も変動するし、評価を日常的に確認することもできるという。単元評価について、次のような生徒の言葉がある。 「単元毎に一つ一つの勉強を重点的にしっかり出来るし、どこがわからないかなど細かく理解できる」「学習マップは、学習の流れがわかるし、途中で見れたり単元が終わると評価がついて戻ってきたりと、自分の学習状況が細かくわかり、頑張ろうと思うことができます」多忙な学校現場で継続するには多大な労力がかかると思うが、成果が結実しつつある証拠であろう。 さらに生徒を支援するしかけは多様である。学習計画の力を付けるため家庭学習の計画を立てる活動(ブラッシュアップ・タイム)、達成が不十分な内容を学び直す活動(フェニックス・タイム)、一人で計画が立てられなかったり学習が進まなかったりする生徒を全教員で支援する制度(プライベート・ティーチャー)といった活動が、しっとりとした雰囲気の中で着実に、淡々と進められていく。 こうした積み重ねの上、飛鳥中学校では「授業における学びの質が高い姿」を評価し、より生徒の学習意欲を引き出そうとしている。「授業における学びの質が高い姿」とは何か、具体的に数学科で、英語科で、保健体育科ではどのような状態であれば「学びの質が高い」と考えるのか。いよいよ授業を通して検討が始まる。教科の壁を越えて、求める生徒の姿を語る飛鳥中学校の先生方に、多くを学ぶことができると期待している。 |