解説と講評 |
コメント:新潟大学 准教授 後藤康志先生 |
いよいよ飛鳥中学校での授業研究が始まった。既に行われているきめ細やかな生徒に対する指導に加えて授業研究を行うわけで,指導案の作成や授業の準備など大変な労力がかかっていると思われる。後期だけで全ての教員が2回ずつ授業研究を行うと聞いているが,多忙な中学校で組織的・継続的に取り組まれようとしている姿勢に敬意を表す。今回は,次のような点に学ばせて頂いた。 1.「学びの質が高い姿」とは,どのような状態をいうのか? 授業研究の指導案を全て見せて頂き,求める姿が集約されていると思われる部分を抽出してみた。知識の習得や技能の獲得,態度の変容など,それぞれに,その授業で求める姿が記述されていたが,これを手がかりとして何が・どれだけ達成されれば「学びの質が高い姿」と捉えられるのだろうか。「的確なアドバイス」「分かりやすく説明」とは,数学では,理科では,英語では,体育ではどのような状態をいうのか。この議論はこれからであろう。 2.自分でアセスメントできることがひとつの「学びの質が高い姿」ではないか? 「演技の評価視点を理解しており、的確なアドバイスができる」という状態を「学びの質が高い姿」と捉えた指導案があった。これは学習者が教員と評価の規準や基準を共有できるまで高まっていないとできない。教科の学習を通して,自分の到達度を自分でアセスメントできる力を鍛えているのである。ここに飛鳥中の学習支援システムの思想と通じるものを感じた。学習支援システムでは,生徒に学習の到達度を伝え,次に何をするべきか生徒自身が方向を見出すことを支援することを目指しているからである。飛鳥中が目指す「学びの質が高い姿」とは何か,考えるアイディアをいただいた。 3.誰がどうやって「学びの質が高い姿」を「捉え・伝え・広げる」のか? 検討会では,教師が「学びの質が高い姿」を「捉え」,その生徒や他の生徒に「伝え・広げる」という議論がなされていた。教師が即時的に見とり,その場で直接,認めることは第一だが,それだけで捉えきれるものではなかろう。書いたり,映像化したりするなど,多様な捉え方を併用して見えてくるものがあろう。また,教師だけでなく生徒が他の生徒の「学びの質が高い姿」を「捉え,伝え,広げる」こともあり得るだろう。 飛鳥中学校の研究では,ICTは学習評価システムとして日々の授業を支えるツールとして機能している。見た目の派手さはないかも知れないが,しっとりとした雰囲気の中で生徒が着実に力を付けていることを感じた。 |