岡崎市立葵中学校/平成26年度1~3月 |
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研究課題と成果目標 |
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[研究課題] 学び合い・磨き合いを軸にした思考力・判断力・表現力の育成 [成果目標] 生徒の思考力・判断力・表現力の育成を目指して、書画カメラ,デジタルカメラ,ビデオカメラ,電子黒板などのこれまで整備されている機器について、実践を通して教育的効果を検証する。また、タブレットPCをはじめとした、新しいデジタル機器を利用した授業づくりを進め,ICT機器を用いた授業の実践事例を増やしていく。さらに、生徒のICT活用能力を高め,学習の中で進んで使用できる力を育てる。 |
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本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応 |
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これまでの2年間の授業開発を振り返り、ICT活用のよさを確認した。 1月 タブレットカレンダー作り ・各教科において、タブレットPCを用いると学び合いが円滑にできる単元を出し合い、一覧を作った。 2月 ICT活用方法のまとめ ・各単元において、ICTがどのように使えるかを考え、まとめた。 3月 校内授業研究会(理科) ・本年度最後の校内授業研究会 |
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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など) |
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〇タブレットPCを追加購入 来年度も研究を続けていくことが決まり、さらにタブレットPCを追加購入しました。 〇Windows10発売予告を知って Windows10が発売されるを聞き、今のタブレットはいつまで使えるのか、とても心配になりました。 |
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成果 |
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校内研究授業の中で、生徒にICTを自由に活用させる場面が増えてきました。生徒の理科の実践では、生徒は火星の満ち欠けの様子を、タブレットPCのカメラ機能を使って写真を撮り、それを使って星の欠ける様子を説明するのですが、写真を切り取ったり、2枚を並べたり、複数のスライドをつくったりして、相手に分かりやすく発表しました。 |
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2年間の取り組みの成果 |
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ICTを学習の中で効果的に使用することで、学習の中に「学び合い」「磨き合い」が生まれ、生徒が主体的に思考する時間が学習の中で増えました。その結果、「考えてみたい」「判断してみたい」「表現してみたい」といった学習意欲が高まり、より主体的に学習に取り組むことができるようになりました。 |
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2年間の取り組みと成果についての自己評価・感想 |
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ICTを使用することで、これまでできなかったり、大変だったりした授業の一場面を変えることができることが分かりました。生徒に資料を読みとらせたり、情報を共有したり、考えを発表したりするときなど、学習の色々な場面でICTを利用することで、深く考えたり、時間を短縮したりすることができます。 |
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今後の課題 |
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パナソニック教育財団から特別研究指定校として選ばれ、これまで研究を進めてきましたが、引き続き岡崎市から研究指定校として選ばれ、研究の継続が決まりました。 |
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アドバイザーコメント |
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和歌山大学 教育学部 附属教育実践総合センター 豊田 充崇 先生 |
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前回の報告で、授業研究協議会のコメントや2年間の研究の総まとめも既に終えておりますので、今回は更なる展望について述べていきたいと思います。 葵中学校は、「教科指導におけるICT活用」に関する授業研究を中心として進め、ICTを効果的に活用することで、研究主題として掲げた【学び合い・磨き合いを軸にした思考力・判断力・表現力の育成】を目指してきました。これまでの報告から、葵中学校が蓄積してきた多様な実践事例において、そういった場面が各種設定されていることはいうまでもありません。それは葵中学校が一丸となって作成した下記の書籍から伺えます。 ■「ICTを活用した学び合い授業アイデアBOOK」(明治図書:2014.10) 数値的に学習効果を示せたわけではありませんが、全教科・全教員がICT活用の効果を実感した授業実践事例を残してきたといえます。 ただ、私自身、こういったバリエーションのある授業実践事例が量産されることに満足してしまい、その次の一歩である「情報活用能力の育成」に関しての視点を盛り込むことが充分にできなかったことが、2年間の研究を終えた今となって後悔しています。 例えば、情報活用能力にいくつかの下位項目を設定し、具体的な能力を生徒の自己評価によって継続的に調査するなどは、容易にできたはずです。また、指導案に、教科の目標以外に情報活用能力の育成項目を入れ、学習の履歴やパフォーマンス評価などでその育成レベルを順次捉えていくことも、葵中学校であればできたと思われます。 ここで、「ある課題の解決方法を調べる」といった学習活動を1つ取り上げますが、調べる方法の1つとして「インターネットで検索する」という場面があったとします。このとき、まずはどういったキーワードで検索すればいいかといった、いわゆる「検索スキル」の有無によってもその後の学習活動が大きく左右されることとなります。また、大量の情報から必要な情報を選別する力も必要であるし、調べて入手した情報が求めている情報に適合するかを判断する能力も必要とされます。その情報自体に信憑性があるのか(情報の発信元はどこか、それは何のために発信されている情報なのか)を見極める力も必要です。その情報をどのように編集するのか、最終的なアウトプットを意識し他者に伝えるのであれば、それを想定した編集方法や情報の配置をどうするかといった能力も試されることとなります。 このように、「ネットで調べる」という1つの学習活動の中にも、多岐・多層にわたる細分化された能力要素を見いだすことができます。このあたりを、突き詰めて、どういった能力の育成を目的にして、そのためにどういった手立てを考えているのか、その能力が向上した(育成された)ことをどう計測していくのかといった研究の設定も可能だったかもしれません。 今後、継続的な研究の機会があれば、情報活用能力を細分化して、能力チェック表等を作成し、その能力評価をどのように行うべきかという「情報活用能力の育成とその評価方法の研究」に務めたいと考えています。ですが、中学校での情報教育研究が国内でもほとんど実施されていない現状では、その道のりは大変険しいことが予想されます。それでも、全教科・学年を通じた「情報活用能力育成のモデルカリキュラム」などができれば、共通認識が得られやすいし、育成の目標とする能力の設定も明確に示せるはずです。 なお、「情報活用能力調査結果」(文部科学省)が下記のURLにて現在公開されています。国内初のコンピュータテスティングによる「情報活用能力調査」であり、各調査問題の正答率が数値的に示されています。これによって、これまで計測できなかった「情報活用能力」が、一定の客観性を持ってその能力レベルを捉えることができたといえます。現在の国内の児童生徒らは、どういったことができているのか、何が課題であるかも示されているため、国内の情報教育の「舵取り」をどう進めるべきかの資料となるはずです。 ■情報活用能力調査の結果について(文部科学省)(2014.3.25公開) 当結果を読み解き、国内中学校の情報教育に何が必要なのか、その先導役を担う期待が、特別研究指定校の研究を終えた葵中学校にかけられているといえるでしょう。 |
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