・春日学園つくば市立春日小学校・春日中学校 /平成27年度8-12月期 |
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研究課題と成果目標 |
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[研究課題] ICTを活用した 思考力・判断力・表現力を育む授業づくり
[成果目標] ICT機器の有効活用により,児童生徒が思考する時間を十分に確保する。そして,思考した結果を,ネットワーク等を介して共有し,学びを深め合えるようにする。また,他校との協働学習を行うなど,学びの広がり・深まりが得られるような学習スタイルを構築する。 |
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本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応 |
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(1)1年5組 国語「『あきランド』のわくわくを,いえのひとにつたえよう」 授業者 助川典子 ○目標 経験した出来事を思い出し,書いた短冊を時間的な順序に沿って並び替えることができる。 ○内容 生活科で行った「あきランド」の様子を電子黒板で見て楽しかったことを思い出した上で,「どのように短冊を並べると,わかりやすく伝わるか」を学習課題として提示する。グループで「あきランド」の経験を書いた短冊を並べ替えるなどの活動を通して,児童は時系列で短冊を並び替えることがわかりやすい表現になることを学習する。また,課題提示に電子黒板を活用して学習意欲を高め,全体で考えを共有する際には「ぼうけんくん」を活用することで友だちの考えの良さに気づくことができる。
(2)2年2組・2年7組・4年1組 つくばスタイル科「はじめよう!エコアクション 授業者 寺内明・寺田陽子・中川公恵 ○目標 (2年) 自分たちにできるエコ活動を4年生とともに考える活動を通して,異学年とかかわることの楽しさを味わうとともに,環境を守るためのエコ活動についての理解を深め,身近な人々の環境意識の向上に貢献することができる。 (4年) 環境を守るためのエコ活動についての相手意識・目的意識をもって,2年生と交流する活動を通して,学びの連続性による自身の学習意欲を高めながら,より多くの人に環境を守るためにできることを発信し,環境改善に貢献することができる。 ○内容 これまでにそれぞれが学習した内容を統合し,「エコ共同宣言」をまとめる活動が本時の課題である。2年生・4年生が同じ班で協働し,意見交換をしながらエコ活動を地域や家庭に広めるための宣言づくりを行う。タブレットPCを活用することで,自分たちの考えを整理してまとめたり,表現の仕方を工夫したりすることができる。 (3)3年3組 国語「じんざの心をつかんだものは」 授業者 國原祥子 ○目標 物語を読んで根拠にもとづいた感想や考えを持ち,一人一人の感じ方に違いがあることに気づくことができる。 ○内容 「『サーカスのライオン』のグッときたシーンにせまろう」という学習課題で,児童はそれぞれの感想を伝え合う活動を行う。その際にYチャートを活用し,感想の中心になっていることをもとに分類する。Yチャートを用いて分類することで,友達の発表を聞くときに自分と異なる視点の感想があることに気づくことができる。 (4)4年3組 算数「垂直,平行と四角形」 授業者 山屋 瑛美 ○目標 身の回りにあるさまざまな直線を探して,垂直や平行の観点でとらえることができる。 ○内容 既習事項である垂直・平行の関係にある直線を身の回りで探そう,という学習である。児童は4人ほどのグループにつき1台タブレットPCを持ち,校内を探索する。そして垂直・平行の関係にある直線を撮影し記録する。教室に戻ったらそれをお互いに見ながら発表する活動を行う。発表の際には,ステップチャートを活用し垂直・平行であることを順序立てて説明するようにする。 (5)5年3組 家庭「上手に使おう お金と物」 授業者 皆川 美樹 ○目標 買い物シミュレーションをとおして団らんに合ったお菓子の選び方を考え,「なぜ,それを選んだのか」根拠を明らかにして説明できる。 ○内容 「家族団らんのためのお菓子選びについて考えよう」という学習課題で,菓子の画像をタブレットPCで提示して買い物シミュレーションを行う。個人でシミュレーションを行ったあとグループで考えを共有するのだが,その際にマトリクスやボーン図を活用し「なぜその菓子を選んだか」の根拠を明らかにして説明できるようにする。味や内容量,値段,好みといった多様な観点の中で何を根拠にして菓子を選ぶかは児童によって異なるが,共通の思考ツールを用いることで他者の考えを捉え,自らの思考と比較することが可能となる。 (6)6年5組 考える時間「構造化する」 授業者 早乙女雅代 ○目標 立体ピラミッドチャートを活用して,収集した情報を筋道立てて組み立てることで,自分の考えを分かりやすく伝えることができる。 ○内容 「日本の文房具のすばらしさを海外にアピールしよう」という学習課題で,最近話題になっている文房具を付箋に書き,立体ピラミッドチャートを用いて主張をまとめる。主張から事実までが,筋道が通り説得力があるかどうかを見直す活動を通して,児童は思考スキル「構造化する」を高めることができる。 (7)7年1組 道徳「島耕作 ある朝の出来事」 授業者 奥沢 志乃 ○目標 主人公島のとった言動の善し悪しを議論することを通して,社会の一員として公共の場における態度を考え,気持ちよい社会を実現しようとする実践意欲を培うことができる。 ○内容 道徳の資料を読み,2人の人物のとった言動についてそれぞれどう思うか,全体で考えるためにベン図を活用する。このことにより対象人物の特徴が類比・対比され,また,より明確に可視化することで価値の追究を図る。さらに,ぼうけんくんを用いて各々のベン図を電子黒板に映し出し,思いや考えを統合・深化・補充することに役立てる。 (8)8年3組 つくばスタイル科「災害時に私たちができることは!」 授業者 細野友隆 ○目標 災害時の避難行動における課題を解決するために話し合い,提言を作り出すことができる。 ○内容 「災害対策会議を開こう!」という学習課題のもと,クラスをAとBの2つに分ける。 Aグループの議題は「避難勧告等を出しても安全避難行動をとらない人が多いことに対する解決策を考えよう。」,Bグループは「避難時に渋滞が発生したり,車内で被災したりする人が多いことに対する解決策を考えよう。」である。それぞれに司会・書記等の役割を立て,話し合いを進める。事前にグループ単位で調査をしており,調査結果を電子黒板で提示しながら自分たちで考えた提言をプレゼンテーションする。現状(課題)から具体的な解決策を考えて議論する活動を通して,創造力を高めることができる。 (9)9年3組 社会「よりよい社会を目指して」 授業者 菅谷政之 ○目標 より住みやすい社会にしていくための提案について発表及び評価する活動を通して,現代社会についての自分の考えを適切に表現することができる。 ○内容 前時までに準備した,「誰もが住みやすい社会の構築に向けた提案」をグループで発表する。発表者側は,電子黒板を用いて発表し,聞き手側はPMIシートを活用し,視点を絞って提案を評価する。根拠を明確にした発表や否定的な視点からの評価などを伝えることで,話し合いを深めることができるようにする。最後にゲストティーチャー(投資会社社員)の話を聞き,世の中の事象に積極的に関われることができるように助言をもらう。 アドバイザーの助言と助言への対応 ○教師が一旦多様な思考を整理し,児童生徒の次の思考を促すことでより質の高い学 びに繋がるのではないか。ただし,その必要性は,教科や領域,題材によって変わってくる。 ○外部のリソース(ゲストティーチャーなど)を積極的に活用することで,児童生徒 の生き生きとした活動に繋げることができる。 ○この2年間の活動で生まれた「仕組み」を今後も継続・発展させていく必要があ る。そのためには来年度のプランニングを今年度の早い段階で行うことが必要である。 |
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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など) |
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11月の公開授業は「つくば市学校ICT教育40周年記念大会」も兼ねていたこともあり,多数のお客様に来校いただいた。申し込みをいただいた段階で予めわかっていたことではあるが,当日に来校者の「北海道○○市」「沖縄県○○町」といった名札を実際に見ると,本校への高い注目を改めて感じることができたと同時に,その期待に応えなければならないと身の引き締まる思いもした。5校時・6校時で合計54の授業を公開したのだが,どの授業も参観者で溢れかえり,大盛況であった。 |
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成果 |
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①夏休みに,論理的思考力に関する研修を行った。思考ツールや思考スキルについて
理解が深まり,今までよりもさらに目的意識を焦点化してICT機器を活用するこ
②11月の公開授業は職員のほぼ全員が授業を行った。全員が当事者意識をもち,
当日に向けて組織一丸となって研究に取り組んだ。その成果として,組織とし
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今後の課題 |
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①本研究の成果を年間指導計画に反映させたい。論理的思考力を育むためには「本気
でしっかり考えさせる授業」を行う必要があるが,それは単元の中で限られた授業
②協議を重んずる研究会の持ち方について検討が必要である。参観者と協議す る時間をもつなど,今後の仕組み作りを検討していきたい。 |
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公開研究会の計画 |
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アドバイザーコメント |
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大阪教育大学 教授 木原 俊行 先生 |
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平成27年11月に、パナソニック教育財団の実践研究助成・特別研究指定校として、春日学園(つくば市立春日小学校・春日中学校)は、実践研究の成果を公開する機会を有した。それは、「つくば市学校ICT教育40周年記念 21世紀の学びを変えるICTを活用した小中一貫教育研究大会」の一環として催されたものだ。同日、1000人を超える参加者を得て、春日学園は、実践研究の成果を広く発信できたと言える。その軌跡の一部が、研究大会のホームページに残されている。研究大会に参加できなかった方は、ぜひ、参照されたい(http://www.tsukuba.ed.jp/~40anniversary/?p=279)。 当日は全クラスの授業が2コマにわたって公開された。その数は、54にものぼった。また、その対象は、あらゆる教科・領域に及んだ。しかも、それらの授業は、1)論理的思考(思考スキルの利用等)、2)特色ある教育(次世代スキルの育成、異学年合同学習、ゲストティーチャーの授業への協力等)、3)先進的ICT活用(ICTを媒介とした協働学習、自己評価力を高めるためのICT活用等)、4)合理的配慮(子どもの学習における困り感の軽減等)に分類され、整理されている。換言すれば、春日学園の授業公開は、量的・質的に整っており、研究大会参加者の多様なニーズに見事に応じていた。 指導案の様式も見事であった。研究テーマである「ICT活用した思考力・判断力・表現力を育む授業づくり」に即して、1)本時のねらいが、「思考・表現」の観点を主柱として設定され、記述されている、2)「本時におけるICT活用の効果」をいう見出しを付したパートが設けられている、3)「学習計画及び本時の展開」欄では、どのような思考スキルが用いられるのかが明示され、同時に、それを用いて展開される「期待される児童・生徒の表現」が具体的に構想されている、4)「評価」欄では、本時のねらいに合わせて、思考・表現の達成状況が描かれている、といった内容が、わずか1ページに集約され、叙述されている。それは、春日学園の実践研究にたずさわる教師たち全員が研究の重点や枠組みを共通理解しているからこそ生まれた、授業プラン群である。 要するに、11月10日の研究大会における授業公開、その設計図である指導案集は、春日学園の実践研究の底力を、そしてそれを他者に示す発信力の豊かさを示すものであった。もちろん、それは、学校の報告において述べられているように、いくつかの授業研究会や研修会を重ねた経緯、それを通じた授業改善サイクルに寄るところが大である。発信力の豊かさとともに、それを高めていった、春日学園の教師たちの学びのプロセスにも、ぜひ、注目していただきたい。 |
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