実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

京都府立乙訓高等学校の活動報告/平成23年度4月〜7月
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セールスポイント

  1. 毎月1回の公開授業の実施
  2. 本校教員だけでなく、近隣の小中学校や全府立高校にも呼びかけ、授業公開を実施すべての教科で取り組むことにより、ICT活用授業の広がりをつくる

  3. 機器の開発
  4. ビデオカメラを使用した「簡易実物投影機」の開発

  5. 「ICT活用ニュース」などにより、校内での実践を全体に共有する
    取組を行う

  6. 生徒のICTを活用したプレゼンテーションに向けての取組を開始する

実践経過

9月 13日(火) 研究チーム打合せC
2学期の取組を協議
 
 
  20日(火) 公開授業および事後研修会の実施
「スポーツ概論U」(2年生)
の授業を公開
財団関係者および、小・中・高・教育委員会関係者20名の
参加者があった。

 
10月 26日(水) 公開授業および事後研修会の実施
「古典」(3年生)の授業を公開
財団関係者および、小・高10名の参加者があった。

 
11月 14日(月)〜
18日(金)
公開授業週間 テーマ「ICT活用の実際」
国語・地歴・数学・英語・家庭・体育 8講座で授業公開
 
  16日(水) 公開授業および事後研修会の実施
「古典」(3年生)
「日本史」(3年生)
「数学T」(1年生)
の授業を公開
財団関係者および、小・高・教育委員会関係者15名の参加者があった。
 
  30日(水) 研究チーム打合会D
2学期のまとめと3学期の取組を協議
 
12月 1日(木) 
 
「ICT活用NEWS Vol.1」発行
 
 
  12日(月) 簡易実物投影機完成
 
  14日(水) 公開授業および事後研修会の実施
「化学T」(2年生)の授業を公開財団関係者および、高・教育委員会関係者10名の参加者があった。
 

成果と課題

<成果>

  1. 毎月1回の公開授業を定期的に行うことができ、毎回10名以上の参加者を得ることができた。本校教員の参観者も毎回15名程度あり、1学期以上にICT活用授業への理解を広げることができた。
  2. 黒板に直接投影しての授業やインターネットを経由した教材による授業など、様々な工夫が見られた。
  3. 簡易実物投影機が完成し、ICT活用授業の幅が広がった。
  4. 「デジタルとアナログの融合」「インタラクティブな授業」「ICT活用で生まれた時間の活かし方」などの課題を解決しようとする実践が数多く見られた。
  5. 財団からの助成金を活用して機器の購入を行い、ICT環境の充実を図ることができた。 
  6. スポーツ健康科学科で、動作解析ソフト「Dartfish Software」を使用した実践を開始することができた。
  7. 府下の高校に公開授業の案内をする中で、参加校も増加し、財団の研究助成に応募しようという学校も出てきた。

<課題>

  1. 小学校とは一定の連携が図れるようになったが、中学校とは全くといっていいほど連携が進まなかった。
  2. 「デジタルとアナログの融合」「インタラクティブな授業」「ICT活用で生まれた時間の活かし方」などの課題解決に向けより一層の研究が必要である。
  3. 「ICT活用NEWS」の発行が遅れ、実践の共有化が十分になされていない。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

  1. なかなか実践例がなかった「国語」で実践が始まったが、授業者がパソコンだけではなく、実物投影機も使用した多彩な実践を行ってくれたこと。
  2. 11月の公開授業で、若手教員がリベンジを果たし、黒上先生からおほめをいただいたこと。
  3. 理科で密かに10年前からICTを活用して授業を行っていた授業者の授業を公開することができたこと。
  4. 簡易実物投影機の使用について、財団から貴重なアドバイスをいただき、改善方向が示されたこと。
  5. 意外な教員がICT活用授業を行うなど、学校内に前向きな反応が見られたこと。

解説と講評

コメント:関西大学 教授 黒上晴夫 先生

毎月1回の授業研究会については順調に開催されている。可能なかぎり参加しているが,古典,スポーツ概論,日本史,数学,英語,化学などでまんべんなくICT活用に挑んでいる姿は,とても好感が持てる。また,参加する度に残してくるコメントを真摯に検討して,なんとか改善の方向性を探る姿勢も高く評価したい。このような授業研に参加していると,こちらサイドでも新しい視点やアイデアをもつことになるので大変ありがたい。

ICT活用の方法については,投影した映像に書き込みをする意味での,「デジタルとアナログの融合」について,知見が貯まってきている。このような工夫の適用場面を,他の領域や教科で見つけ,共有していくことが望まれる。

これまでに指摘した検討事項としては,次のことがある

  1. ICTを使う学習と使わない学習とをバランスよく配置すること
  2. ICTを使うことによって生徒が考える場面をうまくつくること
  3. 授業研における授業だけでなくその他の授業との関連で学習活動を
    考えること
これらについて,それぞれの教科で実現する場面をどこにもってきて,どのように実現するかを具体的に検討していくことで,より有効なICT活用の方法を追究できるだけでなく,授業改善全体につながると考えられる。
2の思考場面については,この学校で進められているワークシートの使い方にもう一工夫必要である。つまり,投影する情報を書き込むだけの学習を超えて,授業全体を再構成しながらまとめることを求めるようなワークシートの在り方である。これによって,生徒が自発的に授業に参加し,自分の理解として学習内容をまとめることにつながるのではないかと思われる。その意味で,3で示した,ICT活用授業以外の授業場面とどのような連続性がもたれているのかが問われる。そこまで含めて,学習そのもののデザインをすることが必要となると思われる。

今後の課題としては,研究に熱心に関わる教員グループと,その他の教員との間の意思疎通を少し見える形にする方策を検討することである。授業研にかかる授業は一種のモデルであって,それだけで終わると研究の広がりはない。そこで示した授業を,他の教員も同じようにやってみて振り返るプロセスを具体的に設定することも考えたい。

【 乙訓高等学校の実践を自校に活かすために 】

  • 上の1〜3については,どの学校にもあてはまる課題だと思われる。

  • 乙訓高校で用いられている投影画像に書き込みを加えながら,生徒とのインタラクションをとっていく手法は,どの学校でも有効だと考えられる。

  • 他の学校には,このような使い方を参考にしながら,しかしそれは高等学校での授業であることを考慮し,より校種にあったインタラクティブなICT活用の方法について,検討して欲しい。
 
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