実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

京都府立乙訓高等学校の活動報告/平成23年度4月〜7月
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セールスポイント

  1. 小中学校とも連携した公開授業の実施
  2. 本校教員だけでなく、近隣の小中学校にも呼びかけ、小中高連携を目的とした授業公開を実施小学校や中学校に出向き、ICT活用授業を実践

  3. 機器の開発
  4. ビデオカメラを使用した「簡易実物投影機」の開発

  5. 近畿地区の「特別研究指定校」との交流
  6. 同一地区にある「特別研究指定校」である、西宮市立北六甲台小学校および守口市立橋波小学校との交流を図る。

  7. 動作解析ソフト「Dartfish Software」についての研修
  8. すべての教科で活用可能な「Dartfish Software」の具体的活用法を学び、有効な活用法について研鑽を積む。

実践経過

4月 25日(月) 研究チーム発足  
  16日(月) 財団および本校を担当していただく黒上先生に来校いただき研究についてのアドバイスをいただく。(数学Tの授業参観)
5月 27日(金) 研究チーム打合会A
6月 1日(水) 黒上先生による第1回訪問アドバイス(数学Aの授業参観)
   
  13日(月) 西宮市立北六甲台小学校を訪問し、授業参観および合評会に参加
  21日(火) 研究チーム打合会B
  23日(木) 公開授業および合評会の実施
日本史の公開授業を実施。近隣の小学校および教育委員会からの参加者もあった。
   
 
7月 5日(火) 長岡京市立長岡第三中学校において「現代社会」のICT活用授業を実施
  11日(月) 大阪府立東百舌鳥高校(第37回実践研究指定校)を訪問し、授業参観

 

15日(金) 校内研修
校内のICT機器および簡易実物投影機を使用した授業について
動作解析ソフト「Dartfish Software」の効果的な活用について
 

成果と課題

<成果>

  1. 「デジタルとアナログの融合」(消えていくICTの情報と消えない黒板等の情報の融合)を合い言葉に、授業実践に関して工夫の萌芽が見られた。
  2. 6月23日(木)に行った公開授業に本校教員だけで25名の参観者があり、ICT活用授業への理解が進んだ。
  3. 北六甲台小学校、橋波小学校の公開授業に参加し、小学校におけるICT活用法を学ぶとともに豊富な実践に圧倒され、刺激を受けた。
  4. 7月に行った教員研修にはほとんど全員の教員が参加し、具体的なICT活用法や動作解析ソフトの有効活用について理解が深まり、2学期以降の授業実践に期待が持てる状況を作ることができた。

<課題>

  1. 小中高連携もこの実践研究の大きな柱の一つであるが、各校で温度差があり、当初こちらが考えていたほどの広がりが見られていない。
  2. 取組が進むにつれICT機器の使用頻度が上がり、機器の増設が課題となっている。
  3. 「デジタルとアナログの融合」について効果的な実践例を作り出すまでには至らなかった。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

  1. 参加校は少なかったが、公開授業に小学校関係者にも参加いただき、小中高連携の第一歩が踏み出せたこと
  2. 「デジタルとアナログの融合」を目指し、教員の間で工夫する意識が向上したこと
  3. 「簡易実物投影機」の製作に取組んでいるが、考えていた以上に工夫が必要で「これで行ける」という機器の製作までには至らなかったこと
  4. 近畿地区の「特別研究指定校」を訪問し、小学校の実践を学ぶことができたこと
  5. アドバイザー訪問にあわせて授業公開を行ったが、黒上先生の厳しい?アドバイスに発奮し、11月の公開授業でリベンジを誓った若手教員ががんばっていること

解説と講評

コメント:関西大学 教授 黒上晴夫 先生

高等学校における全組織的取組みへの期待

乙訓高校で目を惹くのは,まず高等学校での実践研究である点である。高等学校で全組織的に授業研究を行うことは,かなり難しい状況の中,公開授業,研究発表会を含めて,年間10回の実践研究の機会が予定されている。それを支える設備として,全普通教室にプロジェクタとスクリーンおよびLANが設置されている。
その主眼として,全教員がICTを活用することがベースにあり(すでに全授業の70%でPPT等が用いられるようになっている),また,独自に開発した簡易実物投影機の導入,と映像解析ソフトDartfishの導入によって,新しい実践へのチャレンジも想定されている。これらにより,
・全教員が取り組む
・共有できる教材や生徒の自学自習を援助できる教材やシステムの開発
・生徒自身がICTを活用しプレゼンテーションを行う
ことを今後目指していくという。
高等学校におけるICTを活用した実践研究の事例は多くない中で,このような取組には期待をもてる。
一方で,訪問時の授業から感じることは,高等学校の授業においては,いわゆる教え込み方のICT活用が中心になりそうだということである。高等学校でこなさなければならない学習内容の量と授業時数との関係からすれば,ICTで示した情報をもとに討論をしたり,考えを深めたりするような時間をとりにくいことはうなずけるが,やはり活用型学力を育てる方向でのICT活用を目指していくことも検討したい。それは,ただICTの活用方法を工夫することだけでは実現できず,授業やカリキュラムのあり方そのものを変えることを意味しているので,そういう視点を少しでも研究内容に盛り込んで欲しい。そういう意味では,報告フォームにある「発展的学力養成に結びつく活用法の構築」には期待したい。

ICT活用頻度上昇の要因

すべての教員を対象とした研修による授業でのICT活用頻度の上昇については,他校でなかなか成果が出ないだけに環境との関わりでとらえたい。やはり,全普通教室でいつでもプロジェクタが利用できる状況を作っていることが効を奏していると考えられる。また,一方で高等学校の授業形態もそれを助長しているかもしれない。高等学校の授業では,教師が予定したとおりに資料を示して,準備された解説を順次行っていくことが中心になりがちである。問題を解かせる場合も,順次問題を提示し,生徒に解かせてから解説をするような形式が定着している。したがって,提示する資料を準備しやすく,また一度準備したら複数の学級で利用することになる。このことは,ICT利用という点からはプラスに働くが,授業の形態としては,特に小・中学校とは大きくちがうところだと言える。しかし,中学校においては一部そのような授業が必要な場面もあり,そこではこの成果は参考になる可能性がある。

 
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