実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

酒田市立飛鳥中学校の活動報告/平成24年度4月〜7月
前へ 次へ

セールスポイント

研究主題生徒の学習意欲を引き出す「学習評価システム」の構築と授業改善
〜自らの学習状況を捉え、深化・改善のために努力しようとする生徒の育成〜

本校の研究は、"教科担任制の壁"を超えて評価を互いに開きあい、
@学習評価システムの構築
(完全単元評価制度、学習マップを活用した学習コミュニケーションの促進)
A学習支援システム(全職員による個別の学習支援やガイダンス、
BUノートを活用した自律的学習習慣形成)、
B授業改善(学びのよさを見取る活動評価)
を柱として、教科固有の学力と、教科を超えた汎用的な力としての
"自立的に学ぶ力"を 全校体制で、育てていこうとする研究です。
(下図参照)自律的

本校の研究は、サブテーマに描く生徒像をめざした
「仮説生成的な研究(実践を通して課題を乗り越えながら、さらに新たな
仮説を生み出しながらすすめる研究)」です。
意欲的に学びに取り組む姿勢を育てるために、パナソニック教育財団より、
一般研究校の指定をいただいた平成21年度からの2年間は、評価システムの
開発を中心に研究を進めてきました。
そして現在は、
@開発してきた「開かれた評価システム」の有効活用、
A学習評価システムの有機的連携、
B評価システムと支援システムを活かした授業改善
を課題として、8月6日(月)のポスターセッション、
11月13日(火)の公開研究発表会に向けて、実践を積み上げています。

研究のフレームワーク

実践経過

4/11(水)
  • 平成24年度飛鳥中学校学習評価システム 全校生徒への説明
4/28(土)
  • 平成24年度飛鳥中学校学習評価システム PTA 総会で説明
4/16(月)
  • 校内研修会(Adviser 後藤康志先生、事務局桐井秀樹氏)
5/22(月)
  • 公開研究会 一次案内発送
7/ 6(金)
  • 授業研究会4教科(理科、家庭、技術、音楽)
7/11(水)
  • 校内研修会(Adviser 後藤康志先生、事務局桐井秀樹氏)
  ・これまでの取り組みの成果と課題の検討、共通理解
・研究の検証方法について(アンケート調査の方法、項目等)検討
・今後の予定について
7/26 (木)
  • 校内研修会(Adviser 後藤康志先生、事務局桐井秀樹氏)
  ・これからの研究について
・学ぶ姿勢についてに基準のすりあわせ
・公開研究会にむけての準備について
・学習指導案の形式について(共通理解)
・研究紀要の内容と形式のついて
 

成果と課題

(1)学習評価システムオリエンテーション資料(生徒・保護者向け)

(2)学習支援システムの機能の発揮にむけて
 @BU(ブラッシュアップタイム、ノート)…自律的な学習姿勢、習慣づくり
 ○よく活用している生徒のBUノートの展示会を開催
  ・多くの生徒が立ち止まり、参考にしようとする姿がありました。
 ▲自己決定した家庭学習計画の実施状況の見届けと個に応じた支援、指導
 Aガイダンス…評価システムを活用しながら、一人一人の学習適応をはかる支援
 ○計画に基づき実施。カードを活用しての情報の共有
 ▲ガイダンスの機能の日常的な発揮。一人一人の状況に応じた支援の充実。
 BPT(プライベートティーチャー)…全職員で行うマンツーマンの指導体制
 ○生徒の希望をふまえた「対象生徒の拡大」
  ・学習支援が必要な生徒だけでなく、もっと学力を伸ばしたい生徒も対象に
 ○自主的な相談姿勢の芽生え、積極性
 ▲時間の確保、指導・支援の継続
 CFT(フェニックスタイム)…定期テスト前後の"全校質問会"と"学び直し"
 ○5教科を中心とした全校体制での質問会
 ○学び直しによる意欲の向上(評定がランクアップした生徒は数名)
 D飛鳥タイム(水曜短学活の"学びあい学習")
 ○互いに学びあい、教えあう姿勢が育ち、授業での話し合い活動に成果が反映

(3)評価システムを活用した「授業改善」
 ○単元のめあての明確化とマップの改善(教科間の実践交流)
 ○学習マップの工夫(自己評価しやすいものに、各教科ごとに改善)
 ▲"学ぶ姿勢(自律的に学ぶ力)"の基準についての共通理解
  *教科の壁を越えて育みたい"汎用的な力"として、"自律的に学ぶ力"
   を内容とし「学ぶ姿勢」を通知表に位置づけて、全校体制でその育成に
   挑戦しています。

(4)今後の課題
 ◎評価システムを活かした授業の改善
 ◎ガイダンスの機能の全校体制での発揮、継続
  自らの学習状況をとらえ、自ら改善していこうとする意欲と姿勢を
  生徒一人一人に、粘り強く育てていく実践の交流、指導の継続
 ◎研究の成果の検証、結果を踏まえた指導の改善と充実、研究のまとめ

 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

本校の午後からの、しかも授業が終わってからの短い研修の時間に合わせて、大変
お忙しい中、新潟大学の後藤康志先生、事務局の桐井秀樹様には、新潟、東京と遠
路にもかかわらず、わざわざお越しいただきまして大変ありがたく存じております。
しかも、いつも温かく本校の歩みを見守っていただき、貴重なご意見、ご助言をい
ただけますことは、この上なくありがたく嬉しいことです。

研究主任を中心に、全教職員が、精一杯子ども達の為にという気持ちをもって、研
究に取り組んでくれています。単元評価の実施だけでも忙しい現場ですが、何事に
も誠心誠意取り組んでくれる職員を頼もしく嬉しく思います。そんな姿勢が子ども
達のに子ども達のがんばりにつながり、とてもうれしく誇りに思います。

 

解説と講評

コメント:新潟大学 准教授 後藤康志先生

研究主題「生徒の学習意欲を引き出す『学習評価システム』の構築と授業改善」とは,学習者と教員が学習の目標を共有し,教員から目標に向けて管理されるのではなく,学習者自身が自分の学習をモニタリングし,足りないところ,十分なところは何かを把握しながら自律的に学ぶ,そのような支援システムと,授業を求めて いこうということである。2年次に入り,研究を@学習評価システム(ブラッシュアップノートや評価シート等),A学習支援システム(ブラッシュアップタイムやフェニックスタイム,ガイダンス等),そしてB授業 改善(ねらいの明確化と活動評価等)の要素として捉え,それぞれに主として推進する担当を置くとともに,スパイラルアップしていくように研究が進みつつある。4月から7月までの飛鳥の研究から学べることを,外部(指導主事訪問など)の意見や,アンケートなどから列記してみたい。

・研究が日常的に行われている
これは,指導主事訪問の研修のまとめの最初に記されていた一文であるが,これは大変なことだと思う。 単元評価だけとってもしんどいことなのである。学習評価,学習支援を行いつつ,一人複数回の研究授業を,淡々と,むしろ楽しげに行う先生方に敬意を表する。また,そういう「苦しいけど,意味あることを,楽しくやろうよ」という雰囲気が醸成されていないと苦しい。一つの秘訣は,目標を掲げながらも方法は各先生の持ち味や発想を活かしているところかも知れない。例えば学習マップの項目は,先生方によっていろいろ違うが,それぞれにお一人お一人の「提案」や「トライアル」があるのだ。一つ一つ伺うと,目を開かれる思いである。教師とは,創造的な職業なのだ,ということを再認識させていただいた。

・付けたい力が明確になっている。
1年次からもっとも難しい,と思っていたのはこの点である。飛鳥の研究では,どのような力を育てたいのか?
私は,教科固有の力と,教科を超えて通じる力があると考えている。教科固有の力はそれぞれにあっていいと思うが,教科を超えて通じる力とは,学習者自身が自分の学習をモニタリングし,自律的に学習する力である。
こうした力は,一回の授業でできるものではなく,学習評価システムと学習支援システムと相まって身につくような力であり,明示化したり,数値化したりすることは難しく,本質的に重要な能力なのである。秋に行われる研究会では,授業研究も行われるが,もちろんこれで決定版というような最終形をお見せすることは考えていないだろう。今,飛鳥中として考える付けたい力を提案し,ご批判を頂きつつ,次のステップを目指す授業で更に学べるものと期待している。

・子どもはもっと伸びたいと願っている
これは7月にとった全員からのアンケートの自由記述からである。「子どもはもっと伸びたい」のである。そのために,先生方の取り組みに感謝しつつも,「学習マップはこう改善してほしい」「評価シートで評価が分かるだけでなく,どうすればステップアップできるのか,教えてほしい」「発展的な内容ももっとどんどん教えてほしい」「プライベートティーチャーをもっとお願いしやすい方法を工夫してほしい」と思っている。とにかく,建設的な意見ばかりが寄せられた,と理解できる。これは,先生方が研究に真剣に取り組み,子どももそれに応えている証左であろう。優先順位をつけつつ,取り組めるとよいと思う。

 
前へ 次へ
酒田市立飛鳥中学校の基本情報へ