#04 第41回 特別研究指定校 中間報告 札幌市立厚別東小学校 / 板橋区立中台中学校
文京区立第六中学校 / 大阪市立堀江小学校
大阪府立東百舌高等学校 / 芦屋市立精道小学校
本校の研究課題は、次期学習指導要領のキーワードであるアクティブラーニングとカリキュラムマネジメントを見据えたもので、主に総合的な学習の時間にICTを活用しました。ICT機器の利用が増えたことで、子どもたちの主体性やプレゼン力が向上し、ICTリテラシーの考え方も浸透。協働学習の成果をあげることができました。研究2年目の今年は授業デザインを意識しながら、研究課題の成果をより明確にできるよう努めてまいります。
21世紀型スキル、協働学習、学習科学のエキスを共有化
中川一史 放送大学 教授
本校は21世紀型スキル、協働学習、学習科学を視野に入れて、それを支えるツールとしてICTを授業にからめる取り組みを行ってきています。もちろん、3つのキーワードはそれぞれがとても大きなものであるため、すべてを授業で具現化できるわけではありませんが、その共通するエキスを日常の授業で意識化し、校内の職員が一丸となって共有化を図ってきました。これらの考え方をつなぐ一助として、ICTがうまく位置づいています。
今年度より、生徒が各教科教室で授業に参加する「教科センター方式」の学校としてスタートしました。実践研究では、全教科のICT機器の活用場面を3つの時間軸と3つの学習形態ごとにまとめました。国語科ではスピーチや短歌の授業で動画や画像を活用したことで、全国学力テストの「考えをもつこと」という項目の成績が向上しました。授業モデルとして区内各校でも活用していただけるように、今年も授業デザインの研究を進めてまいります。
「教科センター方式」を活かした授業づくりが課題
吉崎静夫 日本女子大学 教授
ICT活用には「とにかくICTを授業に使う」「どういう場面で効果的に使うか」「どういう子どもに、どう使うか」という3段階があります。本校は昨年8月から第2段階に入り、「導入、展開、まとめ」「教師がICTを活用する一斉学習、生徒がICTを活用する一斉学習、生徒がICTを活用するグループ学習・個別学習」という枠組みに、ICT活用法を整理しました。今後は「教科センター方式」の中で、教科別と教科横断型それぞれのICT活用法を考えていくことが求められます。
本校では生徒の意見を深め合い、広げる機会が少ないとして言語活動に注目した研究を進め、その取り組みや成果の一部を文京区の中学校教育研究会や東京教師道場の公開授業で外部に発信しました。音楽と技術のコラボ授業ではグループでCMを作成。美術では作品から読み取ったことを寸劇にして発表し、解釈を深め合いました。今後はさらに授業実践やグループ協議等を進めて成果をまとめ、生徒の力を高めていきたいと思っています。
ワークシートとの連動で教科の本質に迫る
村松浩幸 信州大学 教授
本校は言語活動にICTを組み合わせ、汎用的なスキル、教科等の本質、教科等の固有の知識や個別スキルに関わる資質・能力の向上を目標としています。ワークシートとICT機器を連動して活用しているのが特徴で、CMづくりの授業では既存のCMの設計法をワークシートで分析するなど、各教科の本質に関わるような思考法を研究しています。こうしたワークシートの作成自体が、先生自身にとっても言語活動になっていくのではないでしょうか。
本校では総合的な学習における児童の能力や学習に対する意識の変容を分析しました。昨年度、たとえば5年生はアメリカに住む児童とスカイプで交流し、外国文化について調べました。公開授業の参会者からはよい評価をいただきましたが、今年度はより児童を主体にした授業を目指し、5年生は自分たちが考えた街づくりのアイデアを区長に提案しました。総合的な学習以外の時間に、児童主体の授業をどう進めていけるかが今後の課題です。
次期学習指導要領にも通じるICT活用モデル
永田智子 兵庫教育大学 教授
本校は平成25、6年度に大阪市のモデル校となり、ICT活用モデルをつくり上げました。全教員で取り組む土台があったからこそ、実践研究でも成果をあげることができたのです。学習指導要領改訂の議論が進む中で、問題解決型学習やアクティブラーニングが注目されていますが、これらは本校の取り組みとも共通する点があります。また、新任の先生も早々に公開授業ができるくらい校内研修が充実している点も、他校は学んでほしいと思います。
本校では、知識だけでなく興味や関心も育成する授業づくりに向けて、ICTを活用したアクティブラーニングの実践と評価に取り組みました。アクティブラーニングルームをつくり、実践を推進するTotal Plan委員会を設けました。情報デザインコースでは1人1台のタブレットを貸与し、学習成果を記録・蓄積できるe-Portfolioを活用したところ、81%の生徒が「学習に役立った」と評価。今後はBYODも視野に、授業デザインを見直していきます。
アクティブラーニングにより“縦の線”を意識
影戸誠 日本福祉大学 教授
本校はICT、アクティブラーニング、e-Portfolioという3つのキーワードで実践を展開しました。1人で試行錯誤し、仲間と考え、グループで検証し、自分で定着するという縦の線を意識できるのがアクティブラーニングの特徴です。今後は主体的な学びができるように、イエスかノー、あるいは答えを選択できる問いかけをして最後に意見を述べる展開にすることで、どの生徒も協働学習に加われるような工夫をしていってほしいと思います。
平成26年度にタブレットを導入し、言語活動の充実や協働学習におけるICTの効果的な活用を探ってきた経緯から、さらに児童の主体性を高め、思考を深める実践にチャレンジしました。5年生の算数ではタブレットを使い、グループで合同な図形の作図法を考え、全体で検討する授業を行いました。今後は本校のアクティブラーニングと実践事例を関連づけながら、主体性の高まりや思考を深めるICT活用の場面を検証していきたいと思います
積み重ねた実践のモデル化が進行中
堀田博史 園田学園女子大学 教授
本校は言語活動の充実を目指した研究をしていたため、児童は学び合いや協働学習に慣れていて、ICT環境の整備も進んでいたため、研究に取り組みやすい環境がありました。1年目は深い学び、対話的な学び、主体的な学びをできるような実践を重ね、モデルを探す状態が続きました。2年目の今は校内研究を市内の学校に公開し、さまざまな意見を得ています。これをモデル化する作業が、授業研究発表会のある12月下旬までには完成する予定です。