実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第38回特別研究指定校(活動期間:平成24~25年)

川崎市立平小学校の活動報告/平成23年度4月~7月
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実践経過
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成果と課題
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○ICTの基本的な操作スキルの習得

  • 各教科におけるICT活用場面の洗い出しと実践
    ※自主的に授業公開する形式にて,全職員が実践を行う。
  • 学習時における規律(平スタンダード)の確認
  • ICT校内研修会(教材提示装置,ワイヤレスタブレット等)
  • 実態調査Ⅰ(4月)
  • 校内研究授業①~③(5・6・7月)〔低・中・高学年〕

●「不安」から「自信」へ

「情報教育の研究って何だろう?」「パソコンって苦手なんだけど…」 この研究をスタートするにあたって,本校の多くの職員がこのような疑問や不安をもっていたようでした。そこで研究推進委員長と研究主任が中心となり,「情報教育とは,コンピュータやICTを使って授業すること」ではないという基本から研究をスタートさせました。 校内研修会や日常的な授業実践を通して,この4ヶ月で最初に書いたような不安をもつ教員がいなくなり,それぞれが自信をもってICTを活用して授業する場面が多くなってきました。今では「これ(教材提示装置)が無いと授業できない。」という声まで聞かれるようになり,ICTが「機械」ではなく「道具」として無くてはならない存在になりました。

● 情報活用能力を教科の中から洗い出す

現行の学習指導要領では「各教科でICTを活用すること」「各教科で情報活用能力を育成すること」が明示されています。しかし,その具体的なカリキュラム等は各学校・各担任に委ねられているというのが現状です。そこで,本校では,各教科の中に埋もれている「情報活用能力を育成する単元」を洗い出し,それを体系化してカリキュラムを作成することとしました。7月までに4つの仮の柱を見いだすことができたので,夏休み中に各学年でまとめることとしました。

実践経過

4月

  • 全教室にICT設置完了
    この研究を始める前から,職員の中でニーズの高かった教材提示装置を全ての教室に設置することができました。これにより,50インチ大型テレビ・ノート型PC・教材提示装置・ワイヤレスペンタブレット・デジタル教科書(国語)・DVDプレイヤーが日常的に活用できる環境を整えることができました。

  • 校内ICT研修会の実施
    新年度が始まってすぐに,校内でのICT研修会を実施し,各教室での設置,接続,操作方法等を研修しました。この研修会により,どの教員も基本的なICT活用スキルを身につけることができ,ICTの日常的な授業活用が始まりました。
    授業での活用方法を考えるために,ICTの設置・設定・配線をクエスト形式で体験しました。
 

5月

  • ICTを活用した授業実践(第1回校内授業研究会)

    5年生 社会科「日本にはなぜ四季があるの~地域によってちがう気候~」

    研究主任がICTを効果的(有効・適切)に活用した授業を行いました。この授業により「ICT活用ありき」の授業ではなく,ICTはあくまでも道具であり,黒板や掲示物の方が適切な場合はそちらを使う方がいいということが,共通認識されるようになりました。


6月
  • 全クラスがICTを活用した授業実践
    野中教授の発案で,全クラスのICTを活用した授業実践を行いました。野中教授から「ICT活用が日常的になっている」という言葉をいただき,全職員が自信を深めることができました。
  • 情報活用能力を育成する授業(第2回校内授業研究会)
    前述の通り,ICT活用については一定の評価をいただいたので,当初の予定よりも早くカリキュラム作りに関わる授業を行うこととなりました。
    偶然にもそれぞれの授業学年が選んだのは「整理・分類」するという柱の授業。教科が違っても同じような情報活用能力を育成する単元があるということを確認するきっかけとなりました。
3年生 国語科「ほうこくする文章を書こう『気になる記号』」
(気になる記号を分類・整理する活動)
4年生 算数科 「整理のしかた」
(分類・整理によって2次元表を作成する活動)

7月

  • 情報活用能力を育成する授業(第3回校内授業研究会)

    6月の授業研究会から,2週間後,第3回の授業研究会を行いました。今回は「整理・分類」したことを言語化する学習と,新たに「実地調査」「デジタルカメラの活用」という新しい仮の柱の授業を行いました。

    1年 ・ 国語科 「くちばし」
    (くちばしの形を言葉で分類する活動)
    2年 ・ 生活科 「しゅっぱつ! なかよしたんけんたい」
    (まちたんけんの取材内容を計画する活動)

  • カリキュラム作りスタート!

    教科の中に含まれている「情報活用の実践力を育成する単元」 を抽出し, 情報活用の実践力について暫定的な柱を立てて,単元を分類するワークショップを2回行いました。

  • 川崎市教育委員会・川崎市立小学校情報教育研究会共催研修会への参加

    川崎市では,夏季休業中に多くの研修会が開催されます。その中の一つに「ICT活用研修」があり,この研修会は教育委員会と情報教育研究会と共催で行われます。今年は本校を会場にして開催され,ほとんどの職員が参加しました。ICT(主に教材提示装置)を使った授業を考えるという内容の研修でしたが,4月からの経験を研修会で発揮することができ,自信につながったようでした。

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成果と課題

<成果>

  • ICTを活用した授業の日常化
    ICTを各教室に常設したことによって,どの教員もスムーズに活用できる環境が整ったことは非常に大きな成果です。また,ICTを使う場面もあれば,使わない場面もあるということで,自分の授業スタイルを大きく変えずに授業を進めることができるという安心感も,この時期には大切なことだと実感しています。
  • 情報教育の大切さを感じるようになってきた
    多くの教員がもっている情報教育に対する誤った考えが無くなったことは,とてもよかったと思います。今までの授業の中で指導してきたことが,実は情報教育なのだということに気づいて,「情報教育は大事」とか「情報教育が楽しい」という声が職員から出てくるようになりました。

    夏季休業明けからはリストアップした単元を日常の授業で各教師が様々に試行しながら,実践可能なカリキュラムを検討していこうと考えています。
    また,今回,単元の抽出に用いた情報活用の実践力に関する柱について,表現や伝達に関するものが含まれていません。他の柱も検討していく必要があると考えています。

<課題>

  • 授業力・授業改善

    本校の研究テーマは

    豊かに伝えあう力を育む授業づくり
    ~「情報活用能力を育成するためのカリキュラム」の作成を通して~

    です。つまり,本研究のゴールはカリキュラムの完成と私たちの授業力アップ・授業改善です。研究授業や事前授業などでは45分の授業時間をオーバーしてしまったり,教師の発話があいまいだったりする場面が見られました。成果として「自分の授業スタイルを大きく変えずに授業を進めることができるという安心感」ということを書きましたが,第2期からは,授業力・授業改善ということもきちんと意識して研究を進めていきたいと考えています。

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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

  • 職員が一丸となって取り組むためには……
    平成21年度,政府のスクールニューディール政策の一環として,川崎市全小学校の各教室にノートPCと大型デジタルテレビが配備されました。せっかくの大画面を活用して授業をするためにはそれだけでは足りないだろう,という考えから,平小では毎年の学校予算から費用をやりくりして3年がかりで必要なICT機器(教材提示装置,ワイヤレスペンタブレット,DVDプレーヤー)を前教室に行き渡るようにそろえてきました。もちろん,それらを活用した授業内容も模索してきました。そうしたこともあって,教職員一同,ICTを活用してわかりやすい授業を行うことへの意識が高かったのが,研究を進める上でアドバンテージとなりました。

  • 教材提示装置が届いた夜
    本校にとって念願だったICT全教室配備。しかし,その管理はとても大変。教材提示装置やワイヤレスペンタブレットの付属品の数々。RGBコードにUSBケーブル,電源コードなどなど,配線関係でも数種類。その一つ一つにラベルシールを貼った夜は,日付をまたいでしまったとか。もう少し管理が簡単になるといいのですが。
  •    

  • 意識改革「ICTを使って授業することだけが情報教育ではない」
    教師のICT活用と子どもがICTを活用して学習活動の成果を高めることの違いについて,各教師が実感をもって分けて考えられるようになってきました。情報教育を進めて行く上で,とても大切な意識改革だと考えています。

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アドバイザーコメント

横浜国立大学 教授 野中 陽一 先生

■ ICT機器の常設によってICT活用の日常化を実現

 カリキュラム開発の前に, ICT活用の日常化を実現するためにすべての教室に実物投影機を常設した.短期間で全員が活用できるように研修し,お互いの実践を交流し,使ってみる段階から,一気に教科の目標を達成するための効果的な活用を意識する段階へと進んだ.教師が実物投影機やデジタル教科書等を活用して,指示,説明を行うだけでなく,児童がノートやワークシートなどを提示して発表する場面を増やしていくことが期待される.

■ 学習指導要領を踏まえた実施可能な情報教育カリキュラム

 今回の学習指導要領において,ICT活用及び情報教育の充実が図られていることは言うまでもないが,普段の授業でICTを日常的に活用し,小学校6年間を通して,情報活用能力を高めていくカリキュラムを具体化し,継続して実践することはなかなか難しい.特に教科横断的に取り組むべきであるとされる○○教育は,情報以外にも様々なものが,どれも重要だと指摘されており,そのすべてについて取り組むことは困難な状況にある.
 今回,平小学校が目指しているのは,どこの学校でも実施可能な,いわば,教科の授業だけでも情報活用能力を育成することができる現実的なカリキュラムを開発することである.教科の目標や内容が,情報活用能力の育成に直結する要素を含むものを抽出し,それらを関連づけて6年間継続して指導できるようにするのである.教科書をベースに情報活用能力の育成に直結する単元,学習内容,学習活動を拾い上げ,それらの関連を明確にして実践するだけなので,カリキュラムの『開発』とは言えないかもしれない.各教科の学習内容からボトムアップで積み上げるので,育成できるのは『情報活用能力』の一部かもしれない.しかし,現行の学習指導要領の枠組みの中で,すべての教師が情報活用能力という軸を意識して教科の授業を進めること,どの学校でも無理なく実施できるカリキュラムの土台を提案すること,に挑戦してみようという試みなのである.

 

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