実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第38回特別研究指定校(活動期間:平成24〜25年)

川崎市立平小学校の活動報告/平成23年度1月〜3月
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実践経過
実践経過

成果と課題
成果と課題

成果と課題
裏話

アドバイザーコメント
必見!アドバイザー
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セールスポイント

● 今年度をふりかえり,次年度に臨む!
今期は1年のまとめとして子どもたちの変容をみとりながら,今年度の成果と課題をふりかえり,来年度の計画を立てました。

実践経過

1月


● 12月の中間報告会をふりかえって,成果と課題をまとめよう!
 12月12日に行った中間報告会には,校外から133名の方が私たちの研究に興味をもって参加してくれました。寄せられた感想を読んでみるとたくさんの方が「ポスターセッション → 公開授業 → 基調提案 → 指導講評 → 講演という一連の流れで,平小学校が目指している情報教育が,わかった。」と書いてくれました。
この経験を生かしてさらに平小の研究を進めるために,中間報告会を総括すべく,全員でふりかえりをおこないました。

 

● 1年間の積み重ねがみとれるか!?〜その1〜(第6回校内授業研究会)
 1月の授業研究では,今年度の取り組みによって,私たちがめざす子ども像に近づけることができたか検証する取り組みを行いました。
5年生 国語科「すいせんします」
(理由を明確にして,推薦したりそれを聞いたりする活動。)
12月に学習した「わたしたちの図書室改造提案」の内容を受けて,低学年児童が読書活動に親しめるよう,読み聞かせをすることになった5年生。どんな本を読み聞かせたら良いかを,同じクラスの仲間に推薦する活動です。推薦の目的や内容を整理するために「ウェビング」の手法を使ったり,低学年児童や先生にインタビューするのにデジタルカメラを使ったりと,メディアを主体的に選択する場面もみられました。

 

● 来年度の準備をしよう!
 授業後の全体会では,「平小のスキル」に即して「年間指導計画・単元題材一覧表」に着色する作業をおこないました。その際,「平小のスキルについて,単元間の系統性をどのように表現したらよいか。」「来年度,授業公開するとしたらどの単元がよいか。」といったことについて話し合いながら作業するようにしました。

(作業のめあてとして示したスライド)

2月

● 1年間の積み重ねがみとれるか!〜その2〜(第7回校内授業研究会)
 今年度最後となった授業研究会では,前回に引き続き,1年間の積み重ねがどのように表れるか,1年生と6年生の授業実践を通して検証しました。

1年生 国語科「どうぶつの赤ちゃん」
(いろいろな動物の赤ちゃんの違いを対比して読む活動。)
第3回で授業者となった2年目の先生が「是非,もう一度やりたい!」と立候補して取り組んだこの実践では,「1年生であそこまでできるとは……」という声があがるほど,子どもたちが主体的に活動していました。情報を「なかまわけ」してから文を「くみたてる」ことを意識して手だてを練った成果だと言えます。その一方で,時間配分や発問の大切さを感じさせる場面もありました。

6年生 社会科「日本と世界のつながり」
(学習の見通しをもって,自分たちの選択したメディアを適切に使いながら発表する活動。)

この実践では大きな提案がありました。それは,教師の指導内容を明確にするために生まれた「平小のスキル」を使って,子どもたちに学習活動の見通しを持たせようとしたことです。「あつめる→なかまわけする→くみたてる→あらわす→つたえる」といった流れが書いてあるワークシートを活用し学習計画を立てることで,子どもたちが見通しをもつ助けになることがわかりました。

 

● みんなの言葉で,言い直してみよう!
 今年度最後となる全体会では,4月からずっと,みんなで考えてきた「情報活用の実践力」について,その意味をきちんと捉え,イメージを共通理解するためのワークショップを行いました。
「教育の情報化に関する手引」では,
課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力 と書かれている「情報活用の実践力」について,私たちの言葉に直してみるという活動を行いました。私たちが育てたい力を分かりやすい言葉に置き換えることで,来年度に向けた具体的なイメージが広がってきました。

3月

● 来年度のことを話すと…
(第6回研究推進委員会,野中先生との打ち合わせ)

 今年度の成果,作成途中のもの,来年度の課題,といったことについてまとめ,来年度の作戦を練りました。野中先生(横浜国立大学教授)の温かく的確なアドバイスのおかげで具体的なイメージをもつことができました。「来年のことを言うと鬼が笑う」という諺がありますが,鬼に負けず頑張り通せそうです。

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成果と課題

● 中間報告会をふりかえって
 参観者の方々から寄せられた感想を参考にして,中間報告会のふりかえりを行いました。主なものは以下の通りです。

  • 授業公開の前に行うポスターセッションは以下の点で有効だった。
    • 学年団で取り組むことで,授業の概要をより良くとらえることができた。
    • 練習会を行うことで,他学年の実践を知ることができた。
    • 学校全体で取り組む雰囲気を盛り上げることができた。
    • 参観される方に,授業の意図を知ってもらうことができた。
  • 授業公開について,いくつかの課題が挙がった。
    • 「情報教育=ICT機器の活用」というイメージが強く,それを期待して参観される方が少なくない。平小がめざす情報活用の実践力「平小のスキル」を育成する授業提案をしていくためには,見せ方を工夫していく必要がある。
    • 子どもたちがメディアの特性を知り,選択する姿をしっかりと見せていきたい。
    • ICTを使う場面の精選が必要。(どのような学習場面で,どのようなICTをどのように使うか。)
    • あらためて日頃の学級経営が基本であると感じた。
  • 急ピッチで進めてきた研究。あらためてふりかえってみるとわかることがある。
    • 「めざす子ども像」「平小のスキル」「重点単元配列表」が揃ったことで,カリキュラムの全体像が見えてきた。来年度は実践を進め,ノウハウを蓄積していきたい。

● 3つの授業研究会をふりかえって
 若手が積極的に授業研究に取り組み,それを周りが強力にフォローする,という風景が日常的にみられました。各学年団,学校全体のチーム力が上がったように思います。また,1月の全体会では,以下のような課題が挙がりました。

  • デジタルカメラを動画撮影に利用してインタビューを行ったのは良かったが,光や音といった撮影場所の状況に配慮して使えるように指導する必要があった。
  • 今回は4名で1グループとなり,8グループが同時にデジタルカメラを使って動画を再生したが,デジタルカメラでは画面の大きさや音声の大きさが不十分だった。
  • 指導計画で構想したとおりに授業を進行するには,やはり発問や活動単位,資料などを適切に設定し実践する指導力が重要となる。私たちの「教師力」を向上させていかなければ。
  • 来年度の本発表では,
    @他校にも普及できるようなシンプルなカリキュラム。
    A育った子どもの姿。
    の2つを示したい。

● ワークショップをふりかえって
 「情報活能の実践力」の定義を自分たちの言葉で表現しようとする過程で,一つ一つの言葉が持つイメージを共通理解することができ,情報活用の実践力についての認識を深めることができました。各グループから発表されたものを参考にして,一つにまとめていきたいと考えています。

● 来年度に向けて
 平成26年1月24日の成果報告会について検討することができました。めざす子どもの姿を確認し,研究の成果物としてどんなものが可能か考え,4月からの実践をスムースにスタートできるように計画を立てました。

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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

● 忙しくても,頑張れる!
 今期は3ヶ月間と短く,卒業式や年度末の事務作業に追われて,いつも以上に忙しい毎日でした。そうした中,3本の授業研究を行い,カリキュラム作りを進めるための作業がいくつか進められたことは大変嬉しいことです。4月からの取り組みが,良い雰囲気で続いていることの表れではないかと思います。今年度で職場を異動する先生たちが「平小の環境に慣れてしまうと,異動先で物足りなく感じたり不便になってしまったりするかもしれないなぁ」と言っているのを耳にすると,寂しくもあり,嬉しくもあります。新年度は,新しい仲間に平小の取り組みを引き継いでもらえるように研修を工夫していきたいと思います。そして,異動した先生たちが,平小の実践を広めていきやすいようなカリキュラムを作っていけたらと思います。

● 強力なアドバイザー!
 新しいことにチャレンジすることはとても楽しいことですが,具体的に実践に取り組んでいるうちに,内容の優先順位が揺らいでしまうことがよくあります。そんな時,私たちの進むべき方向性を引き出してくれるのがアドバイザーの先生方です。いつも優しく的確なアドバイスをしてくれる横浜国立大学の野中教授や川崎市総合教育センターの指導主事の先生方,平日の夜でも快く指導案検討に参加してアドバイスをしてくれる川崎市立小学校情報教育研究会の常任委員の先生方,そして運営面や他の実践校の情報など様々なアドバイスをくれるパナソニック教育財団事務局の方々。本当に有難い環境の中で研究を進めさせていただいているのだと思います。

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1年間の実践を終えての感想

● 1年目の実践を通して見えてきたもの
 本研究で作成している「情報活用能力を育成するためのカリキュラム」は,次の3つの要素で構成する予定で研究を進めてきました。

 ①「ICTの基本的な操作スキルの習得」
 ②「学習活動においてICTを道具として活用する基礎的な学習体験」
 ③「言語活動プラスICTで豊かに伝えあう学習体験」

 この3要素で構成される各教科の具体的な場面が6年間のカリキュラムに位置づけられることで、研究成果が学校の年間指導計画へ組み込まれ,系統的に成果の定着と活用を図ることができると考えています。また,3要素とした内容は,あくまでも要素であり,カリキュラムを構成するものとしての成果物は,3要素としたものとは違う項立てになる見通しです。

 今年度の実践では,特にAについての検討が進みました。それはいわば「学習活動に於いてICTを道具として活用するために必要な,基礎的な学習体験」の存在を意識することができたということでもあります。興味深いことに,ICTを道具として使うためには,ICTの操作体験が必要なことはもちろんのこと,ICTを使わない(アナログな)情報活用の体験がとても大切なのではないかという結論に至りました。その結果生み出されたのが「情報活用能力の育成イメージ」と「平小のスキル」です。日常的な教科の学習の中にある情報教育的な要素をきちんと意識して授業づくりができるように,情報活用の実践力を授業者の目線でまとめたものです。そして,その「平小のスキル」を習得できる単元を「情報活用の実践力を育成する重点単元一覧」にまとめました。「平小のスキル」は5+1項目あり(あつめる・なかまわけする・くみたてる・あらわす・つたえる,つかう),それぞれに色を決めてあります。春休みを使って,従来から学年毎に作成してある「年間指導計画・単元題材一覧表」の該当単元に5色を着色していく予定です。このことで,今年度の研究成果を学校の年間指導計画に組み込んだことが表現できるのではないかと考えています。

 アナログな情報活用を重視して優先的に実践したとはいえ,授業者のICT活用は積極的に推進することができました。一方で,学習者である子どものICT活用について,つまり@ABは徐々に実現していく形となりました。しかし,授業研究を通してたくさんの「芽生え」を見つけることができました。

 来年度は,@ABが具体的な子どもたちの姿として表れていくことも意図して,私たちがめざす子ども像に近づいていけるよう,課題を設定していきたいと考えています。

 

次年度への思い

● 課題がたくさん…でも,やる気は十分!

  • 「情報活用の実践力を育成する重点単元一覧」の内容を検証し,より使いやすいものにしていく。
  • 6年間を通して系統的な指導を持続できるような広い意味でのカリキュラムを定着させていく。
  • 開発した単元の指導計画を,実践を通して修正し,指導のポイントを明確にしていく。
  • 「具体的に何を検証し,どのようにカリキュラムに生かすのか」を共通理解しながら授業研究の内容を工夫していく。
  • 学習活動において,どんな場面でどんなメディアを使って活動するのか明確にする。(「平小のスキル」と活用するメディアの関連をまとめる。)
  • 川崎市総合教育センターが開発中の「児童の情報活用能力チェックリスト」を活用して,子どもたちの情報活用能力がどのように変容していったかみとっていく。
  • 日常の授業を改善・充実していくために,授業力の向上を図る。

しっかりと見通しをもち,一歩一歩着実に実践を積み重ねながら,カリキュラムづくりを教職員みんなで楽しんでいきたいと思います。

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アドバイザーコメント

横浜国立大学 教授 野中 陽一 先生

 1年目のまとめとして,中間報告会とそれまでの研究活動を「振り返り」,その成果を「みとる」,そして,課題を抽出し次年度の計画を「構想する」ことが行われました。
 まず,「めざす子ども像」「平小のスキル」「重点単元配列表」によって,研究全体の枠組みを共通理解することができました。7回の授業研究会を通して,学年が協力して事前検討,試行を重ね,そのプロセスで得た知見を全体会で共有するという流れもできました。
 中間報告会の「ポスターセッション→公開授業→基調提案→指導講評→講演」という構成は,参加者に研究内容を理解してもらうことに成功したといえるでしょう。平小学校の先生方の「情報活用の実践力」が発揮されたのです。
 子どもたちの活動の様子から,身についた「情報活用の実践力」を「みとる」ことは重要な活動です。子どもたち一人ひとりの実践力の状況を把握した上で,具体的な学習活動を組み入れた授業をデザインしなければならないからです。6年生の授業では,「「平小のスキル」を使って,子どもたちに学習活動の見通しをもたせる」ことが試みられました。子どもたち自身が自らの情報活用を自己評価することにつながるでしょう。
 「児童の情報活用能力チェックリスト」の活用も含め,自己評価,相互評価なども取り入れ,多面的に評価しながら指導に活かしていくことを通して,カリキュラムの改善を図ることが求められます。
 次年度の計画で,特に留意すべきことは以下の3つだと考えています。

  1. 授業研究のプロセスで得た「実践知」をカリキュラムに埋め込んでいくこと
  2. 重点単元等で吟味した「情報活用の実践力」の育成に寄与する学習活動のエッセンスを日常の授業に取り入れること
  3. これらを実現するための授業研究(会)の在り方をさらに工夫すること

 成果報告会では,「情報活用の実践力」を身につけた子どもたちが,その力を充分発揮して学ぶ姿を見せていただきたいと思っています。

 

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