実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第38回特別研究指定校(活動期間:平成24〜25年)

福岡県立戸畑高等学校の活動報告/平成23年度1月〜3月
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実践経過
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成果と課題
成果と課題

成果と課題
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セールスポイント

 本年度作成した自作の教材数は120個に達した。内訳は国語10教材、数学53教材、理科13教材、英語教材44である。実際に授業で使った教材であり生徒の実態に合ったものである。この取組を通じて教材作成するだけでなく、その副産物として教科内の連携強化や指導方法の研究等を進めることが出来た。また、十分にこの取組をいかせなかった教科や学年もあるが、前年度の学年が作成した教材を共有する取組みを進めることで更なる広がりが期待できる。そのために、本年度作成した教材をMATE_NAVIに登録してもらい、ストレスなく検索できるようにデータベース化を行った。

実践経過

 本年度、授業で実際に活用した自作教材の一部を紹介します。

○ 国語 『源氏物語』光る君誕生の解説用自作教材
dbookproで作成した。Powerpointでは、スライド毎に切り替わるが、dbookproでは、左右にドラッグすることができるために、授業が大変進めやすい。

現代文「永訣の朝」の解説用教材をPowerPointで作成している。生徒に文脈の理解を確認しながら授業が展開できる。


○ 数学 2年生の数列及びベクトルの導入段階で利用した自作教材
教科書の内容をより視覚的に理解しやすくするためにアニメーション効果を利用した。


○ 物理 ヤングの実験の説明
光の経路を予想させながら、作図させることでより理解を深める。


○ 英語 長文読解用の教材をdbookProで作成
上下のドラッグもスムーズで繰り返し文章を表示できるため、内容理解に効果的である。


上記の教材は、本校職員が、必要に応じて共有できるように簡単に検索できるようになっている。

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成果と課題

 自作教材を作るだけでなく、業者が準備した教材も必要に応じて活用が進んだ。ICT機器に対して、気負うことなく利用することが日常化してきたことがこの1年間の取り組みにおいて大きな成果である。しかし、学年や教科において取り組みに差がある。

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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 ICT機器を使い慣れていない先生に、生徒たちがマグネットスクリーンの準備やプロジェクタの設定を積極的に手伝ってくれるようになった。

 また、マグネットスクリーンを黒板に設定するとき男子生徒が出てきて「2人で行う初めての共同作業」とみんなを笑わせながら手伝ってくれた。(ちなみに教員は男性)

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1年間の実践を終えての感想

 ICT機器が各学年に4セットずつ準備しているが、同時間帯にICTを利用する授業数が増加し、時々ではあるが機器が不足することがあるため、さらに1セットずつ増やす必要がある。

 ネットワークを利用してICT教材を活用しているが、ネットワークの設定や、コンピュータのハード・ソフトの両面のメンテナンスが出来る教員が少ないため、トラブルに対する対処方法を指導する必要がある。
 

次年度への思い

 本年度の取り組みをさらに進めて校内だけでなく、広く多くの学校に活用できるような取り組みとして、紹介していきたい。
 

アドバイザーコメント

日本福祉大学 教授 影戸 誠 先生

■ ICTが教育効果をもたらしていることの実証実験

いろんな学校で授業を見させてもらっている。戸畑高校の実践はシンプルであるが、原理原則をしっかりと踏まえていると、いつも感じる。

・ 120の教材の意味

1年間で120の教材が作成された。生徒の反応、教室のICT環境、授業に進捗に合わせ教材作りは継続して取り組まれ、この数にまでになった。おそらく最初にくらべ、だんだんと洗練され、生徒の反応も良くなってきていると思われる。何よりも、「反応を読み取りながら、巧みに言葉を変え授業展開する先生の姿」がより多く後半では見られるようになった。生徒の反応、授業形態が教材作成のバックグウンドとなっている。

・ 国語の教材から見えるもの(一例として)

本時のねらいが明確で、生徒の実態がよりクリアになるとき、適切な教材が生まれる。シンプルな解説が、重要語句の近くに、添えられている。ICTや学習科学では、学習対象=文 と 解説(シンプルなもの)の距離が需要である。学習対象が、一画面で、同時にとらえられるとき、すべてが有効に働く。出すタイミングも重要だ。発問によって、試行錯誤させつつ、表示する。当たり前の話だが、裏付けると次のようになる。

  • 説明部分
    どの部分の説明かはっきりとわかる (Sensory Memory)
  • 教科書との連携
    教科書で一度目にした文章  (Worked Example)
  • 対象と説明の距離
    近ければ近いほど良い (Contiguity principal)
  • 学習ノイズの消去
    ノイズ=顔をあげたり下げたり、どこの説明かわからない
    漢字がわからない、読みがわからない、見えにくい。
    何のための図かわからない
    (Extraneous Loadの減少)

・ 学習とは

次のような働きによって学習は成り立つ。
・これまでの学習と結びつけ、反芻しながら深めていく働き(Germaine Load)
・新しく提起された問題に集中して取り組み、理解する働き(Intrinsic Load)
・集中しようとするが、邪魔とあるノイズも存在する(マイナスの働き)(Extraneous Load)

この3つが脳の中で起こっているといわれている。
(Chonam University Dr.Rhu 2013)

・ 戸畑高校で、できることならやってみたい実験

ICTは教育に効果的であるという言葉はよく聞く。確かに戸畑高校の手法は、成果が出ている。これらをわかりやすくするための実験がある。
生徒に脳の血流を測定するキャップをかぶせ、目には目線を追う装置(Eye-Tracking)をつけさせるものである。
結果は明らかである。目線は、先生の説明部分に集中し、絶妙なやり取り、発問とともに出される「シンプルな情報」のたびごとに脳の血流が増すことだろう。

・ 今後の期待

実は単元の説明部分では上記のように、うまく展開している。すでに取り組まれているが、次のステップとしては、「手元」である。ワークシートは、最終的に理解を定着させる、個々の作業を支える。オープンな場での理解とそれを定着させるための、プライベートな集中学習の2つの場面が教室にはセッティングされている。
これらをどう有機的に展開させ、理解、定着へと進めていくか、さらに現場に足を運び学んでいきたい。

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