・春日学園つくば市立春日小学校・春日中学校 /平成27年度1-3月期 |
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研究課題と成果目標 |
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[研究課題] ICTを活用した 思考力・判断力・表現力を育む授業づくり
[成果目標] ICT機器の有効活用により,児童生徒が思考する時間を十分に確保する。そして,思考した結果を,ネットワーク等を介して共有し,学びを深め合えるようにする。また,他校との協働学習を行うなど,学びの広がり・深まりが得られるような学習スタイルを構築する。 |
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本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応 |
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(1)6年2組 美術「小さな美術館」 授業者 西部こずえ ○目標 俵屋宗達の「風神雷神図屏風」または「サモトラケのニケ」に描かれている「風」をどのように感じるかを,クラゲチャートを用いて理由付けする活動を通して,目に見えないものの表現を味わうことができる。 ○内容 「作品に表されている風を感じよう」という学習課題で,ペアでタブレットを使い,作品に風を線で表す。児童は,「強い風は太い線で描く」などの表現をすることができる。表したものはタブレットを用いて共有し(右側写真参照),集めた情報を基にして,クラゲチャートに自分の考えをまとめる活動を行うことで,学習のねらいに迫る。 (2)7年2組 社会「戦国大名の登場」 授業者 山室由美子 ○目標 鎌倉幕府の滅亡から戦国時代に至るまでの社会的変動について,多面的・多角的に考察し,その過程や特色,歴史的意義を適切に表現することができる。 ○内容 「なぜ戦国大名は強い国をつくることができたのだろう」という学習課題で,生徒はグループ毎に「軍事面」「商工業面」「農業面」などの多様な視点から戦国大名の政策について調べる。調べた内容を発表する際には,提示装置を活用し,資料を提示しながら発表できるようにする。集めた情報を基に,なぜ戦国大名は強い国をつくることができたのか,自分の考えをまとめる。まとめをする際には,自分たちが調べたことだけでなく,他者の発表の内容も参考にすることを促すなど,多面的に見ることの価値を感じさせるようにする。 アドバイザーの助言と助言への対応 ○「来年度のプランニングを今年度の早い段階で行うことが必要である」と昨秋に御助言いただいたので,1月から来年度の組織づくりについて検討を始めた。具体的には,来年からは教科特性に応じた研究を進める必要があることから,新たに教科等の括りの「プロジェクトチーム」を編成する計画である。既存の研究組織との関係性など,検討すべき点は多い。 |
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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など) |
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本校は来年度から「義務教育学校」として新たなスタートを切ることが決まった。9年間を見通したICT教育の形がどのようなものであるべきか,検討が必要である。 |
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成果 |
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①11月の全国大会のあと,日常的に授業でICTを活用する教員が増えた。機器の操作に も慣れてきた教員も多く,授業のねらいに即したICTの活用が促進されている。 ②11月の全国大会では全員が公開授業を行ったため,お互いの授業を見ることができな かった。1月の要請訪問では授業者が限られたため,指導案を検討する段階から相談しながら進めることができ,当日も授業を見ることができた。協力して練り上げた指導案での授業を見ることは,教員の学びに繋がった。 |
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今後の課題 |
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①本研究の成果を年間指導計画に反映させたい。論理的思考力を育むためには「本気でし っかり考えさせる授業」を行う必要があるが,それは単元の中で限られた授業である。本活動で実践したような授業を年間指導計画においてをどのように位置づけていくのか,教科特性等も勘案しながら検討していきたい。 ②1月の要請訪問の際には,協議を重んずる研究会の持ち方について検討し,実践した。 今回の実践をふまえ,より良い研究会の在り方について検討していきたい。 |
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公開研究会の計画 |
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アドバイザーコメント |
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大阪教育大学 教授 木原 俊行 先生 |
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平成28年3月に、春日学園(つくば市立春日小学校・春日中学校)は、2年間に及ぶ、パナソニック教育財団の実践研究助成・特別研究指定校としての取り組みを終えた。平成26・27年度に、同校は、特別研究指定校にふさわしい実践研究を繰り広げた。その特長は数多いが、ここでは、紙幅の都合上、次の3点を指摘しておきたい。 まず、実践研究の内容についてである。「研究成果報告書」に記載されているように、春日学園の教師たちは、ICT活用によって、それまで培ってきた「思考力・判断力・表現力を育む授業づくり」の充実を図った。具体的には、ICT機器の利用を通じて、「(子どもたちが)考える時間をより長く確保する」「全員参加型で[学び合う]学習スタイルを構築する」ことを目指した。そして、同校の教師たちは、「研究成果報告書」に載せられた数多くの実践に代表されるが、十分な成果を手にしている。とりわけ、子どもたちがタブレット端末を利用して思考し、それをネットワークや電子黒板を介して共有化するスタイルの授業づくりに、同学園の教師たちはチャレンジし、それを重ねて、ICT活用と思考力等の育成のよき関係を実践的に明らかにしている。 次いで、同学園の実践研究がカリキュラム開発として企画・運営されたことも、特筆に値する。春日学園の実践研究は、小中一貫教育に迫るものであった。同学園の教師たちは、第1学年から第9学年までのいずれの段階の子どもたちに対しても、ICT活用、思考力・判断力・表現力の育成、そしてそれに資する思考ツールの利用を基盤とする授業を提供している。さらに、小学校段階の児童と中学校段階の生徒が合同で学習するシーンも設定している。加えて、春日学園の教師たちの営みは、あらゆる教科・領域で展開された。こうした舞台の広がりは、春日学園の実践研究が、包括的、立体的に進められたこと、換言すれば、カリキュラム開発として組織的に進められたことを物語っている。 加えて、春日学園の教師たちは、自らの実践をつくば市内外の学校・教師たちにオープンにしてきたことも秀逸であった。特別研究指定校に課せられている授業公開のミッションは年1回である。それにも関わらず、春日学園の教師たちは、授業公開を年3回も試みてきた。しかも、各回において、著しい数の授業を公開している。例えば、平成27年11月に、春日学園の教師たちは、「つくば市学校ICT教育40周年記念 21世紀の学びを変えるICTを活用した小中一貫教育研究大会」の一環として研究発表会を催したが、その際には、全クラスの授業が2コマにわたって公開された(1000人を超える参加者を集めた)。そして、その数は、54にものぼった。その上、春日学園の教師たちは、ホームページや冊子(実践事例集)にも、実践研究の過程と成果をまとめ、より多くの教師が春日学園の実践にふれる可能性を高めている。 春日学園の児童・生徒数は1600人を超える。教職員の数は、100名近くになる。そのような大規模校において全校体制で実践研究を推進することは、簡単ではない。それにも関わらず、平成26・27年度、同学園の実践研究は、たしかにデザインされ、着実に進展した。そして、研究成果報告書では、それらが総括されていると同時に、今後の展望として、ICT活用のさらなる充実や実践研究の知見の普及が構想されている。そうした新たな課題に応ずるべく、春日学園の実践研究が発展することを筆者は確信しているし、読者には、継続して春日学園の取り組みに注目し、その特長に学んでもらいたい。 |
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