実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

酒田市立飛鳥中学校の活動報告/平成23年度8月〜12月
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セールスポイント

  • 全職員で、全生徒を対象にした「ガイダンス」を9月と11月に実施した。一人一人の学習評価シートを開き、1学期に設定した目標を振り返り、家庭学習や授業への取り組み状況を確かめながら、改善策などを話し合い、今後の目標づくりを行った。

  • “一人一人学びのよさを捉え、伝え・広げる”をテーマに、一人2回の自主授業研究会を実施した。略案を準備し、空き時間の先生方が参観し、事後研も行い、実践を積み上げることができた。

  • BUノートは学期毎に改善が加えられ、定期的に“BUタイム強調期間”を設定し、生徒の意識を高めながら内容の充実を図った。

  • 授業研究会には、後藤先生やパナソニック教育財団の方々にも参加していただき、研究の方向性や内容についても具体的なアドバイスをいただきながら、学校研究を充実させることができた。

  • 学習マップに、思考・判断・表現について、その単元でめざす生徒像を明記し、生徒が目標となる姿を理解してから授業に臨めるようにした。

実践経過

9/5
  • 2学期PT登録日
9/5〜6
  • 自主授業研究会
9/20,22
  • 第二回 ガイダンス
9/27
  • 第二回 FT
10/26〜31
  • 自主授業研究会
10/27
  • 校内授業研究会
    (後藤先生、パナソニック教育財団)
11/8〜11
  • 第三回 ガイダンス
11/16〜24
  • 自主授業研究会
11/29
  • 第三回 FT
12/5
  • 公開授業研究会
    (酒田市教育委員会指導主事、梅木校長先生、後藤先生、
    パナソニック教育財団)
12/14〜16
  • 学習評価シート閲覧期間
12/19〜21
  • 3年生三者面談
12/21
  • 1・2年生保護者会
12/26,27
  • 冬休みFT
 

成果と課題

  • 授業研究会は、「生徒の学びのよさを捉え、伝え、広げる」ことをテーマに取り組んだ。生徒の“学びのよさ”を捉えるためには、まず“学びのよさ”を引き出すために活動場面の設定が必要であるという認識のもとに進められた。その結果、活動場面の設定については、生徒一人一人にしっかりと考えさせることにポイントがおかれ、学習課題の解決に迫る考え方を教師が見取り、その“学びのよさ”を本人に伝え、学習集団に広げる取り組みが各教科ごとに行われた。
    今後は、学習目標の分析を詳しく行い、生徒につけたい力を明確にし、“学びのよさ”を引き出すために有効な活動場面を設定すること。生徒に、自分の考えをしっかりと表出させること。これらが課題である。

  • BUノートを活用して、BUタイムを充実させることにより、家庭での生活が計画的になり、メディア機器利用(テレビ、ゲーム機器、DVDなど)を長時間利用する生徒が減少し生活リズムも改善されてきている。(学校保健委員会より)

  • ガイダンスは全部で3回行われた。回数を重ねるごとに、ガイダンスの目的が生徒たちにも浸透し、家庭学習の工夫や授業に取り組む姿勢の改善に結びついている。学年の枠を超えて全職員で取り組むことにより、生徒は教科担任とも相談ができ、教師は多くの生徒を理解することができ、成果を上げている。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

<生徒の声>

  • 単元毎の学習なので、範囲もせまいので勉強がしやすい。

  • 勉強が苦手なので、システムを通していろいろな先生方から面倒を見てもらってうれしい。

  • 小テストや学び直しがない教科もあるのでやって欲しい。

  • 提出物などを提出できたかの欄があって意識できる。しかし、提出しても評価が納得できないことがある。

<教師の声>

  • FTをもっとして欲しいという要望があるが、なかなか時間が取れなくて残念だ。

  • BUノートは、生徒や先生方の意見を取り入れて少しずつ進化している。
 

解説と講評

コメント:新潟大学 准教授 後藤康志先生

いよいよ飛鳥中学校での授業研究が始まった。既に行われているきめ細やかな生徒に対する指導に加えて授業研究を行うわけで,指導案の作成や授業の準備など大変な労力がかかっていると思われる。後期だけで全ての教員が2回ずつ授業研究を行うと聞いているが,多忙な中学校で組織的・継続的に取り組まれようとしている姿勢に敬意を表す。今回は,次のような点に学ばせて頂いた。

1.「学びの質が高い姿」とは,どのような状態をいうのか?

授業研究の指導案を全て見せて頂き,求める姿が集約されていると思われる部分を抽出してみた。知識の習得や技能の獲得,態度の変容など,それぞれに,その授業で求める姿が記述されていたが,これを手がかりとして何が・どれだけ達成されれば「学びの質が高い姿」と捉えられるのだろうか。「的確なアドバイス」「分かりやすく説明」とは,数学では,理科では,英語では,体育ではどのような状態をいうのか。この議論はこれからであろう。

2.自分でアセスメントできることがひとつの「学びの質が高い姿」ではないか?

「演技の評価視点を理解しており、的確なアドバイスができる」という状態を「学びの質が高い姿」と捉えた指導案があった。これは学習者が教員と評価の規準や基準を共有できるまで高まっていないとできない。教科の学習を通して,自分の到達度を自分でアセスメントできる力を鍛えているのである。ここに飛鳥中の学習支援システムの思想と通じるものを感じた。学習支援システムでは,生徒に学習の到達度を伝え,次に何をするべきか生徒自身が方向を見出すことを支援することを目指しているからである。飛鳥中が目指す「学びの質が高い姿」とは何か,考えるアイディアをいただいた。

3.誰がどうやって「学びの質が高い姿」を「捉え・伝え・広げる」のか?

検討会では,教師が「学びの質が高い姿」を「捉え」,その生徒や他の生徒に「伝え・広げる」という議論がなされていた。教師が即時的に見とり,その場で直接,認めることは第一だが,それだけで捉えきれるものではなかろう。書いたり,映像化したりするなど,多様な捉え方を併用して見えてくるものがあろう。また,教師だけでなく生徒が他の生徒の「学びの質が高い姿」を「捉え,伝え,広げる」こともあり得るだろう。

飛鳥中学校の研究では,ICTは学習評価システムとして日々の授業を支えるツールとして機能している。見た目の派手さはないかも知れないが,しっとりとした雰囲気の中で生徒が着実に力を付けていることを感じた。

 
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