実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

京都府立乙訓高等学校の活動報告/平成24年度4月〜7月
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セールスポイント

(1)「拡げる」を合い言葉に実践者を確実に増加させ、実践事例の積み上げを行う。
(2)生徒のICT活用能力を向上させ、小学校での「出前授業」を行う。
(3)引き続き「ICT活用NEWS」などの発行を通じて、広報に努める。
(4)ICT活用授業と学力向上の相関についての実践事例に取り組む。
(5)毎月1回の公開授業に引き続き取組み、幅広い層からの参加者を得る。

実践経過

4月27日(金) 公開授業(政治経済・地理A)  
 
新規採用の若手教員も着任2週間にして、ICTを活用した公開授業に挑戦。 他の新規採用者も含め、ICT活用授業に取り組む教員の輪が確実に拡がっている。
5月18日(金) 公開授業(おとくにベーシック)
 
5月28日(月)

研究チーム打合せ会

   
6月21日(木) 公開授業(日本史・現代社会・スポーツ総合演習)
【京都府教育委員会教育委員来校(5名)】
 
6月22日(金) 公開授業(日本史・リーディング)
【ジョグジャカルタ州ICT研修教職員来校(17名)】
   
 
毎月の公開授業には、各校種の教職員、教育委員会の指導主事らの参加を得ている。事後研究会にも参加いただき、情報交流をはかっている。
6月にはインドネシアからの視察があり、効果的なICT活用について熱心に記録を取っていた。事後研究会にも参加いただき、意見交換を行った。
   
6月22日(金) 西宮市立北六甲台小学校研究発表会視察
 
6月28日(木) 公開授業(国語総合・世界史B・リーディング)
教育関係者来校(40名)
 
7月 7日(土) 学校説明会においてICT活用授業実施(生物・数学)
 
7月10日(火) ICT活用NEWS No.6発行
 
7月18日(水) 長岡京市立長岡第三中学校においてICT活用出前授業実施(地理A)
 
7月23日(月) 本校スポーツ健康科学科を中心とする陸上競技部員が、長岡京市立神足小学校においてICT活用出前授業を実施
   
   
校区内小学校の要請を受け、陸上競技部の生徒が「出前授業」を行った。
カリキュラム作成、指導用スライド作成、指導の全てを生徒のみで行った。
指導用スライド「君もあの子に勝てる」は、小学生に具体的なイメージが伝わるように、と遂行を重ね作成した。 ICT活用により、わかりやすい指導となり小学生に好評であった。
 

成果と課題

  1. 3名の新規採用者を含め、ICT活用授業に取り組む教員が昨年度より増加した。
  2. パソコンだけではなく、実物投影機・DVDプレーヤー・iPadなど様々な機器を使用しての授業が展開されるようになった。
  3. パワーポイントにおけるスライドや、ワークシートなどにも工夫がみられるようになった。
  4. 生徒のICT活用能力が高まり、自作のパワーポイント資料を使用しての「出前授業」を行うことができた。
  5. 各校種の教職員だけではなく、海外からの研修生や塾関係者にも本校の取組を見ていただき、多くの助言をいただくことができた。
  6. ICT活用授業の増加により、機器の不足が懸念されるようになった。
  7. ICT活用授業と学力向上の相関についての研究が大きな課題である。
  8. 「拡げる」という点では、昨年度から増加したとはいえ、ICT活用授業に取り組むことに消極的な教員も一定数存在しており、研修会や広報活動をとおして、その数を減少させていく必要がある。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

  1. 確実にICTを活用した授業に取り組む教員が増加し、特に新規採用者の若手教員が、着任2週間で公開授業にチャレンジしてくれたこと。
  2. 今期は、公開授業に本当に多くの参加者があり、準備は大変であったが、概ね好評価をいただいたこと。
  3. 生徒のICT活用も研究テーマとしてあげているが、陸上競技部員が「君もあの子に勝てる」という題材で、出前授業用の資料を作成し、実際の授業で、小学生にわかりやすく好評であったこと。
  4. 職員室で、機器の使い方や教材の作り方について、質問したり話し合ったりする教員の姿が多く見られるようになったこと。
 

解説と講評

コメント:園田学園女子大学 教授 堀田博史 先生

乙訓高校のICT活用の特徴は、学校全体でICT活用実践に取り組み、授業を公開、外部からの参観を受け入れている点です。高校でのICT活用は、教員個人や教科毎(グループ)での取り組みは見られるものの、学校全体での取り組みは珍しいことです。また、定期的に(月に1度のペース)授業を公開して、校内・校外問わずに参観者を受け入れています。授業後には研究協議の時間をできるだけ設け、振り返ることも忘れていません。

他にも、昨年に引き続き、近隣の中学校にICT活用出前授業を実施して、蓄積されたノウハウを提供しています。今年度は新たに、陸上競技部の生徒が校区内小学校の要請を受けて出前授業を行っています。乙訓高校が掲げる「拡げる」の合い言葉が実践を生み、教員・生徒とともに校内から校外に拡がりはじめていると言えます。

このような取り組みを「ICT活用NEWS」として定期的にレポート、情報発信することで、教員が実践の積み上げを可視化できています。様々な取り組みの継続と拡がりが乙訓高校のICT活用と言えます。

他の高校が、乙訓高校の取り組みを参考に実践されるならば、まずはじめはICT活用の取り組みを可視化できる情報発信をされると良いでしょう。紙媒体でもWebサイトでもOKです。校内の多くの教員に取り組みを拡げることをおすすめします。


報告フォームにもあるように、課題として「ICT活用授業と学力向上の相関」があげられています。学力向上は、中間・期末考査の点数で効果測定することもできるでしょう。しかしその前に、ICTが常設された教室環境で、生徒が今日の授業はよくわかったと実感できたかどうかを測定してみるのも良いでしょう。生徒は、授業で活用されるICTを珍しくも感じていません。ぜひ、授業のわかりやすさとICT活用の工夫を評価するところから、はじめてみてください。

 
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