実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第38回特別研究指定校(活動期間:平成24~25年)

川崎市立平小学校の活動報告/平成25年度8月~12月
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実践経過
実践経過

成果と課題
成果と課題

成果と課題
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● 地道な実践を続けることで研究内容が進化!

「平小のスキル」や「情報活用の実践力を育成する重点単元一覧」をもとに単元の指導計画を作成し,授業実践を行い,ワークショップ的な協議会を通して成果と課題を把握すること。それが「平小のスキル」や「平小のスキルを育成する重点単元一覧」の修正につながり,単元間・学年間の系統性やてだてがブラッシュアップされてより使い易いものへと進化していきます。こうした好循環が定着し,スタッフ全体が意欲的に研究に取り組んでいます。

実践経過

 
8月
  ● 1年目の取り組みを報告(成果報告会)

第38回特別研究指定校5校のうちの1校として,研究の中間報告をさせていただきました。とても立派な会場で熱意のある方々を前にした発表でしたが,本校から6名の職員が自主的に応援参加してくれたので,気合いはそのまま,リラックスして臨むことができました。情報活用能力を育成するカリキュラムの体系化をめざす本校の取り組みについての内容を軸にプレゼンしました。

研究主任のプレゼン動画へリンク研究主任のプレゼンへ[動画]
野中教授(本校アドバイザー)のコメント動画へリンク野中教授(本校アドバイザー)のコメントへ[動画]

● 夏休みの宿題は,「指導計画を全部つくること」!?

夏季休業中は,普段なかなか時間を作って取り組むのが難しい,指導計画の作成を進めるチャンスです。今年度は国語科を中心に授業研究を進めているので,「情報活用の実践力を育成する重点単元」に定めた単元のうち,国語科の全ての単元について指導計画を作成することにしました。各学年で10本程度の指導計画を作成することになるのでちょっと大変ですが,カリキュラムの重要な構成要素なので,本校スタッフは「やるぞ!」と気合い十分で取り組み始めました。みんなでがんばれる,それが平小の良いところなのかもしれません。

● 「平小のスキル」を見直し,研究が大きく前進!

本校では情報活用能力のなかでも「情報活用の実践力」に注目し,その下位項目を能力の育成場面(子どもの活動)が想起し易い言葉に置き換えています。それが,「あつめる」「なかまわけする」「くみたてる」「あらわす」「つたえる」の5項目から成る「平小のスキル」です。とはいえ,昨年12月の中間報告会で公開して以来,実践を進める中で様々な改善点が見つかってきました。そこで,「平小のスキル」を見直すためのワークショップを行いました。各スキルを定義する文章やキーワードを検討するなかで,スタッフ間の共通理解が深まり内容の精査を図ることができました。その成果は,1月24日に予定している研究報告会まで,しばらくの間校外の方々にはヒミツです。

     
9月  
● 授業力向上の取り組み2(第4回校内授業研究会)

6月に実施した公開授業の時に参観してくださった他校の先生方が多数,リピーターとして再び参観してくださいました。

2年 生活「レッツゴー!たいらたんけんたい」(まちの良さを探すことを通して,自分の知りたいことに合わせて情報を詳しく集める活動。)

川崎市立平小学校イメージ1

3年 国語「わたしたちの平のまち」(平の町を1年生に紹介することを通して,よりよい説明の仕方を考え,発表する活動。)

川崎市立平小学校イメージ2

5年 国語「グラフや表を引用して書こう」(統計資料を根拠として,意見文を書く活動。)

川崎市立平小学校イメージ3

研究協議会は,低・中・高それぞれの部会に分かれ,各授業会場で行いました。カリキュラムの内容をブラッシュアップしていくことを目的に,以下の流れで話し合いました。

  • 配当時間:50分間
  • 場所:各授業会場

1.分科会(低・中・高,各部会)

(0)趣旨説明のビデオを見る(5分間)
(1) ファシリテータをたてて,本時の授業について以下の視点を参加者全員で共有しながら, 記入票を書く。

  1. ○単元全体でメインとなる【平小のスキル】について,「学習場面」と「てだて」を書き出す。
  2. ○学習活動は全文を書き出すのではなく,要点を考えて書く。
  3. ○てだては,学習形態,教材,活用するメディア等を書く。
  4. ○書いた記入票は整理枠に分類して置いていく。

(2)(1)の作業をふまえて,2~3人組で残りの指導計画について取り組む。

川崎市立平小学校イメージ4

(3)分科会全員で,以下の視点で整理枠に分類した記入票の内容を検討・整理する。

☆学習活動について検討したいこと

  • その学年での学習活動のレベル(どの程度の活動が適切か)
  • 能力育成のために重要な,必要な学習活動は?

☆てだてについて検討したいこと

  • 取り上げた学習活動を行う場合の望ましい学習形態
  • 活用する(させたい)メディア

☆記入票の並べ方

  • 並べたときに,系統的になっているか。

川崎市立平小学校イメージ5

2.全体会

  1. 〇分科会での協議内容の共有
  2. 〇講師の先生方の指導講評

今回得られた「平小のスキル・学習場面・てだて」についてのデータは,学年間の系統性をもたせた一覧表にできないかと検討を重ねているところです。

 
10月
  ●指導計画・本時案の最終フォーマット(第5回授業研究会)

今回の研究授業では,本時指導案の形式が従来のものより新しくなりました。その主なポイントは

  1. ○毎時間の授業において,育てたい「平小のスキル」(=情報活用の実践力)を明確にする。
  2. ○活動の流れにおいて,「平小のスキル」育成に関連するポイントを明確にする。
  3. ○各ポイントにおいて,「平小のスキル」を育成するためのてだてを明確にする。

つまり,育てたい力について,どんな場面を設定・活用し,どんなてだてを用いて効果を上げるのか,が,見ただけである程度伝わるように意図して,本時案はデザインされています。

  1. 1年 国語「じどう車くらべ」(自動車の特徴を「しごと」と「つくり」に分ける活動。)
  2. 3年 国語「食べ物のひみつをおしえます」(事例を挙げて,文章のつながりを考えて書く活動。)
  3. 6年 国語「この絵,私はこう見る」(事実と感想,意見などを区別するとともに,目的や意図に応じた文章を書く活動。)
  4. センター級 生活単元学習「えがおやをひらこう」(えがおや)を通して,人とのやりとりを学び,自分の役割を果たすことを体験する活動。)

協議会では,授業をふりかえりながら本時案の書きぶりについても話しあいました。
 また,今回は,協議会の構成について,低・中・高の各担任が4つの授業クラスに分かれるようにしました。このことによって,学年間の系統性を意識した話し合いや,研究報告会で予定している授業内容についての情報交換などもできました。
 新しい本時案の形式や指導計画については,研究報告会で公開したいと思います。

 
11月~12月
   この時期は,各学年で栽培している作物の収穫や学校全体で盛り上がるフェスティバル,学習発表会,自然教室や修学旅行などたくさんの行事が続く大変忙しい時期なのですが,平小のスタッフは精力的にカリキュラムづくりに励みました。

●「使えるもの」になるまで,何度でもブラッシュアップ!!

夏に作成を始めた指導計画について,学年間の系統性や書きぶりなど,細かな所まで検討を重ねました。その結果,重点単元一覧表にも大幅に修正が加えられました。

 

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成果と課題

 

<成果>

●みんなで取り組むことが,みんなの成果につながる!

平小の研究では,研究主任と研究推進委員を中心に全体の方針がまとめられていきますが,指導計画や本時案など,指導に関する最も具体的な部分は担当学年全員がチームで取り組みます。これはごく当たり前のことかもしれませんが,「平小のスキル」や重点単元といった理論的なものを実際の授業へと具体化していくという作業に,スタッフ全員が関わることになります。その過程において,お互いの認識を理解しあうために活発な議論が起こり,研究内容に対する共通理解が大変良く深まります。そうしてブラッシュアップされてできあがりつつあるのが,「平小のスキル」「情報活用の実践力を育成する重点単元一覧」「指導計画」「本時案」等のカリキュラムを構成する研究成果物です。みんなで取り組み,みんなで頑張っているからこそ,この成果物に愛着のようなものが湧き,一生懸命考えながら使いたくなるのかもしれません。

●情報活用の実践力が高まると,情報手段の活用度も高まる!?

今年度初めにホワイトボード,夏前のiPad mini,夏休み明けにはタブレットPCが 平小に導入されました。既に教材提示装置やデジタルカメラは日常的な手段になっているので,それらの新しい情報手段を子どもたちが活用する,ということが特別なことではなくなってきています。情報手段を日常的に使える環境があることと,平小のスキルを日々意識して授業づくりを行い実践を進めて行くことが両立したからこその成果なのではないかと考えています。

<課題>

●自分たちのイメージをしっかりと伝えたい!

2年間の取り組みだからこそ校内で共通理解が図れたのかもしれない研究内容について,他校の方々にも「いいね!」「うちでも使ってみたい!」と感じてもらえるカリキュラムをつくりたいと考えています。そのためにも,本校の成果が情報活用の実践力を育成するためのカリキュラムとして効果を発揮し,子どもたちが育っている姿をみてもらう必要があります。1月24日の研究報告会に向けて,しっかりと準備をしていきたいと思います。

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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 

●指導案検討7連発!!

1月24日の研究報告会に向けて様々な準備が進む中,当日実施する授業について11月末から12月初旬にかけて指導案検討を行いました。全学年1クラスと特別支援級が授業を行うので,指導案検討は少なくとも7回は必要です。今回は1本ずつ,7夜に分けて検討会をもちました。川崎市総合教育センターの指導主事や川崎市立小学校情報教育研究会の先生方にも協力していただくため,夕方からの指導案検討となりました。連日,ほとんどのスタッフが自主的に参加して,夜遅くまで白熱した討議が行われました。

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アドバイザーコメント

横浜国立大学 教授 野中 陽一 先生

 

研究開発学校等で行われている情報活用能力育成のカリキュラム開発は,新たな教科,時間枠の設定が前提となっている。平小学校では,学習指導要領の枠組みの中で,国語科を中心に重点単元を設定しており,カリキュラムとしては,かなり限定した範囲で取り組んでいることになる。しかも,研究が進むにつれ,重点単元を他の教科に拡大するのではなく,むしろ,国語科に絞っている。同時に,情報活用の実践力の構成要素として設定した「平小のスキル」を吟味し直し,能力目標を発達段階に沿って具体的な行動目標で示すことに力を注いだ。

これらは,『「平小のスキル」や重点単元といった理論的なものを実際の授業へと具体化していく』研究授業への取り組みを通して,『お互いの認識を理解しあうための活発な議論』や『研究内容に対する共通理解』がなされ,研究協議会(ワークショップ)によって,さらに深められていくというプロセスを経て方向付けられたものである。

新しい教科や教科横断的なカリキュラムの開発ではなく,国語科における重点単元の設定と,育成する能力に対応した学習活動,学習形態,活用するメディア等の組み合わせを明確にした指導計画の開発,実践によって情報活用の実践力を育成するという新たな発想による,大胆ではあるが現実的な提案なのである。

 

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