実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第40回特別研究指定校(活動期間:平成26~27年)

春日学園つくば市立春日小学校・春日中学校 /平成26年度1-3月期

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研究課題と成果目標
研究課題と成果目標

取組内容
取組内容

裏話
裏話

成果
成果

今後の課題
今後の課題

1年間の取り組みの成果
◆1年間の取り組みの成果

1年間の実践を終えての自己評価・感想
◆1年間の自己評価・感想

アドバイザーコメント
必見! アドバイザーコメント

 

研究課題と成果目標

 

[研究課題]

ICTを活用した 思考力・判断力・表現力を育む授業づくり 
~協働学習ツールとタブレットを活用した論理的思考力の育成~

協働学習ツールを1年~9年の全学年で系統的に利用し,学習の質が高まり児童生徒の論理的思考力が向上するのではないか。

[成果目標]

ICT(協働学習ツール)とタブレットを活用した学級の枠を超えた他校等との協働学習の実践として,この機能を活用して,他校の児童生徒と1つの課題について協働で解決していく学習を実現していく。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

 
  1. 公開期日 平成27年2月2日(月)
  2. 講師 大阪教育大学教育学部 教授(教育学博士) 木原俊行 先生
    信州大学 教授 東原 義訓 先生
  3. 内容 小中9年間を通した論理的思考力の授業公開

(1)1年7組 国語科「じゃんけんやさん」をひらこう 授業者 菊池裕子

○目標

自分や友達の話し方を評価し合うことで,よりよい話し方について考え,相手に分かりやすく説明するための工夫をすることができる。

○内容

自分たちの話し方を振り返り,さらに改善していくことができるよう,「ぼうけんくん」や「スタディーノートのビデオ機能」を活用する。前時の練習の様子を撮影したビデオを視聴し,よい話し方のイメージをもたせたり,改善点を明らかにしたりと,評価の観点を明確化する。また,自らの話す様子を撮影することにより,自分の話し方を振り返り,改善していくことができるようにする。

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(2)2年1組 考える時間「できること,こんなにふえてきたよ」
(考えるわざ その⑥ 分析する) 授業者 上岡由美子

①目標

ボーン図の使い方を理解し,自分の成長について詳しくとらえ,伝え合うことができる。

②内容

ボーン図を使って「2年生になってできるようになったこと」について自分の考えをまとめる。ボーン図を用いることで思考が可視化され,課題を分析しながら考えることができる。

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(3)3年2組 学級活動「ゲーム機器の使い方について考えよう」
授業者 狩野さやか

①目標

ゲーム機器のよりよい使い方を考えることができる。

②内容

バタフライチャートを使って,ゲーム機器でゲームをするよさと問題点を考える。バタフライチャートを活用し,ゲーム機器を多面的にみることで,新たな気付きや自分の考えを見直すことができる。

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(4)4年6組 考える時間「構造化する」を定義する
(考えるわざ その⑧構造化する)
授業者 久保田晃弘

①目標

集めた情報をもとにピラミッド・チャートを使って自分の考えを組み立てることができる。

②内容

ピラミッドチャートを使って「どんな5年生になりたいか」について自分の考えをまとめる。論理語彙(なぜなら~,具体的に言えば~)等を使って説明している児童の発表を取り上げ,使用することができるようにする。

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(5)5年5組 図画工作科「見つけたことを話してみよう」授業者 細田愛

①目標

有名作品を鑑賞する活動を通して,自分や友達の見方や考え方,発想の面白さや楽しさに気付くことができる。

②内容

ブリューゲルの「子どもの遊技」という絵を見て気付いたことや感じたことをグループで話し合う。ワークシートの代わりに移動用PCと児童らが絵を見て気付いたことを発表する際には,提示装置を活用する。これにより,注目したところが大きく投影されるため,全体で見ながら話し合いを進めることができ,よりお互いの考えを共有することができる。

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(6)6年2組 算数 円の面積 授業者 小島桂

①目標

身の周りにある複雑な模様の面積を既習の面積の公式を利用して求め,順序よく説明することができる。

②内容

いろいろな円の面積の解き方をタブレットを使って考え,児童が自分たちの考えを発表する際には,ビッグパッドを活用する。その際に,自分たちの作成した資料を映し,描きながら説明させる。これにより,他者の考えが理解しやすくなり,自分の考えをよりよいものに変えていくことができる。

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(7)7年1組 社会「2つの州のつながりを解説しよう」授業者 遠藤優貴

①目標

2つの州のつながりを見つけ,州同士のつながりについて自分の言葉でまとめ,友だちに解説することができる。

②内容

フィッシュボーン図を活用し,州同士のつながりとその背景を調べ,まとめる。生徒が解説をする際には,ビックパッドを活用する。可視化することにより,考えを深めることができる。

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(8)8年1組 英語科音楽科
「クラスのプロモーションビデオを作成し学園に紹介しよう」
授業者 T1大野恵美 T2岡田有華

①目標

  • 言葉のアクセントやポーズの入れ方を意識しながら,英語の詩を読むことができる。(外国語科)
  • English poemに合った音楽(BGM)を表現しようとしている。(音楽科)

②内容

English poem(クラスの学校生活の一場面を映した写真をもとに作成)で表したクラスのよさを音楽で表現する方法を話し合う。ピラミッドチャートを活用し,根拠(English poemから読み取れる印象)に基づいた音楽表現方法をタブレット使って考えられるようにする。

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(9)7年2組 国語 表現を磨こう「木」 授業者 黒田陽香

①目標

詩の言葉の意味を理解し,作者のものの見方や考え方を説明することができる。

②内容

「木が好きだ」という根拠について考えることで,作者の思いを深める。「ピラミッドチャート」を使い,作者の主張とその根拠をとらえる。スタディネットを使い,個人の考えを深 めるために,各班の考えを提示し,他の班の考えを参考にする。また,発表する際に根拠を視覚的にも明確にする。

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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 

今回は,教員経験の少ない先生や講師の先生も授業を行った。本学園には80名近い教員がいるが,1年間をとおして1人1回公開授業研究を行うことができ,本事業の広がりを感じることができた。

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成果

 
小中一貫教育校の利点を生かし,1~9年生まで全職員でデジタル思考ツールの活用をおこなうことができるようになってきた。
教師が意図的にデジタル思考ツールを使うだけでなく,児童生徒自らが,数ある思考ツールの中から必要なものを選択し活用する姿が見られるようになってきた。

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今後の課題

 

新たな機器として,パナソニック「ぼうけんくん」やマイクロソフト「サーフェス」が利用できる環境になった。これらの機器を上手に利用しながら,新たなデジタル思考ツールの活用方法を研究していきたい。

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1年間の取り組みの成果

 

全校集会では,児童が発表する際,これまでは教師の指導がたくさん入った原稿を読んでいたが,今年度の後半から原稿無しで自分の言葉で発表するようになった。
これは,これまでデジタル思考ツールを使って話し合ってきた大きな成果であると考える。

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1年間の実践を終えての自己評価・感想

 

児童生徒の思考の可視化のために,デジタル思考ツールを活用する実践をおこなってきたが,その成果として,デジタル思考ツールを活用しない場面でも,児童生徒たちが主体的に自分の言葉で論理的に話し合う姿が見られるようになってきた。

次年度は,デジタル思考ツールを使った学習スタイルが日常化できるようにしていきたいと考えている。そして,27年11月10日には全国規模の公開授業を計画している。

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アドバイザーコメント

大阪教育大学 教授 木原 俊行 先生

 

-春日学園 つくば市立春日小学校・春日中学校の教材開発の工夫-

木原先生

この1年間,筆者は,パナソニック教育財団の実践研究助成・特別研究指定校の春日学園(つくば市立春日小学校・春日中学校)の実践研究に,アドバイザーとして関わりを持ってきた。そして,そのすぐれた点について,これまでに2度,解説してきた。年度末にあたって,今回のレポートでは,それらを今一度整理してみたい。

筆者を含めて,春日学園(つくば市立春日小学校・春日中学校)を訪問する人は必ず,その学習環境の美しさに魅了される。新しくてきれいな建物はまぶしく,その内装は柔らかな色調で訪問者を迎えてくれる。そして,それ以上に感心させられるのは,学習環境がよく整備されていることだ。教室や廊下に設置されている様々な学習コーナー,知的好奇心をくすぐる掲示や展示,協働学習に資するICT機器等々,子どもたちの学習意欲を喚起し,思考や表現を促し,支える物理的環境の構成は見事である。

そうした豊かな学習環境を生かすべく,春日学園の教師たちは,「ICTを活用した思考力・判断力・表現力を育む授業づくり~協働学習ツールとタブレットを活用した論理的思考力の育成~」というテーマで実践研究に従事している。思考力の育成という今日的な教育課題に応じるためのアプローチに,思考ツールを,しかも,デジタル化されたものを位置づけるという構想を,彼らは,全学年,全教科・領域において展開している。その実践の多様性は,秀逸である。例えば,2015年2月2日に催された授業公開の集いでは,卒業を間近に控えた9年生以外のすべての学年の研究授業が公開された。教科等のレパートリーは,この日だけでも,国語,考える時間,学級活動,図画工作,算数,社会,音楽&英語と広がりを見せている。それは,春日学園の実践研究が,ICT活用の指導法の工夫改善にとどまらず,カリキュラム開発の性格を帯びていることを物語るものであろう。

さらに,春日学園の教師たちの実践研究には,子どもたちの思考等を活性化する,よき教材が開発されているという特長も確認される。例えば,前述した授業公開において,第5学年の子どもたちは,「子どもの遊技」というブリューゲルの作品の鑑賞にいそしむ。それは,子どもたちが数多くの気付きを抱きやすい題材であった。それゆえに,子どもたちは絵画の特徴に関する思考を多面的にめぐらせていた。同様に,第8学年の子どもたちは,クラスのプロモーションビデオを作成するという活動に取り組んでいたが,これも,「クラスの良さを描写したPoemに合う音楽(BGM)を創ろう」という,生活に根ざした学習課題が設定されていたことが功を奏して,彼らの思考や表現に対する意欲が高められ,その構造的展開が促されていた。

そして何より,春日学園の教師たちが「学び続ける」教師像を体現していることに,いつも,共感させられる。上記の合科的展開は,筆者が提案したことをすぐに実践化した,スピード感あふれる授業改善のアクションである。また,2月2日の授業公開においては,それまでのものにはなかった,分科会の企画・運営や信州大学の東原教授と筆者の対談タイムの設定にも,彼らは,チャレンジした。

春日学園は,学習環境,指導法の工夫改善,教材やカリキュラムの開発,そして,それらに取り組む教師文化や組織文化等のいずれの側面・次元においても,学校改革のすぐれたモデルである。

 

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