実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第39回特別研究指定校(活動期間:平成25〜26年)

岡崎市立葵中学校/平成25年度4〜7月

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実践経過
実践経過

成果と課題
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裏話

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○研究テーマ

学び合い・磨き合いを軸にした、思考力・判断力・表現力の育成
−ICTの幅広い活用法と、生徒が自ら求めてICTを活用する場の追究−

問題の解決に向かって仲間と力を合わせて主体的に学ぶ授業を創作し、思考力・判断力・表現力を持った生徒を育成していきたいと考えています。その学習の中にICT機器を取り入れ、より学び合いを充実して進めていける学習を創作するとともに、ICT機器の有効性と可能性を探っていきます。

○研究3部会の発足
研究を円滑に進めていくために、教師全員を3部会に分けて研究を進めています。
  • 教育活動部会 ‐学びの場を作る‐
    • あおいタイム(少人数のグループに分かれて行う討論会)の設定
    • 1分間スピーチの進め方
    • 朝の読書の進め方
    • 生徒会の自治的活動の計画   など
  • 授業研究部会 ‐授業を磨く・教科を追究する‐
    • 教科論、授業論の構築
    • 「教科の心得」(教科ごとに設定する学習の主だった流れ)の検討
    • 生徒の変容の資料収集
    • ICTの活用方法    など
  • 学習環境部会 ‐学びを支える環境を作る‐
    • 「葵中生10の心得」(生徒が学習で大切にする目標)の検討
    • 校内・教室の環境整備
    • ICT機器の整備と管理

実践経過

○研究授業を進めながら、ICT機器のよさと活用の場を探しました。

4月

研究推進委員会の立ち上げ

  • 研究の進め方について
  • 3部会の発足
  • 平成25年度研究授業の計画

5月

研究授業@ 
【家庭科・音楽・特別支援学級】
家庭科 「健康と食生活」   
 パワーポイントで「少年A君の1日」と題した紙芝居を作り、その話の中から食生活の問題をグループでみつけ、その問題をどのように解決したらよいかを話し合いました。
岡崎市立葵中学校活動報告イメージ1

研究授業A 
【社会・国語・理科】
国語 「ちょっと立ち止まって」
 文章を段落で分けた「形式段落カード」の中から、ルビンのつぼに関するカードを探し、教材提示器で提示しながら生徒が選んだ理由を発表しました。
岡崎市立葵中学校活動報告イメージ2

理科 「エネルギー」
 グループに分かれて実験したデーターをエクセルでまとめ、
それをグラフにして表した。

  研究推進委員会
  和歌山大学 准教授 豊田充崇先生を迎えて

  • タブレットの可能性につい
  • ICT機器の活用の仕方について

6月

研究授業【技術】
14日 技術「技術を比較し未来を創造しよう」

教材提示器を用いてLED電球の内部を拡大して確認しました。
岡崎市立葵中学校活動報告イメージ3

7月

研究授業
17日 数学「文字を使った式」
タブレットを使って自分の考えを大型ディスプレイに映し出し、説明をしました。


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成果と課題

<成果>

○ICT機器の性能を知ったこと
 本校には前年度までに各クラスに50インチのテレビ、教材提示器、ネット環境の整ったノートパソコン1台がすべての教室に配備されており、それらを使って学習を進めていましたが、これらのICT機能の性能を知らずに用いていました。例えば、教材提示器はズーム機能を使ってテレビに映すだけでした。しかし、SDカードを使えば、静止画としてより見やすく映すことができ、写した映像を取っておくこともできることを知りました。それぞれの機器の性能を知ることによって、ICT機器の可能性が見えてきました。

<課題>

○デジタルとアナログの融合
 ICT機器といったデジタル機器と、黒板、ノートといったアナログ機器をどのように合わせて使っていったら効果的かが問題となりました。デジタル機器のよさ、アナログ機器のよさをそれぞれ明確にさせ、生徒の学習が効果的に進められるようにこれから検討していこうと思います。


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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

○タブレットの機種を選ぶ難しさ
 タブレット端末の機種選定には悩みました。ソフトの面、使い勝手などを考えていき、従来導入されていたOSと同様の機種にしました。選定したタブレットPCが届いたのは、結局7月の半ばになってしまいました。もう少し早く入手したかったです。

○先生方が、タブレットを使った授業に興味を持ってくれたこと
 タブレットを持っていた先生は2人だけでした。初めは抵抗の気持ちを持たれるのではと思っていましたが、「実践に使ってみたいです。」とたくさんの先生が興味を持ってくれました。本校には、新しいことに進んで挑戦しようとする若い先生がたくさんいます。ベテランの先生が若い先生を支え、協力体制は十分です。この点がこの学校の先生の素晴らしいところです。「最先端の研究をみんなで進めましょう。」と言ってくれた若い先生の言葉がとても嬉しかったです。

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アドバイザーコメント

和歌山大学 教育学部 附属教育実践総合センター 豊田 充崇 先生

 私の勤務する和歌山大学のある和歌山市と、葵中学校のある愛知県岡崎市とは、実は歴史的には非常に密接なつながりのあるところです。少し、雑談となりますが、「葵」といえば、「三つ葉葵」の家紋が示す「徳川家」がすぐに思い浮かびます。つまり、紀州(和歌山)と尾張(愛知)は徳川御三家として、ともに歴史に名を馳せてきたといえます。そういった縁かどうかは定かではありせんが、本年度から特別研究指定校である「葵中学校」の担当をさせて頂くこととなりました。
 葵中学校でまず印象的なのが、その広大な敷地がきちんと整備されていること(校舎前にある庭園は圧巻です)、校舎内のありとあらゆる場所の清掃や整理が行き届いていること、生徒の授業規律や校内ルールが高いレベルで遵守されているところが挙げられます。ひとことでいうと、「爽快な学校」であるといえます。

 さて、本題に入りますが、研究のサブタイトルには、「−ICTの幅広い活用法と、生徒が自ら求めてICTを活用する場の追究−」と大きく2つの目標が掲げられています。
 前者の「幅広い活用法」に関しては、これまでにも既に多くの研究実績があり、日常的に活用できる環境が整っていますので、時間と共に多くの事例が蓄積されるはずです。
 例えば、初回に参観した授業では、事前にリサーチしておいたウェブサイトを提示して活用したり、生徒が発表・説明ツールとしてICTを活用するといった場面は当然あります。理科の授業では、自作の映像教材を用いたり、1台のPCがデータ入力用、集計・結果出力用として使用されるなど、既存の機器を効果的に活用する場面が見て取れました。
 そして、二回目の参観では、グループに一台のモバイル端末を活用して意見を交流させる試みをおこなっています。こちらは、前日にようやくモバイル端末が正式に稼働したということでしたが、初回とは思えないようなスムーズな展開で驚きました。モバイル端末の可能性というよりは、生徒のポテンシャルの高さを垣間見たようにも思います。
 ただ、「幅広い活用法」といっても、バラエティの豊富さを競うわけではありません。初回の研修時に述べさせていただいたことの1つに、

  1. 効率化・能率向上できたか
  2. 興味関心を促せたか
  3. より理解を深められたか
  4. 紙面・板書では示せない内容であったか
  5. 思考・発想を促せたか
 など、一定の活用意図を定めて、それが達成できたかどうかを具体的な授業場面を元に検証することが重要であるということを示させて頂きました。
 一方、後者の「生徒が自ら求めてICTを活用する場の追究〜」に関しては、これはハードルがかなり高いところに設定されていると感じています。
 「生徒が自ら求めて」を文字通りに受け取ると、情報手段の取捨選択を生徒自身で判断する場面や、必要に応じて使う生徒個人やグループもあれば、そうでない場合もあるという、ある程度の自由度も認めていく必要があるかと思います。
 モバイル端末活用は、個人の思考を深める、課題解決を促すためのツールとしての可能性を秘めているとは思いますが、本来、もっと自由度があってもいいかとおもっています。極端にいうと、絵の具・書道セット・裁縫セット・モバイル端末ぐらい「文具」に近づければとも思います。そのためには、やはり生徒自身による自主管理体制なども構築する必要もあるかと思います。
  校長先生は「打ち上げ花火では終わらない、定着・日常化したICT活用授業実践」を目指しておられますが、葵中学校には校長先生のリーダーシップをはじめとして、多くの好条件が揃っています。関連して述べますが、「学校情報化診断サイト」の結果によりますと、"学校の情報化を推進するためのキー"となるのが「校長のリーダーシップ」とその意向に沿って動く「情報担当主任」の存在、そして「校内の推進組織」が挙げられます。葵中学校には、いずれもが存在し、大規模校の中学校では考えられないような研究体制を有しています。
 この秋(10月22日)におこなわれる公開研究会は、全教室の授業公開で実施されます。中学校事例では異例のことになるかとおもいますが、それだけに注目度が高いといえます。
 ICTの「幅広い活用法」はもとより、タブレットPC(モバイル端末)が主体的な学習活動を支えるツールとなることを期待しております

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