#05 第40回 特別研究指定校 成果報告 米沢市立東部小学校 / つくば市立春日学園義務教育学校 (旧 春日学園つくば市立春日小学校・春日中学校)
多摩市立愛和小学校 / 揖斐川町立揖斐小学校
本校の教員は20代と50代の割合が高く、学級担任の指導力の差が課題だったことから校内OJTモデルの開発に取り組みました。まず「学習規律・学習指導の手引」を作成したところ、漢字や言語活動の習熟などで成果が表れました。さらに若手とベテランによるICT活用も含んだ授業研究会や、ベテランが若手に授業のノウハウを伝える若手塾、校内地留学、昨年度だけで88回にのぼる公開授業を実施しました。市内の先生方にも参観していただくことで、実践の普及にも努めました。その結果、若手とベテランが学び合うことで双方の授業力が向上し、学校全体の教師力が向上しました。今後もOJTモデルの追究・普及に努め、よりより学校づくりに取り組んでまいります。
教員の急速な若返りの時代に必要なモデル
堀田龍也 東北大学 教授
本校の研究の特徴は2つ。1つは、多層的な教育研修により全教員が同じ指導をできるようになったことで、学習活動に落ち着いて取り組む雰囲気ができ、学校としての安定感が生まれた点。2つめは、これらの取り組みが教員にどんな影響を与えたか内部評価を行い、若手とベテランに分けて分析した点です。成果は分厚い研究概要にまとめられています。教員の急速な若返りの時代を迎えた今こそ、多くの学校の参考にしていただきたいと思います。
ICTの活用により児童・生徒が考える時間を確保し、全員参加型の学習スタイルを構築し、校内にとどまらない学びの広がりが得られることを目標に、研究に取り組みました。6年生の校外学習では、鎌倉でタブレットを使って撮影した画像をホテルで発表し合い、3年生の社会科では、地域の特色を調べて県外の学校とスカイプで交流しました。動画を使った「反転学習」によって協働学習の時間が確保できるようになり、発表が苦手な子の意見も抽出し、共有することで考えを深めることが可能になりました。この2年の間につくった110の事例は「実践事例集」としてまとめました。また年3回の公開授業には1000人を超える来校者があり、研究を広めることができました。
アイデアやエネルギー取り込み、新しい学校像を体現
木原俊行 大阪教育大学 教授
本校の実践には、従来の授業が効率的・効果的に営まれている側面と、イノベーティブな側面の両方がありました。先ほども出ました3年生の社会科では、学びのパートナーが空間をも超えてしまっています。外のアイデアやエネルギーを学内に持ち込むことでイノベーションを活性化し、開かれた新しい学校像をマネジメントづくりでも体現しています。その根本に、授業づくりに対する先生の変わらない熱意がある点にも注目したいところです。
研究当初は、1人1台のタブレット等の恵まれたICT環境を活かせていない状態にありましたが、プログラミングの授業で児童が見せた主体的な学びの姿に希望を感じました。目標だった「授業のRe-design」はタブレットを朝学習や隙間時間、協働学習に活用できたことで80%達成しましたが、従来の授業にICTを付け足す感覚がまだ完全には抜けきれていません。保護者にはタブレットの持ち帰り学習にご理解いただき、サポーターから学びのパートナーへ変化する可能性を感じました。タブレットは子どもを学びの主語にするツールです。今回の取り組みは教員の指導観にも大きな影響を及ぼし、現在も実践報告や模擬授業を通して新しい教育スタイルの啓発に努めています。
学び続けようとする若い先生たちの姿が印象的
寺嶋浩介 大阪教育大学 准教授
この取り組みは若い先生が1人1台という環境の中で、いかに学校を変えることができるかというチャレンジでもあり、先生方は授業研究会を頻繁に行うなど、数をこなすことでタブレットを日常化しました。プログラミングや音楽の作曲などの新しい学習場面のほうが児童が生き生きとしていて、1人1台に合うこともわかってきました。ほかの地域の先生に研修を行うことで教員自身が学び続け、授業に還元していこうとする姿も印象的でした。
本校では授業や情報モラル教育、校務支援におけるICTの活用を進めてきましたが、情報モラルの授業後、智恵を磨く領域の正答率は高くなる一方、心を磨く領域では変化が見られませんでした。そこで情報モラルと道徳の授業を連続して行い、影響を調べました。さらにタブレットの持ち帰り学習を採り入れ、情報モラルと道徳の関連づけを図ったところ、保護者の理解も深まりました。研究の結果、情報モラルで智恵を磨く領域を扱った後、連続して道徳で心を磨く領域を扱うことで道徳的実践意欲が高まることがわかりました。また本校の児童会は、自分たちで情報モラルの実態を調査するなどの活動を展開していますが、これを支える動きがPTAや地域にも広がっています。
情報モラル教育のカリキュラムマネジメントに功績
野中陽一 横浜国立大学 教授
本校の最大の成果は、情報モラル教育をうまくカリキュラムマネジメントした点にあります。タブレットを持ち帰る家庭学習や児童会の取り組みも、上手にカリキュラムに溶け込ませました。ただ普通の学校では、ベースとなる情報モラル教育のカリキュラムを確立していない可能性が高いので、他校が取り組む際はどこに位置づけるか工夫する必要があります。今後は情報モラルだけでなく、情報活用力の育成にも取り組んでいただきたいと思います。